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第11話 本物VS偽物

「ワタシノナマエワ!」
「ジョン. エンフィールド!」
「アンラッキーナハイスクールスチューデント!」
「オーマイゴッド!」
「ワタクシワカケニマケマシタ!」
「ナノデキテイマス!」
「チッポケナシマグニニホンニ!」
「リュウガクセートシテ!」
「コノクニワヤバンナミカイノクニデス!」
「ナノデコノクニデワ!」
「ニンゲンゴオハナサナクテモイキテイケマス!」
「ナノデコノクニデワ!」
「ニンゲンゴオハナスヒトガスクナイデス!」
「ナノデワタシハオボエマシタ!」
「ゲンシジンゴオ!」

「サルマネニホンジンファックユー!」
ミーナは朝っぱらから教室に入って来た。
よそのクラスの留学生に中指を立てられていた。

ミーナはお返しに英語で口汚い言葉を発しようとしていたが。
すかさず入って来た女生徒にその外人はすぐさま連れていかれたので。
挑発的なポーズのまま立ち尽くしている。
すると、また扉が開いて人が入って来た。

ミーナは当然先程の失礼な外人が戻ってきたと思い。
汚い言葉を発した。
「ヤンキーゴーホーム!」
しかし入って来たのは先程の女生徒のみであった。
「ごめんなさいね!」
「あなたはG組のクラス委員の?」
彼女はクラス委員で英語が得意な為。
問題を起しがちな留学生のジョンの世話係の様な事をしていて。
なんとかジョンがこの学園にいるのは他ならない彼女の手回しと。
後処理のお陰だった。
ジョン.エンフィールド。
アメリカ出身の留学生で日本及び日本人を毛嫌いしている。
なのに、不幸にも日本に来るハメになってしまったらしい。

「ジョンが言うには!」

「猿真似日本人は目障りだ!」
「所詮偽物は本物には敵わない!」
「本物の凄さを見せてやるから!」
「仮装なんか辞めろ!」
「と言っているのよ!」
「英語の為なら英語の授業の前に仮装して!」
「終わったら戻すとかお願いできないかな?」
ミーナは首を振った。
「ジョン、あなたは井の中の蛙よ!」
「本物に胡坐をかいているあなたは全然凄くない!」
「本物より優れた偽物を見せてあげるから!」
「かかってらっしゃい!」
「と伝えて欲しいネ!」

「やれやれ!」
「止めても無駄ね!」
委員長は飽きれたような顔をしながらも笑っていた。
その後も委員長は何度か伝言役を務め。
ミーナが強気を崩さなかった事もあり。
ジョンの得意な本場の英語と本場のダンスで雌雄を決する事となった。

同日、晴華の家のリビング。
「アメリカ人よ!」
「英語よ!」
「母国語よ!」

「本場のダンスよ!」
「外人特有の身体的優位!」
「男女間の能力的優位!」
「そもそも美奈代は運動神経は良くないでしょうが!」

「お待たせしました!」
シャワーを浴びて戻ってきたのは。
ヘアカラーを落としたミーナ。
もとい美奈代であった。
「晴華ちゃんシャワーありがとう!」

「どういたしまして!」
「それはともかく!」
「また真由美が酷いのよ!」
「美奈代はどんくさいからダンスでは勝てないだの!」
「頭が悪いから英語もろくに喋れないだの!」
「あんまりだと思うわ!」

「そこまでは言ってないけど!」
「方向としてはそう!」
「勝てないって!」
「私だってさ!」
「なんとかなるとは思いたいんだけど!」
「男女間の能力差とか!」
「外国人との能力差にはさ!」
「嫌ってほど思い知らされてるから!」
「ただでさえあまり好きそうじゃないのに!」
「運動嫌いになっちゃうよ!」

「まあ正論ね!」
「でも、真由美」
「あなたはその二つの能力差を思い知らされてるのよね?」
「嫌になるほど!」

「うっ!」
「痛い所を!」

真由美は確かに言った。
思い知らされたと。
それは敵いっこない男子や外人にも何度も怯まずに挑んだという事である。
真由美は逃げない。
どんな相手だろうと勇敢に戦って勇敢に負ける。
真由美にとっては敗北は負けではない。
逃げる事こそ負けなのである。

「自分は特別だからと!」
「運動神経が良いから好きだし!」
「負けても心が折れることは無いから!」

「それに対して美奈代は弱いから!」
「運動神経が悪いから!」
「だからと逃げを進めていたのか!」
「私は!」

「ごめん美奈代!」
「私は大馬鹿野郎だ!」

「真由美ちゃん!」
「真由美ちゃんは女の子だから!」
「野郎はちょっと!」

「馬鹿は否定してくんないのね!」

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