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最初の転生



 ――1回目の転生。

「やった! 異世界に転生した! 神様には会わなかったし、チートとかなんもないけど、せっかくだから、がんばるぞ! ひゃっほい」

 俺は興奮していた。

 もちろん、月並みに驚いたり戸惑ったりもしたが、
 ネット小説を読むのが趣味で、異世界転生モノを三百作品以上読破している俺は、
 すんなりと、異世界になじんだ。

 冒険者となり、スライムを狩りながら、レベルを上げていった。

 俺はチートこそないが、そこそこの才能はあったみたいで、レベルはどんどん上がっていった。
 最初の村の近くでスライムを毎日千匹(リポップ制だったので、枯渇はしなかった)狩るだけで、10年経った頃には、レベルが50になった。

 戦士系のスキルも充実していて、俺は、その周辺ではちょっとした顔になっていた。


 レベル50を超えたけど、俺は、飽きずにスライムを狩り続けた。
 そう、俺はやりこみ型のゲーマーだったのだ。
 それも、効率とか無視で、とにかく最初の村周辺でレベルをMAXまであげるタイプのちょっと変人系。
 はい、自覚はありますよ。
 でも、それが楽しいんです。


 スライムをチマチマと倒し続けて、ちょっとずつ、ちょっとずつ、レベルを上げていく。
 この作業が楽し過ぎて、気付けば、俺のレベルは100になった。

 レベル100に到達した時の年齢は59歳。
 まだまだ人生はここから。


 俺は、ついに、最初の村を飛び出した。


 ハッキリ言って、何もかもが楽勝だった。
 俺は強くなり過ぎた。

 しかし、それでいい。
 これが楽しい。
 この感覚が好きで、俺はスライムを20000000匹も狩りまくったのだ。


 最初にアレっと思ったのは、63歳の時。
 世界を支配していた七大ドラゴンの内の2匹目を倒した時だった。


「俺のレベルっていつまで上がるんだろう?」

 俺のレベルは150を超えていた。

「200? まさかの300?」



 その後も、俺のレベルは上がり続けた。
 強くなり続けるのが楽しくて、俺は、毎日、修行ばかりしていた。
 二度目の人生、その八割は修行で、残りの二割は移動だった。

「ついに、ランク7の魔法が使えるようになったぞ。あれ? 俺って、もしかして、世界で最強の魔法使いじゃね?」

 その頃には、苦手だった魔法も世界最高峰レベルで使えるようになっていて、剣の腕前に関しては笑えない領域に至っていた。
 気付けば、剣聖だの賢者だの呼ばれ、崇め奉られていた。

「え、弟子? いやぁ、そういうのはやってないんすけど……」

 知らん間に、弟子が一杯増えていたりもした。
 最終的には、十万人くらいが俺の弟子になった。

 チヤホヤされるのは嫌いじゃないし、他人に教えるのも悪くない修行になった。
 教える。強くなる。また弟子増える。
 そんな事を繰り返していた俺もヨボヨボのジジイになった。

「楽しい異世界ライフだった。できれば、限界まで強くなりたかったが、まあ、贅沢は言うまい」

 俺は最後にそう言い残して逝った。
 享年89歳。レベルは322。どうやら、レベルは、まだまだ上がりそうだった。

 出来れば、カンストしてから逝きたかった。




 そう思っていた俺は、次の異世界で、「おぎゃー」と産声をあげた。

 俺の無限転生地獄は、始まったばかりだった。

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