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銀色


 それが予感だったのか。
 それとも、偶然だったのかは知らない。
 だた、そうしなければならないような気がしていた。

 寒い日が続く冬のある日。
 その日は晴れていて暖かかった。
 ちょっと外に出る気になった。
 日差しは暖かく降り注いではいるが、風はやはりまだ寒い。
 コートとマフラーをして外に出る。
 街角で見つけた雑貨屋さん。
 何気なく入ってみる気になった。
 カランカラン・・・
 中にはいろんなものがある。
 ランプに人形、アクセサリーに文房具。
 その中で、私の目に留まった物があった。
 銀色に輝くナイフ。
 あまり飾りのないシンプルな物だ。
 「気に入りましたか?」
 急に声をかけられた。
 ふと、目を上げる。
 どうやら、ここの店主らしい。
 エプロン姿で、優しげな瞳をしている。
 髪は少しウェーブのかかっていて後ろで一つにまとめている。
 男か女か分からない中性的な雰囲気だ。
 私が何も言わないでいると店主はこう続けた
 「これを持った人は皆、不思議な体験をしてるんですよ」
  私はそのナイフに惹かれていた。
 そのシンプルな銀の輝きもよかったが何よりも惹かれたのは、
 不思議な体験をするという店主の言葉だった。
 「あの、これいくらですか?」
 少し高かったが結局買ってしまった・・・
 ちょっと高い買い物だったかな。
 でも・・・
 これで、きっと――
 
 その日からしばらく晴れた日が続いた。
 雪は解けて地面が見え出していた。
 でも、またそれを覆い隠そうとする様に雪は降り出してきた。
 私は、雪の中をさまよい歩いていた。
 ちょっとしたことで母と言い合ってしまった。
 そのまま家を飛び出してきたのだ。
 なぜか手にはあのナイフが握られている。
 何だか、もうどうでもいいかも・・・
 ちょうど雪の中だし・・・
 いつも思っていた。
 死ぬのなら雪の中。
 手首を切るのがいい。
 枕になりそうな木もあるし
 うん。
 いいかもしれない。
 こいうのを運がいいとはいわないのかも知れないが、
 私はそう思ってしまったのだ。
 木の根っこに腰掛ける。
 幹に体を持たれかけ、一気に手首を切った。
 白い雪に紅い血はとてもキレイだった。
 思った通り。
 そう、
 と・・て・・・も・・・・・。

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