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11話 焚き木の淡い光


 麻衣は、ツインテールの髪留めを外してヘアブラシで手入れをしている。

「麻衣は髪留めを外し乱れた髪を梳いている。
 無造作に膨れ上がった髪は、梳くと同時に体積が小さくなり、
 綺麗揃った栗色の髪は、焚き木の淡い光を綺麗に反射していた」

 と麻衣は突然語り始めた、瑠偉と美憂をちらりと見るが麻衣の言葉に特に反応する様子もなく、そのまま静寂な時間が流れた。
 これは前にあったナレーションと言うやつか、瑠偉と美憂の反応から見て触れない方がいいようだな、別の話題を切り出そう。

「麻衣、髪留めを外した状態のが可愛いのになぜわざわざツインテールにしてるんだ?」
「男受けがいいからですよぉ惚れちゃった? あいにく先約があるから駄目ですよ」

「その性格で彼氏がいたのか、驚きだな」
「犬耳のイケメンさんですよー、すっごい忠実で優しいのよ、えへへへへぇ・・」

 麻衣はそう言うと若干上に向きなり目を閉じ、口から何やら可笑しな声を発していた、瑠偉と美憂を見るが特に気にしないと言った態度だ。

 なるほど、そっとしておけと言う事か、そして最後に目の合った美憂が俺に話しかけてきた。

「織田さん、麻衣みたいのが好みなの?」
「まぁ、見た目だけは、見た目だけだぞ?」

 そうだ、その見た目だその強烈に膨らんだ胸が最高だ、とは口が裂けても言えないが顔もかなりの好みなのは事実だ。

「ふ~ん、まぁ麻衣は見た目だけは、可愛いからな」
「で、その麻衣の状態はどうなっている?」

「今、別の世界に旅立ったから暫らく帰ってこないぞ?」
「そ、そうか・・・」

 なるほど自分の世界に入ったというやつか、今は空想の中で犬耳のイケメンとイチャイチャしてるわけだな。

「美憂は髪梳かないのか、ボサボサだぞ?」
「髪質硬いからお湯じゃないと真っすぐにならないんだ、まあ男子の目線なんで気にしてないから朝はいつもこんな感じ、それで織田さん悪かった疑って、もう信じてるから機嫌直してくれ」

 男性ホルモン多めの体育会系少女か、髪質が固いのは俺と同じだなあれは朝苦労する、そしてあの件はもう気にしてない、そんなに心の狭い人間じゃないからな。

「いいぜ別に怒ってないし、昨日の俺もちょっとやり過ぎたしな」
「そうだな、あのまま死ぬかと思ったよ、今度は気絶しないように鍛えておくよ」
「ま、まぁ頑張ってくれ・・・」

 どうやって鍛えるかは謎だが時間がたってから克服したか試してみよう。

「兼次、そろそろ本題に入りましょうか」
「そうだな」

 美憂との話の終わりかけに瑠偉がここしかないというタイミングで話題を変えてきた。

「それで、麻衣はあのままでいいのか?」
「大丈夫です何時もの事ですから、しばらく放置で構いません」

 放置なのか・・・結構大事な話をするんだけど起こしてやった方がいいと思う、性格は若干変な方向に傾いているが、その何気ない一言が結構ヒントになる時もある。

「冷たいな瑠偉、せめてナレーションに突っ込み入れてやれよ」
「さあ兼次、早く帰還の案を」

 俺の話も華麗に流したな、よっぽど帰りたいんだな。
 まぁ、当然か・・・こんな何もない場所で死ぬわけにはいかないからな。
 これをネタに肉体関係を迫るってのもありだが、状況が状況だしな。
 今後共にかなり長い付き合いになりそうと思う、ここは極々自然に関係に持ち込むのがベストな選択だろう、理想は言えば惚れさせてしまうのがいい。

「最初に断っておくが、地球に帰れない可能性は残ってるからな? あくまで、現状の打開案だ。その前に何かいい案があるか美憂と麻衣の意見を聞いておこう」

 そう言って美憂の方向を向き問いかける「美憂、何かあるか?」

「え? そうだな・・・気合?」

 突然振られて困惑するのは解るが、絞り出した答えが気合って、気合では何ともならないだろう、もっと現実を見てほしいな。

「はい、はーい!」

 いつの間にか復帰した麻衣が右手を上げ強く何かを言いたげな表情で俺を見ている、今までの発言からとてもいい案があるとは思えないが、一応聞いておこう無視するのも悪いし今後の関係にも影響するからな。

「じゃあ麻衣、聞いてやろう言うがいい」
「異世界にテレポートよ! そこで犬耳のイケメン様と魔王討伐に行って英雄になるのよ! うはぁぁっぁ・・・エクスカリバーをふふふふ」

 若干期待したがくだらない案だったな、まず異世界は存在しなし魔法もない、言葉を発すれば現象が起きるとか漫画の世界だけにしてほしい。
 そのまま麻衣を見ていたが先ほどと同様に自分の世界に入っていったようだった。

「すまない、なにも思い浮かばなかった」
「いいよ美憂、一応全員の意見を聞いていた方が後々トラブルも少ないしな」

「予想の範囲内ですね、さあ兼次、貴方の番ですよ」

 瑠偉の言う通り無駄な時間だったな、意見を求めた俺が馬鹿らしくなってきた。

「すこし、長くなるんで口を挟まず聞いてくれ」

 膝に肘を置き指を組む、アゴを近くに寄せ俺は話し始めた。

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