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69 イベント開始

 メンバーは早々に決定したが、イベント自体はリアルで約7日後。ゲーム内だと約20日。なにをしようかいろいろ検討したが、結局その期間は行動範囲をあまり広げずに、いろいろな準備に充てることにした。

 午前中はアルとイチノセ周辺でレベル上げと素材回収。午後からはコンダイさんと農業と開墾、夜は【木工】【細工】の熟練上げで開墾で採取した雑木を使って置物を作ったり、訓練用の木剣やら木槍なんかを作ったり家具を作った。あ、変わったものとしてはリナリスさんが看板がある店が少ないと言っていたので看板も作ってみた。いろんな形のもので店名は手書きで書いてもらうタイプのものだ。

 そうやって無駄に増えすぎた木工製品は商業ギルドで自動販売機っぽい無人販売機がレンタルされていたので、それを店の前に置いて、適当な値をつけて登録しておいた。家具や看板はホーム持ちや店持ちになら多少は売れる可能性はあるだろうし。

 置物はスキルレベル上げのために作っただけだから、いろいろな動物や道具、魔物をリアルにしたりデフォルメしたり、大きさを変えたりしてかなりバラエティ豊かに作った。こうなるとひとつひとつ値付けするのは面倒だったので、一律同じ値段でガチャ方式で売り出すことにした。これらは正真正銘の置物だから酔狂なコレクターとか、興味本位の人にいくつか売れれば御の字か。

 木製の武器各種は本当に訓練用なので性能的に戦闘には使えないから売れることはないと思う。でも、修学旅行なんかで見つけるとつい買ってしまう木刀があるくらいだから、もしかしたらいくつかは売れるかも、みたいな? そんな適当な売り物ばかりで店としてどうなんだ、という突っ込みはあるだろうけど現状儲けは考えていないし、自分のお店だからある程度は好きにやろうと思う。
 
 あとはイベント用に自分の畑で育てた癒草などの薬草を収穫してポーション類などを調合したり、おかみさんと料理の研究をしながらイベント中に食べられるように料理を作ってストックしたりしているうちに、あっという間にイベント開始日になっていた。で、イベント開始直前の私のステータスがこれ。


名前:コチ
種族:人間 〔Lv 10〕
職業:見習い〔Lv 15/15〕
副職:なし
称号:【命知らず】【無謀なる者】【兎の圧制者】【時空神の名付親】【大物殺し】【初見殺し】【孤高の極み】【幸運の星】
記録:【10スキル最速取得者〔見習い〕】
   【ユニークレイドボス最小人数討伐(L)】
加護:【ウノスの加護】【ドゥエノスの加護】【トレノスの寵愛】【クアノス・チェリエの信徒】【チクノスの加護】【セイノスの注目】【ヘルの寵愛】

HP: 340/340
MP: 700/700
STR:15
VIT:15
INT:15
MND:15
DEX:15
AGI:15
LUK:107
SP :0
スキル
(武)
【大剣王術3】【剣王術4】【短剣王術4】【盾王術3】【槍王術3】【斧王術2】【拳王術3】【弓王術3】【投王術4】【神聖剣術4】【体術9】【鞭術5】【杖術6】【棒術5】【細剣術5】【槌術7】
(魔)
【魔力循環4】【魔法耐性7】【無詠唱】【連続魔法】【並列発動】【魔力操作】【神聖魔法5】【火魔法9】【水魔法9】【風魔法9】【土魔法9】【闇魔法7】【光魔法7】【召喚魔法5】【付与魔法7】【精霊魔法3】【時空魔法1】【時魔法★】【空間魔法★】【回復魔法★】
(体)
【跳躍9】【疾走10】【頑強11】【豪力6】【暗視4】
(生)
【農業8】【畜産3】【開墾7】【伐採5】【採取9】【採掘6】【釣り3】【料理9】【調合8】【調合(毒)4】【錬金術5】【鍛冶7】【木工7】【細工6】【彫金5】【裁縫5】
(特)
【罠設置3】【罠解除3】【罠察知3】【気配遮断6】【索敵眼7】【鑑定眼8】【看破5】【死中活5】【孤高の頂き】【偶然の賜物】
『見習いの杖+5 INT+63 STR+32 耐久∞』
『見習いの盾+5 VIT+56 耐久∞』
『見習いのシャツ+5 VIT+36 耐久∞』
『見習いのズボン+5 VIT+36 耐久∞』
『見習いのブーツ+5 VIT+12 AGI+12 耐久∞』 
『軽鋼の籠手+3 VIT+50 DEX+41 耐久96』
『銀花のネックレス INT+16 MND+8 状態異常耐性(小)』
『白露の指輪 INT+20 MP+50 水魔法補正 ストック(×7) 解放』
『欺罔の指輪 INT+2 MND-1 ステータス偽装』
『白兎のコート+2 VIT+21 耐久64 耐寒(小)』

 大きく変わったところは種族レベルと見習いレベルが上がったこと。これにより全ステータスが+3された。SPは全部MPに極振りのため、MPだけはそこそこある。あとはちょこちょことスキルレベルが上った。一番大きな変化としては【時魔法】【空間魔法】がカンストして【時空魔法】になった。ヘルさん関係の称号と寵愛のおかげで見習いなのに時空系の成長率が異常にいい。

 装備については探索範囲を広げられなかったので、強化できるだけの素材は集まらなかったから性能は据え置き。今回はパーティの役割的に支援回復メインなので武器は見習いの杖を使ってINTを底上げ。見習いは魔法職のように盾装備不可とかの縛りはないので、今回は盾も装備していく。さらに白露の指輪のストックをしっかりと7つとも充填しておいたのでMPは1400相当。これだけMPがあれば、一発の威力が低い私の魔法でも【連続魔法】と【並列発動】を使って数で補えるから最低限の役割は果たせると思う。
 あとは生命線になるかも知れない薬各種や食料の在庫がきちんとインベントリに入っていることを確認しているうちに、視界の端っこに表示していた時間の隣に追加表示されていたイベント開始時間までのカウントダウンが残り30秒を切っていた。

「皆さん、そろそろ召喚が始まりますので準備はいいですか?」

 イベント終了後は、今いる場所へと戻るということなので参加メンバーは全員ホームの2階リビングに集合してもらっている。

「私は問題ないよ、コチ君」

 初めて見る戦闘装備を身に付けたウイコウさんはかなり格好いい。おじさんには辛いからと冗談めかし、金属製の防具は身に付けていないが腰に下げた剣と濃紺のロングコート。そして、その下に着込んでいる服もただの服ではないのだろう。

「緊張することないよコォチ。あたしに任せなさいって」

 こちらは戦闘用の軽鎧を着込み小剣を二本装備したミラが、尻尾をゆらゆらと揺らしながら欠伸しそうなくらいリラックスしている。普通なら勇ましい格好をすれば気が引き締まりそうなものだが気まぐれな猫系獣人のミラらしい。

「ふん!」

 大きな戦槌を軽々と肩に担いだドンガ親方が口ひげを揺らす。親方はあの戦槌を片手で振り回せるので戦闘時には背中に背負った盾も同時に装備できる。体防具は良い素材がなかったため、板金鎧ではなくチェインメイルと呼ばれる鎖帷子。だが親方曰く、装備の良し悪しでパフォーマンスが変わるようじゃまだ二流、らしい。

「楽しみですねぇ、コチさぁん」

 ミラとは違った意味で緊張感が感じられないファムリナさん。濃緑のローブに見た目の印象を薄くする認識阻害の効果がついた麦わら帽子を被っている。これはウイコウさんが釣りの時に被っていた帽子のようなもので、プレイヤー達にファムリナさんが身バレしないための対策だ。猫系獣人もドワーフも夢幻人の中に結構いるから、ミラと親方はなんとかなるという見込み。ウイコウさんはそもそも本当の姿は知られていないし、無表情だったただの門番であるアルも、今のアルとはイメージが違い過ぎるからばれないだろうし。そういう意味ではエルフもたくさんいるんだけど、ファムリナさんはその……お胸が強い印象を、お、おお、抱きかかえるように持っている杖が双丘に埋もれ……ん、ん! つまりそういうことだ。 

「さあ、行こうぜコチ!」

 そして、最後に無理矢理今回の同行を勝ち取ったアル。相変わらず粗雑に見える革鎧だけを身に付け軽薄な笑みを浮かべていて、呑気すぎていらっとするが……悔しいことに安心感だけはある。絶対に口に出しては言ってやらないけどね。

「それではおかみさん、エステルさん。こちらでは6時間ほどですが、留守をお願いします」
「あいよ、しっかりやっといで」
「ちゃんと待っててあげるから、無事で帰ってきなさいよ」
「はい、では行ってきます」

 私たちを見送ってくれるおかみさんとエステルさんに小さく手を振ると同時にカウンターが0になり、私たちの視界は白い光に埋め尽くされた。

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