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幕間 クリスSIDE

 僕は『クリストファー・フェルメント』、この国の第2王子だ。
 ある日、父上に呼ばれ僕は執務室を訪れた。
「クリスです、入ります。」
「入れ。」
 ドアをノックして僕は執務室に入った。
「父上、ご用でしょうか?」
「うむ、クリス。先日、赤髪の娘が来た事を覚えておるな?」
「はい、覚えてますよ。しっかりと自分の考えを持っていて感心していました。」
 先日、この国に数人しかいない赤髪の少女を城に招待した。
 まぁ、実は貴族から『養子にしたいのに断られている。国王から何か言ってほしい。』とせつかれて招待した。
 やってきた少女、リリィは綺麗な赤い長髪で凛とした目をしている少女だった。
「儂も同感じゃ。幼いのにあんな立派な考えを持っているとは思っていなかった。この儂に意見を言える人間など少なくとも王宮にはいないからのぉ。あのような者が国の仕事に就いてくれればこの国は安泰じゃ。」
「しかし、彼女はどうも貴族や我々王族と接するのを嫌がっているように見えます。」
「儂もそう思う。そこでじゃ、クリス、お前を孤児院で働く事を命じる。」
「……はい?」
「お前に赤髪の娘の監視、それから社会勉強をしてほしいのじゃ。この城にいても社会の事など学ぶ事が出来んだろうしのぅ。」
「そ、それだったら兄上にも頼めばいいじゃないですか。」
「アイツはダメじゃ。宰相の言いなりになっておる。」
 兄上『アインツ・フェルメント』は現在王位継承の第一位で王太子の役職を担っている。
 しかし、兄上は我儘で遊び放題、国の政になんて興味が無い。
 そうなったのも宰相が原因で、甘やかしたりちやほやしたりしているからだ。
 今のままの兄上が王になったら秒殺でこの国は崩壊へと向かうだろう。
「だから、僕ですか……。」
「それにこれはお前の命を助けるための手段でもあるんじゃ。」
「僕の、ですか?」
「アインツはどうも邪魔になりそうな人物を消そう、としておる。」
「っ!? い、いくら兄上でもそこまでは……。」
「儂も流石にその様な愚かな行為をするとは思えん。だから今、密かに調査を進めておる。」
「そうですか……。」
「じゃから、お前は孤児院に身を隠せ。既にシスターにも話はしてある。」
 こうして、僕は孤児院の臨時職員として働く事になった。

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