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「君をつけて男がいて、いま確認(かくにん)したんだけど
 その男、拳銃(けんじゅう)を持っているんだ」

少女はやっぱりという風に(うなづ)くと答えた。

異端検問官(いたんけんもんかん)よ』

秘密警察(ひみつけいさつ)
 不法入国者(ふほうにゅうこくしゃ)を取り()まっているの』

その言葉を加味(かみ)して推測(すいそく)する。

「君は二つの世界を行き来しているんだ。
 つまり不法入国者とは異国人(いこくじん)ではなく、
 異世界人(いせかいじん)のこと? 」

少女は自分の説明が()りてなかった事を、
(あらた)めて認識(にんしき)した(よう)(うなづ)く。

『そう厳密(げんみつ)には、
 あなたの世界に異国人は存在(そんざい)しない。
 いえ、存在はしてたけど、
 切り離されたと言った方がいいかも。

 あなた達が異人だと思っている不法入国者は、
 異世界人よ。

 いやそれも間違(まちが)い。  厳密(げんみつ)には並行世界人(へいこうせかいじん)
 あなた達からは、
 アウトサイダーと呼ばれているけど』

相対的(そうたいてき)な問題と言う(わけ)か。

僕達から見ればアウトサイダーでも、
視点を変えれば僕達がアウトサイダーと言う(わけ)だ。

「で、検問官(けんもんかん)はこっちまで追いかけて来ないの?」

『それは無理(むり)。 技術的にも。 
 それに向こうは私達が、
 並行世界から来ている人間だと気付いていない』

なるほど存在が不明なものほど、
恐怖の対象となりえるか。

(すなわ)ち、僕らは幽霊見たいなものか」

後悔(こうかい)している?』

「してないよ」

本心だった。

それどころか、
これから起こる事に胸の底からわくわくしていた。

「それで君はこれから僕をどこに、
 連れて行ってくれるのかな?」

少女はいたずらぽく(つぶや)いた。

内緒(ないしょ)

車窓(しゃそう)からは荒廃(こうはい)した都市が、
どこに向かうのかもわからないまま流れていた。

静かな時間。

少女は貸し切りになったシートに腰を下ろし、
肩肘(かたひじ)をついて車窓からのそんな風景を(なが)めていた。

「そう言えばこの車両には()り皮が無いんだね」

『この車両の床は重力制御板(じゅうりょくせいぎょばん)に包まれている。
 ()れは起きない』

やはりこちらの世界の文明は、
僕の世界の文明を凌駕(りょうが)している様だ。

車内放送がそんな静かな時間にわって入った。


「次はファンデル。
 次はファンデルに停車します」



 

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