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第02話 依頼失敗?

 
 ゴブリン討伐の為に町を出た。
 場所はそんなに遠くないみたいだけど、馬にも乗りたかったので、厩舎によって馬を受け取った。
 一日銀貨二枚だったため、今日の分という事で銀貨を二枚支払わされた。
 忘れてたね、今日来てなかったらどうなってたんだろ。今日、帰って来たら、少し余分に払っておこう。
 でも、あれ? 冒険者ギルドに登録したらいらないんじゃなかった? 帰って来たらもう一度確認だね。

 歩くと一時間近くかかるという事だったけど、馬だから三十分も掛からずゴブリンがよく出ると言われた場所に辿り着いた。

「衛星達、今日はゴブリンが目当てだよ。ゴブリンは素材にならないらしいから、倒したら処分ね。燃やせばいいらしいから。あ、でもその前に、昼飯にしようか。今日は、そうだね……昨日から肉ばっかりだから、あっさりしたものがいいな。そうだなぁ、うどんなんてできる? きつねうどんがいいな、甘い油揚げが入ったやつね」

『Sir, yes, sir』

 やっぱりできるんだ。こういうところは凄いんだけどなぁ、俺も育ててくれよな。

 馬から降りて、周囲を見渡す。
 
 高い樹は無く、膝ぐらいまでの雑草や腰ぐらいまでの雑木が疎らに生えている見通しの良い場所で、草原と言うには汚い感じのする所だった。
 トラクターでもあったら、いい農場ができそうだな。町からは少し離れてるけど、これだけの平地を遊ばせてるなんて、勿体ないね。

 衛星が作ってくれたうどんは、出汁がよく効いていて、濃くなく薄くもなく実に美味しいうどんだった。油揚げの作り方も知ってたんだね。その割には薬味が入って無かったのが残念だ。
 言わなかったから知らなかったんだろうね。こういう細かい事はキチンと言ってあげないと分かってくれないんだよな。

 では、早速ゴブリン退治へ。
 装備は万全、和弓よし、矢よし。さ、いつでも出て来いやー!


 ま、いつも通り、三時間探しましたが魔物には出会いませんでした。
 これだけ見通しがいいのに、一匹のゴブリンも見なかったよ。これって衛星達だけのせいなのかなぁ。確かに十二の衛星のうち、俺の周りには四つしかいなかったけど。
 最後は馬に乗って探し回ったんだけどなぁ。場所が違ったのかな?

 もう日が暮れかけて来たので、町へと戻る事にした。

 馬車を預けて冒険者ギルドへ向かう。

 厩舎で聞いてみたら、#今日から__・・・・__#タダにしてくれるって言われたよ。今日支払った分は何の連絡もないまま、昼まで預かってるから一日分は取られるんだって。



「ようこそフィッツバーグへ。何かお困りですか?」

 えっ?
 どっかで聞いたセリフなんだけど。

「何かお困りではございませんか?」ズズー
 えっと……昨日のツインテールの#娘__こ__#だよな。まさか双子って訳じゃ無いだろ。髪型だけじゃなく、声はちょっと鼻声になってるけど顔も同じだもん。ほくろの位置とか言われたら覚えて無いけど、昨日のツインテールの#娘__こ__#で間違いないよな。俺の事覚えて無いのかな?

「あのー」
「はい、お困りなんですね」
「い、いや。俺の事覚えてない?」
「またぁ、そうやっていつも口説いてるんですか? 私は今日からなので、知り合いなんていませんよ」ズズー
 じゃあ、別人? ずっと鼻をすすってるけど、風邪でもひいてるの?

「そ、そうなんだ。俺も昨日この町に来たとこなんで、まだよく分からなくて」
「それはお困りですね。どこをお探しですか?」
 昨日と同じだと思うんだけどなぁ。
 ま、いいか。教えてくれるって言うんなら、アイファとご飯を食べに行けるようなお店を教えてもらおう。

「若い女の子がよく食べに行くようなお店って分かる?」
「もう、お兄さんったらー。もうお目当ての女の子がいるんですね。それだったら、この大通りを真っすぐ行って七筋目を右に行った所にあります。七筋目ですよ」
「七筋目?」
「はい、七筋目です」ズズー

 同じじゃん! やっぱり昨日と同じ#娘__こ__#だよ。同じ七筋目って言ったもん。そこに行ったら絡まれるんだよ。昨日も行ったもん。
 漫才コンビがいて、この#娘__こ__#はそいつらから姐御って呼ばれてた#娘__こ__#だよ。

 じゃあ、なんだよ今日からって。そういう設定って事かよ。
 これは、あんまり関わらない方がいいよな。

「じ、じゃ、ありがとう…」
「あ、お兄さん」ズズー
 ツインテールの女の子が手を出した。

 あ、銀貨一枚だっけ。忘れてた。聞かなきゃよかったよ。

「銀貨一枚?」
「はい、銀貨一枚です」ズズー
「風邪でもひいてるの?」
「はい、あ、いえ、大丈夫です」ズズー

 すっかり忘れてたな。この#娘__こ__#達、あれからいつまで寝てたんだろ。あんな道で寝たから風邪ひいたんじゃないの?
 こういうのって兵士に言ってやった方がいいのかな。こんな事してるのはこいつだけで、他の案内人は普通に案内してるように見えるし。判断に困るね。冒険者ギルドで聞いてみよう。

 でも、俺の事をなんで覚えて無いんだろうね、会話も少しだし、七筋目ではほとんどの顔を見られてないし、覚えて無いのかもしれないね。それとも衛星がなんかしたのかな?

 ツインテールの女の子と別れて大通りを進む。
 もちろん七筋目では曲がらず、そのまま真っすぐ冒険者ギルドを目指す。

「ちょいとあんた、どこ行くんだよ」

 えっ? 誰?
 振り向いてみると、さっきのツインテール。

「あたいは七筋目って言ったんだよ、もう七筋目を過ぎちまったじゃないか」
 やっぱり俺の事を忘れてるのかな? 会った時間も短いし、覚えて無いんだろうね。でも、言葉使いも全然違うから、もしかしたら本当に別人? いや、七筋目って言ったって言うんだから別人じゃないね。

「いや、食事に行くのは今日じゃないんだ。また今度行くために聞いたんだよ」
 冒険者ギルドで聞くまでは穏便にいきたいからね。

「じゃあ、あたいが付き合ってやるよ。一緒に来な」
「い、いえ、お断りします」

 ダッ!

 俺は走って逃げた。

「ちょ、ちょっと待ちなって! 仕方がねー、こうなったら」

 シュッ! キン! ゴンゴンゴン!

 なんか昨日と同じような音が聞こえたけど、もう関わり合うのはゴメンだ。このまま一気に冒険者ギルドまで走ろう。
 俺は振り向かずに、一目散に走って逃げた。

 なんなんだろうね、あいつらって。なにがしたいんだろ?


 それからは邪魔が入る事も無く、すぐに冒険者ギルドに辿り着いた。後ろを見て誰も追いかけてきていない事を確認し、冒険者ギルドに入った。
 中に入ると冒険者でいっぱいだった。

 これは時間が掛かりそうだ。先に倉庫へ行ってみよう。

 倉庫も人がいっぱいだった。途中で見た買い取り受付のポーリンの所もいっぱい人が並んでいた。
 これは今日は時間が掛かるな。でも、待つしか無いね。

 今まで買い取った分だけでも、先にお金をくれないかなぁなどと思っていると、俺を見かけた職員が俺のところにやって来て、マスターの部屋へ行くように伝言された。
 なんだろう、今日ももう一度出すのかな?

 マスタールームに行ってみると、座るように促されたので、マスターの向かいに座る。

「どうだった、ゴブリンは何匹倒した?」
「いえ、一匹も倒してません。一匹も出会わなかったんです」
「ほー、それは珍しいな。どこまで行ったんだ」

 場所を説明すると、マスターはすぐ分かってくれた。
「おかしいな、そこは初心者向けにゴブリン討伐を勧めてる地域だ。全く見なかったってのは初めて聞いたな」
「そうなんですね。でも、見なかったです」
「むぅ、まぁいい。今日来てもらったのは今までの精算だ。昨日と今日の2回ずつ出してもらった分だ」

 マスターがそう言って高さ二十センチぐらいに膨らんだ布袋をたくさん出してきた。
「詳細は、ランレイ頼む」
「はい、かしこまりました」

 秘書のランレイさんは返事をすると俺に向かって説明を始めた。
「こちらに来て頂いたのはあまりにも金額が多すぎたからです。これだけの金額ですから人目に付くと良からぬ事を考える者が出るかもしれませんので、ご足労頂きました」

 そう前置きをして秘書のランレイさんが詳細を読み上げてくれた。
 薬草が八万七千……、毒消し草が五万二千……、ビッグラットの毛皮が……、牙が……、ホーンラビットの角が……

 いっぱい読み上げてもらったけど、まったく頭に入って来ない。数が多すぎて覚えた後から忘れていく。一つ一つの小計も言われたが、白金貨が何枚、金貨が何枚、銀貨が何枚、銅貨が何枚と細かく言われるから全く頭に入って来ない。まるで知らない外国語を聞いてるようだった。

 合計は白金貨が二百十一枚、金貨が八十七枚、銀貨が三十三枚、銅貨が六十一枚。
 繰り上がったものは上の位の硬貨にしてくれたそうだ。
 両替もいつでも無料でしてくれるって言ってたけど、この金額ってどれ程の事ができるんだろう。

 マスターが渡してくれた大量のお金の入った袋は俺の収納ポーチに納める。

 宿代、飯代、入門料、馬の預り代。俺が払った事のあるのはこれだけ。
 基準はやっぱり飯代だと思うんだけど、メニューを見た感じだと幅がありすぎたよね。なら、宿代か。

 んー……よく分かんないね。ボチボチ覚えていこうか。
 でもひとつだけ分かる。今日の精算で、宿にはいつまでも泊まれるって事だ。

 それなら家も買えるんじゃね? でも、この町が俺にとって住みやすい町かどうかもまだ分かんないしね。家を買うってのは、判断が難しいね。

 帰る前に倉庫を満タンにしてくれってマスターに言われて、ご要望通りに倉庫を満タンにした。
 付き添ってくれたマスターが言うには、最後の分だけで、今日もらった分以上の買い取り金になるだろうって言われた。

 今までは下位から中位の買い取りのやつを出してたけど、今のは上位ランクの依頼の物を出したからね。
 それを倉庫いっぱいに出してるんだから、金額としては同等以上になるかもしれないね。

 少し時間も経ったし、受付を覗いてみると大分列が短くなってきていた。
 そのままアイファの列に並び順番を待つ。
 少し待つと俺の番になった。

「いらっしゃいませ、本日はどのような……なーんだイージじゃない」
 なに、その変わりよう。

「今度はなに?」
 もう俺には前で並んでた人みたいに丁寧な言葉では対応してくれないんだ。

「いや、あのさ、今日、ゴブリン討伐に行ったんだけど、全く見つけられなかったんだよ。ゴブリンどころか、他にも魔物を見つけられなくてさ。場所が合ってるか確認したいんだ」
「そんなのは冒険者同士でやってよね。でも、ま、仕方が無いわね。イージがどうしてもって言うんなら、教えてあげなくもないわ」

 こういうのって受付じゃ教えてくれないの? 依頼に関する事だから教えてくれるものだと思ってたけど。
「うん、ゴメン。次からはそうするよ」
「ば! 何言ってんの! 次からも私の所に来るの! わかった?」
 どっちなんだよー。

 今日行った平地の場所をアイファに伝えた。場所はアイファも知ってたみたいで、すぐに分かってくれた。

「おかしいわねぇ、その場所は新人や下位ランクの人にはお勧めしてる場所よ。魔物を見なかったって話は聞いた事が無いわね」
 やっぱりそうなんだ。さっきマスターも同じ事を言ってたもんね。

「これって依頼失敗になるの?」
「フッ、あなた私を誰だと思ってるの?」
 いえ、アイファさんだと思いますが。

「あなたが持って来た依頼書は、はい! この通り、私が預かっておいたわ」
 アイファの手にはゴブリン討伐の依頼書があった。

 なんで?

「なんでって顔してるわね」
 アイファはムフムフ顔で嬉しそうだ。

「普通、ゴブリン討伐は討伐後に依頼書を持ってきて依頼完了させるの。数が分かるからね。新人や下位ランクの冒険者だったらゴブリン討伐でも失敗する事もあるわ。その為の救済措置みたいなもんね」
「ふーん。アイファって色々知ってるんだね。勉強になるよ、ありがとう」
「ば、な、何言ってんのよ。こんなの冒険者ギルドに関わる者だったら誰でも知ってるわよ。常識よ常識」

 ふーん常識なのか。その割にはドヤ顔なんだね。

 他にゴブリンがいそうな所を聞いてみると、食堂前の売店で地図を売ってると教えてくれたので買う事にした。その地図にはDクラスの魔物までなら、よく出る場所をある程度書いてある地図だそうだ。旅行者にも好評の地図で、冒険者ギルドが独自で販売している地図だそうだ。

 よし、今晩は宿で地図を見て明日の作戦を考えよう。
 アイファにお礼を言って冒険者ギルドを出ると、そのまま宿に隣接している食堂に行き、食事を摂るとそのまま部屋に入った。

 地図を確認し、明日の予定も立てた。
 明日こそはゴブリンを倒すぞ!

 またなんか忘れてる気がするなぁ。
 

しおり