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第10話 直談判

放課後、三人は英語教員の下を訪れていた。
「というわけで!」
「うちのクラスで英語の授業のある日だけでも仮装を許可してもらいたいんです!」

「留学生も居るから金髪の生徒は居るが!」
「仮装とな?」

「形から入るのも日本人の理!」
「私もかってはこの方法で英語力を飛躍的に向上させました!」

「最近はハロウィンも日本で受け入れられているし!」
「仮装に対する敷居は低くなってはいるが!」
「やはり私の一存では!」

「では、権限のある方を集めてください!」
かくして、役員一同と生徒四人による異例の緊急職員会議が開かれた。

「先生お願いします!」
進路指導の担当教員が壇上に立つ。
その教員の落ち着き払った様子からは事前に打ち合わせがあった事が伺える。
「進路指導教員の長井です!」
「今回の件ですが!」
「発起人の新城春華さんはみなさんもご存知かと思いますが!」 
「本校始まって以来の非常に優秀な生徒であります!」
「その為彼女は日本一、あるいは世界一の大学への進学を希望しておりました!」
「それについては学力、品性共に問題は無いのですが!」
「最近、仲の良いご学友が出来まして!」
「優秀な学校への進学よりもご学友と同じ学校へ通いたいと常々相談を受けていました!」
「彼女にとってはご学友との友情の方が大事という事です!」
「非常に美しい友情ではありませんか!」
「進学と言えば人生を決める決断と言っても過言ではありません!」
「にもかかわらず友情を選ぶとはなかなか出来る事ではありません!」
「私としましては進路指導以外に口を挟むのもどうかと思われましたが!」
「この美しい友情と心優しく優秀な彼女の将来を思えばこそ僭越ながら弁をとらせて頂きました!」
「他の先生方にも是非ご理解とご協力の程をと心より願ってやみません!」


会議後。
「よくやるわ!」
「進路指導の先生まで丸め込んで!」

「本当に凄いです!」
「晴華さんとなら何だって出来そうな気がします!」

「そうね!」
「駄目だとか無理だとか思った時!」
「答えは二つしかないのよ!」
「出来るか出来ないかじゃなく!」
「やるか、やらないかよ!」

会議の結果は言うまでもなく。
先生公認でニセ外人の朽木ミーナが誕生した。
晴華の凄い所は仮装だけではなく。
仮装時には朽木ミーナと名乗る事も了承せし得た事である。


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