バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

第03話 盗賊団

 
 翌朝は早くから町を出た。
 昨日のアイファの話だと、ゴブリン討伐だったら事後承諾でもいいという事だったので、冒険者ギルドにも寄らず町から出て来た。

 Gランクの俺としてはゴブリン討伐が第一目標だから、まずはゴブリンをせめて五匹は倒したいところだ。
 俺ってGランクでいいよね? まだカードはGランクカードだし、依頼も四枚しか達成してないからGランクだよね?
 達成した依頼は薬草、毒消し草、ビッグラットの素材、ホーンラビットの素材。それも一枚ずつだ。素材はたくさん買い取ってもらったけど、依頼達成したわけじゃないから上がってないよね? マスターからも何も言われてないしさ。


 昨日行ったのは町の東門から出て北側に向かって行ったから、今日は南側だ。ベンさんと来た方向だ。
 盗賊団がいたけど、もういなくなってるだろう。でも、もし盗賊団と出会ったら、頼むぞ衛星達。

 三十分ほど進んで、休憩を入れる。
 今日は朝食をまだ食べて無かったから、衛星達に朝食を作ってもらった。
 宿では素泊まりにして、食事は都度払うようにしているから何の問題も無い。衛星達が作ってくれた料理の方が美味しいんだから、町の外に出られる時は、衛星達に作ってもらうようにしよう。

 朝食はタマゴサンドにコーヒーを作ってもらった。うん、美味い。

 そうだ、このパンなら他所の店に行くよりアイファが喜んでくれるかもしれないね。余分に作ってもらって収納しておいたら作りたてを渡せそうだし、いいんじゃない?
 あと、ケーキなんかも作っておけば、喜んでもらえる事間違いないね。

 衛星達にチーズケーキとイチゴケーキをホールで作ってもらった。美味そうだよ、これは渡す前に味見しないとな。

 衛星と出会った初日に作ってもらったステーキ用のナイフでケーキを八等分にカットして、その一つを食べてみる。
 うっわ! 美味すぎ! 久し振りの甘いものだから二個ずつ食べちゃったよ。
 女子は甘いもの好きが多いから、きっと喜んでもらえそうだね。

 さて、あと三十分も馬を走らせれば、今日の第一目的地だね。


 第一目的地は昨日の平地より狭いが、同じような場所で、草原のようだけど、全体に草が生えている訳では無く、疎らに生えている。雑草や雑木の背も低く、体長五十センチほどのホーンラビットでも隠れながら移動するのは困難な場所だった。

 ここも魔物が見当たらないね。一周して何も見かけなかったら次に行こう。

 残念ながらゴブリンどころか魔物を一匹も見つけられなかったので、昨晩から決めていた第二目的地に向かった。

 
 第二目的地も同じくまったく魔物に出会わない。
 第三目的地に着いて、やはり魔物の気配がしないので昼食を摂った。
 昨夜、地図を見ながら考えたのは、同じ方向に五つの魔物がいるという印があったので、第五まで行くと日帰りは難しいかもしれないけど、この際仕方が無い。何か成果を出したかったから。
 野営は何度も経験したし、衛星がいるから安全も確保されている。一人での野宿は久し振りだけど、馬もいるしね。

 その日のうちに第五目的地まで辿り着いたが、やっぱり魔物とは一切出会わなかった。
 もうここまでくると衛星の仕業としか思えない。
 ベンさんと移動してる時も魔物と一度も出会ってない。そして今もだ。もう、何を言っても聞いてくれないだろうから、ここはなんとか衛星の目を搔い潜って……無理だね。

 今のままじゃ採取依頼しか受けられない。衛星に討伐は邪魔されるのは確定なんだから。でも、それはそれでいいんだ。衛星のおかげで採取達成率100%なんだから。

 ただ、今のランクじゃ上のランクの素材は売れても依頼達成とはならない。達成とならなければランクも上がらない。上がらなければ上のランクの依頼が受けられない。

 うーん、残念なループが完成している。これは別の方法を見つけなければ。

 今日は、何か方法が無いか考えるためにも野営の方がヒントが見つかるかもしれないね。

 野営の準備のため、街道から少し森に入った所でいい場所は無いかと探していると、誰かが森に入って来たのが分かった。
 ホント偶然なんだけど、偶々目をやった先に動くものを見つけたんで、衛星を出し抜けるかもと思って近寄ってみたら人間だったんだ。

 なんでこんな所にって不審に思って、もっと近寄ってみたら、どうもこいつらは盗賊らしかった。

 見た目が前に見た盗賊と同じ格好をしてるんだよ。盗賊団が着ていたお揃いの革の裾長ベスト、前の見た盗賊団のと同じだったんだ。

 俺はブルったね。逃げようと思ったけど、すぐには動けなかった。音でバレそうな気がしたから。俺のビビり度をなめんなよ!

 息を殺し盗賊達が行ってしまうのをジッと待つしか無かった。
 一人だから怖すぎだよ。

 確認したら七人いたよ、顔までは分からなかった、というか、顔が分かるぐらい近寄れるはずがないじゃん。
 盗賊達が過ぎ去った後も、しばらくその場を動けずにジッとしていた。まだ来るかもしれないじゃないか。衛星がいるから安全だと分かっていても、怖いものは怖いんだよ。

 それから一時間はその場にいたと思う、もうすっかり辺りは暗くなっていたから。
 馬を繋いでいたのを思い出して、馬の所に戻ろうと衛星に頼んで前にやってもらったように、明るくしてもらった。周囲の魔物に悟られないってやつね。

 その場から離れる時は、盗賊に見つからないかと気が気でなかったけど、少し離れると余裕が出て来て、今度は馬の心配をした。魔物にやられてないだろうかって。
 それは衛星が一個残ってフォローしてくれてたみたいだ。馬は無事だった。

 馬と合流すると、プルルルと嬉しそうに鳴いて顔を寄せて来る。その顔を撫でてやると今度は顔を摺り寄せて来る。可愛いもんだね、馬耳お姉さんのポーリンもこれぐらい懐いてくれたらいいのにね。昨日から睨まれてばっかりだよ。

 大分余裕も戻ったし、ここで夕食を摂る事にした。さっきの所からだとここは見えないだろうし、衛星達が周りからは見えないようにしてくれているはずだ。

 ん? 見えない? そうだよ、見えないんだよ。昼はともかく、夜なら見つからないはずだよ。
 安心してここで寝ればいいよね。朝になったらさっさと出発すればいいんだもんね。
 いや、ちょっと待てよ。見つからないんだよな。それなら、盗賊団を倒せるんじゃないか? 確か依頼だと盗賊関係は魔物関係じゃ無いから、ランクに関係なく冒険者なら誰でも受けられる依頼だったはずだよ。いやいや、無理だね。何人いるかも分からないんだよ? さっき見ただけで七人もいたんだ。絶対もっといるはずだよ。

 でも、倒す必要は無いのか。盗賊団のアジトの情報だけでもランクアップに繋がったはずだよ。ランクアップすれば上のランクの素材採取を受けられるようになるし、そうすれば俺のランクも上がるよな。
 なんかいい感じのループが出来上がって来たぞ。うん、これ行けるんじゃない?

 馬のお陰かな? なんか余裕が出て来たよ。ベンさんといた時もこんなに心細く無かったし、やっぱり仲間って必要なんだな。誰かパーティを組んでくれないかな。レベル1の奴とパーティ組みたいって奴なんかいないんだろうな。

 よし! やってやるぞ! レベルは1でもランクが上がればパーティを組んでくれる人が現れるかもしれない。その為には盗賊団のアジトを突き止めてランクアップだ。

 飯を食って眠くなっても困るから、夕食は食べずに盗賊団のアジトを探す事にした。と言っても衛星頼みなんだけどね。

「衛星達、さっきの七人組の行き先を探してほしいんだ。それで見つからないように俺を連れて行ってほしい。できる?」

『Sir, yes, sir』

 さすがだね、ホント優秀な奴らだよ。

 すぐに衛星の一つが案内役として、足元を照らす&道の確保をしてくれた。俺はそれに付いて行くだけ。
 念のために装備も確認。俺の事を見くびるなよ。衛星達が守ってくれるとは言っても、無防備でいれる程、肝は座って無いからね。


 衛星について行く事三十分。盗賊団のアジトは見つかった。

 洞穴に、木で造ったドアを付けている。特に見張りも立ててない。
 そりゃそうだよね、こんな森の深いとこまでは誰も来ないだろうからね。でも、魔物対策のために見張りは置いた方がいいと思うんだよね。やっぱり盗賊をするぐらいなんだから、俺と違って肝が座ってんのかな。それともただのバカか。

 場所は分かった。地図を見る限りだいたいの位置を示す事もできる。これで依頼達成とはならないかな。見張りもいないし、俺の事も見えないはずだから少し様子を見てみようか。襲撃の情報とかも聞けたら尚いいよね。

 そーっと音を立てないようにしてアジトのドアに近づいた。
 何も聞こえないね。ドアに耳を当てようとしたら勝手にドアが開いた。

 あっ! 衛星! なに勝手に開けてんだよ! 心臓がちょっと飛び出たぞ!

 すぐ様中を確認するが、誰もいなかった。

 ここは根性を決めて、中に入る事にした。入る前に「絶対に守ってね」って衛星には念を押しておいた。

 中に入ると、すぐに馬がたくさん繋がれている部屋があった。意外と中は広いんだね。
 十頭以上いる馬の部屋を過ぎると、今度は明かりが漏れている部屋があった。話し声も聞こえる。まだ奥に通路は続いているが、明かりは点いていないから、ここに盗賊達がいるんだろうな。
 心臓のドキドキ音が大きくてここからじゃ聞き取れない。もう少し近寄るしかないか。

 入り口の横に立つと話し声が聞こえてくる。どうやら誰かが怒鳴られているようだ。

「それで? お前ぇらの言い分は聞かせてもらったが、それが上納金を収められねぇ言い訳にはならねぇな。今月の分はどうする気なんだ! これじゃちと足りないんじゃねぇか?」
「いや、だから、あたい達もよく分からなねぇうちにこんな事になっちまって。昨日と今日で出来るはずだったんだ。あと三日ほど待ってほしいんだ」ズズー
 あれ? 聞いた事があるような声だな。

「ほぉ~、あと三日で金貨二枚を作って来れるんだな?」
「い、いやちょっと待ってくださいよ。あと足りねぇ分は金貨一枚じゃないですか」ズズー
「嫌なら今ここでキチン耳を揃えて出すこった。それが出来ねぇってんなら、金貨二枚だ」
「そんな殺生な~。三日で金貨二枚なんて。あたいも子分達も怪我して三日で金貨一枚でも厳しいってのに、金貨二枚は勘弁してください」
「そんなのは知ったこっちゃねぇ。お前ぇらがドジ踏むのがいけねぇんだ。こっちは金さえ貰えばいいんだよ」
「そこを何とかお願いできやせんか。お願いします!」ズズー
「なめんじゃねぇ! この『常闇盗賊団』略して『トコトコ団』はそんなに甘くねぇんだよ! なめんじゃねぇ!」

 ブッ!

「誰だ!」

 つい吹いちゃった。なにその厨二な名前! トコトコ団って……プッ、面白いけど略せてもいないし盗賊団にしたら可愛い過ぎるだろ!
 なぜ略した。つい笑っちゃったじゃないか。

 でも、ピンチだ! 強烈な罠だったな。ここは衛星さん達、お願いしますよ!

「衛星達、ここの盗賊達を全員眠らせちゃってください!」

『Sir, yes, sir』

 ドタ ボテ ドン ドタ パタン……

 人が倒れる音がいくつもした。

 そーっと部屋を覗いてみると、三十人ぐらいの盗賊達が倒れていた。全員眠ったようだ。

 さすが衛星達、いい仕事するね。初めからこうすればよかったんだな。
 衛星に頼んで、盗賊達を縄でグルグル巻きにしてもらった。もちろん口まで。
 この世界は魔法があるからね、詠唱されないように口まで拘束するのが正解だね。

 あっ! やっぱりツインテールの案内のお姉さんだ。この#娘__こ__#も盗賊だったんだ。なんで盗賊なんてやってたんだろ。頭と首の包帯が痛々しいけど、怪我もしてたんだ。昨日はこんな怪我なんかしてなかったのにな、どうしたんだろ。

 たしか盗賊って捕まると死罪か奴隷って話だけど、こんな#娘__こ__#を奴隷になんかさせたくないな。いや、ただの見た目でこんなこと言ってる訳じゃ無いよ。そりゃ可愛いけどさぁ。こんなおっさん達ならもう改心しないだろうけど、こんな#娘__こ__#が奴隷なんて可哀相じゃない。

 ……すみません、下心アリアリでした。


 さて、この状況なら依頼達成でいいんだろうけど、どうせならこの盗賊達も連れて行きたいよね。そうすりゃ一気にツーランクぐらいランクアップするんじゃない? 
 これはなんとかしたいね、もちろん衛星頼みだね。

「衛星達、こいつらを乗せる荷馬車を作ってよ。馬はたくさんいたみたいだから二頭立てで五台作って。作ったらこいつら全員を乗せてね。あ、このお姉さんだけは丁寧に扱ってあげてね」

『Sir, yes, sir』

 衛星達は四つだけ残り、後は外に飛んで行き作業に取り掛かった。

 うん、荷馬車を作るのに十分も掛からなかったよ。少し盗賊団のアジトを物色してたら全部の衛星が帰って来たもん。
 帰って来た衛星達はぐるぐる巻きにされている盗賊を浮かせて運んで行く。
 ホントにチートな奴らだよ。その力で助かってんだけど、その力で邪魔されてるって事でもあるんだよな。

 盗賊のアジトにはお金や宝石や武具や生地など、色んな宝物がたくさんあった。
 これはこれで俺が頂いておこう。それぐらいはいいよね。

 一時間程アジトの中を物色して、面白いものも見つけた。

 地図だ。

 何枚か束ねてあって、やっぱり紙じゃ無く動物か魔物の皮みたいな物や樹皮を薄くして乾燥させたようなものが二十枚ほどあった。
 その中に一枚だけ紙の地図もあった。
 これは町に戻ってからゆっくり見る事にしよう。

 まだ夜中だから外は真っ暗だったけど、馬を連れに戻り、盗賊団のアジトまで戻って来ると、盗賊の馬をそれぞれの荷馬車に付けて、余った馬は荷馬車に縄で繋いでおく。こんな所で放たれても魔物にやられちゃうかもしれないし、町まで連れて行ってあげる事にするよ。


 こんな所で寝たくは無かったので、準備ができるとすぐに出発した。

 先頭は馬に乗った俺。
 続いて二頭立ての荷馬車が五台。その荷馬車に積まれた盗賊達。最後尾の荷馬車の後ろには繋がれた空馬たちが三頭。

 御者? そんなものはいらないよ。一応、見た目は全部の馬車の後から縄を付けて、次の馬に繋いでるけど、衛星がいるもんね。
 操縦するというより、俺の指示を馬に伝えてそれを馬達が素直に従ってるって感じ。

 途中、休憩を入れながら、昼前に町に戻る事ができた。

しおり