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紋章の男は背負っていた大きな袋を下

ろすと、紐を解いて瓶をしまった。

そして不気味な森を歩き出す。

2時間も歩くと一軒の家があった。

紋章の男はそのいえまでいくと、扉の

ドアを力任せに叩きつけた。ゴン、ゴ

ン、ゴン、という大きな音を出すと、

この家の主が来る。

主はドアを開けると紋章の男が立って

いた。

主は恐怖心にかられながらいう。

(これは、これは、ガージス様、よくお

いでくださいました、ささ、どうぞこ

ちらに)

主は痩せほそって醜悪な顔をしてい

た。

部屋の奥の広間につくと、大きな丸い

テーブルと椅子があった。

ガージスは椅子に座るとバルンジに言

う。

(バルンジよ、例のものはできていよう

な)

バルンジは言う

(はいっガージ様、完成しております、

しかしまずはワインでもいかがでしょ

うか、今お持ちします)

と言って貯蔵庫に行った。

バルンジは心のなかでガージスのよう

なやからを家に招いて内心腹が立って

いた。

(なんだ、あの野郎、偉そうにしやがっ

て、そうだ)

バルンジは貯蔵庫にあった一番安いワ

インを選ぶと小さく笑った。

(ヒッ、ヒッ、ヒッ、どうせあのバカにゃ

あ、ワインの味なんてわからんだろう)

バルンジは急ぎガージスのもとに戻る

と、これは最高級のワインでございま

す、と言った。

ガージスがなにも言わずに待っている

と、ワイングラスをテーブルにおき、

ワインの千を抜いて注いだ。

ガージスが一口飲むと、怒り狂った顔

でバルンジを見る。

ガージス

(バルンジよ、これが最高級のワインの

味か)

バルンジは内心心臓がドキドキした。

そして不気味な笑顔で言う。

(あっ、はいっ、それはもう最高級でご

ざいます)

ガージスは手に持っていたワイングラ

スを下に向けると、ワインを全部こぼ

していった。

(バルンジよ、不味い、不味いな、お前

は私がワインの味など分からんだろう

と思ったのであろう)

そういうとグラスを落とした。

バリンという音が響き渡る。

バルンジは内心

(この野郎、てめえ、何様のつもりだ)と

思ったが、恐怖のあまり言えなかっ

た。

ガージスは怒りをあらわにしながらい

う。

(バルンジ、こんなくだらなぬものなど

どうでもよい、それより例のものはど

こだ)

とつめよった。バルンジは泣きそうな

声で言う。

(はっ、はい、それはもう、しかし)

ガージスはふんと言うと大きな袋の縄

を外して、中から金貨300枚の入った袋

を取り出しテーブルに投げた。

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