幕間 クリスSIDE2
父上から命を受けて数日後、僕は孤児院にやって来た。
「遠い所からわざわざ来て頂いてありがとうございます。」
此所の責任者であるシスターに挨拶をする。
「今日からお世話になります・・・・・・、ところでシスター・・・・・・、いえ『姉上』、お元気そうで何よりです。」
「クリス、此所では私の事はシスターと呼びなさい。まぁ、こうして二人きりの時は良いけど。」
そう、実はシスターは僕の姉上である。
本名『ミラエル・フェルメント』、れっきとしたこのフェルメント国の王女であり、『聖女』でもある。
「正直、姉上の姿を見た時は心臓が飛び出るぐらい驚きましたよ・・・・・・。」
「全くと言うほど連絡をとっていなかったからね。」
姉上は苦笑いする。
「でも、大体の事情は把握しています。真相を知った時は本当にあの『バカ勇者』を殺してやろうか、と思いましたよ。」
「余り物騒な事は言わない方が良いわよ。私はもう気にしてないから。」
姉上がシスターになった理由、それは『勇者に裏切られたから』だ。
姉上は勇者と共に世界を救う旅をしていた。
勇者のパーティーは他に戦士、僧侶と言ったメンバーだった。
勇者以外は全員女性で所謂ハーレムだ。
そして、姉上は勇者に惚れていて二人は付き合っていた。
僕や父上は二人の交際を見守っていた。
しかし、突然姉上は勇者に捨てられてしまった。
しかも『偽者の聖女』という烙印を押されて。
原因は勇者の浮気だ。
力をつけてきた勇者はだんだんと俺様な性格に変貌していった。
過ぎた力は身を滅ぼすとは良く言った物だ。
結局、姉上はパーティーを追い出され国に帰ってきた。
その時の姉上は目に力が無く部屋に引きこもっていた。
心配した父上は、当時跡取りがいなかったこの孤児院を姉上に任せる事にした。
そのお陰か姉上は徐々にだが元気を取り戻していった。
その後の勇者パーティーだが悲惨な末路を歩む事になった。
回復役を担っていた姉上がいなくなった事で一気に苦しい戦いを強いられる様になり最終的にはパーティーは解散となり、その後はわからないし知りたくもなかった。
孤児院の運営に忙しくなり最近は全く連絡をとっていなかったがこうして再会出来たのは嬉しかった。
「ところでリリィという少女は・・・・・・。」
「彼女、最近は魔法を学んだり勉強に勤しんでいるわ。どういう心境の変化はわからないけど。自立心が芽生えて来たのね。」
そう言って姉上は笑みを浮かべる。
「最初は違っていたんですか?」
「えぇ、彼女は正直世の中を知らなすぎる夢見る少女だったけど、今は積極的に世の中に関わろうとしている。現実を見ようとしているわ。」
なるほど、どうやら何やら心境の変化があったみたいだ。
僕が出来る事は彼女を応援するぐらいだ。