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18 消えた村

 あるはずだった物がその場所から消える。
 それは日常茶飯事。
 砂場で遊んだ玩具が消えてなくなり。
 忘れ去った頃にひょっこり現れる。
 そんな経験は誰にでもある。
 だけど言えることはひとつだけある。

 失くしたものは見つかっても。
 失ったものは見つからない。

 ミソノのいた村は。
 そこにはもうなかった。

 覚悟した焦げた匂い。
 絶望すると思った血の匂い。

 なにもなかった。

 家の残骸とほんの少しの争ったあと。

 それだけが残っていた。

「これ私のせいだよね」

 ミソノが涙声で言う。

「違う」

 清空がいう。

 ミソノはカナタの方を見る。
 そこには絶望したカナタの姿。
 ここで何かを放てばカナタが傷つく。
 だから何も言わない。

「僕のせいだよ」

 カナタがぐったりと肩を落とす。

「誰のせいでもない。
 責めるべきはテオスだよ」

「……この僅かな魔力痕。
 やったのは本当にガイルなのね」

 シエラがいう。

 人喰いガイル。

 一晩で小さな国を滅ぼしたこともある凶悪なオークで、どんなものも食べると言われている。

「食べられたの?みんな……」

 ミソノは絶望することしかできなかった。
 覚悟はしていた。
 覚悟はできていた。
 でも、予想はできなかった。
 このあまりにも静かな光景を。
 カラスさえも鳴かない村……
 ガイルの狂気に満ちた魔力は全てを絶望に包んでいた。

「人の声がすると思ったらアンタらか」

 そういって一人の少年が現れる。

「|亜銀《あぎん》か?」

 清空が思わず声を出す。

「なにをしに来た?」

 亜銀は、清空の言葉を無視して質問をした。

「……この子たちがこの村の出身なんだ」

 亜金がそういうと亜銀がゆっくりと息を吐くようにいった。

「そうか。
 力及ばず申し訳ない」

「貴方は誰なんですか?」

 ミソノの言葉に亜銀が答える。

「ファルシオン騎士部隊長亜銀だ。
 そこの亜金の弟さ」

「え?騎士部隊長?私たちより歳下なのに?」

 ミソノが小さくそういった。

「まぁ、いろいろあるんだ。
 政治的な理由で俺はこの職務についている。
 別に嫌いじゃないからいいけどな」

 亜銀がぶっきらぼうにそういうとそんな亜銀の頭をチョップする女性が現れた。

「コラ!歳上と話をするときは丁寧な言葉を使いなさい」

「ティコまできたのか?」

 清空が驚く。

「イエーイ!|七色《なないろ》魔道士ティコさんの登場だよ!」

 ティコがVサインを向けて小さく笑う。

「ファルシオンが3人も揃ってる……」

 シエラが呟く。

「……」

 亜金が黙る。

「もしかして亜金緊張しているのか?」

 玉藻が笑うと清空が笑いながらいう。

「亜金はティコのファンだからな!
 サインでももらっとくか?」

「……え?」

 亜金が言葉を漏らし驚く。

「えー?そんなに驚く?」

 ティコが笑う。

「俺らは金色の瞳を持つものが現れたという噂を聞いてやってきたんだ」

 亜銀が話をそらした。

「それは本当か?」

 清空が驚く。

「ああ。金色一族の魔力と一致した」

「金色一族?それって滅んだはずじゃ……?」

 カナタが首を傾げる。

「生きているぞ。
 私がそうだ」

 清空が小さく笑う。

「えー?」

「髪の毛一本で魔力がぐーんとあがるマジックアイテムが作れるんだぞ?
 凄いじゃろ!」

 清空が豪快に笑う。

「でだ。俺らはそいつらを追ってここに来たんだ。
 ガイルはソイツらと戦った形跡がある」

 亜銀がそういうとミソノが言葉を返す。

「え?ここで戦ったんですか?」

「近くの村……というか集落というか。
 ビーン一族とそいつらは戦ったのさ。
 ビーン一族はガイルの直属の部下だったがそいつらが滅ぼした。
 魔力を相当消費したんだろうな。
 この村の村人は一瞬で喰われて死んでいる」

「そう……苦しまなかったんだね」

 ミソノは小さく涙をこぼした。

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