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12話 三つの星


 立ち上がる煙は自らの火の光で照らされ、真っすぐに上空に伸びている。周りには静寂に包まれていた。自分の世界に入っていた麻衣は、いつの間にか手を太ももに乗せてこちらを見ている。

「麻衣が戻ってきたようだし始めようか、今後の選択肢は3択だ『この惑星で、寿命を迎えるまで暮らす』『自決する』『文明のある星に保護を求めて移動する』の三択だ、ただし最後の候補は利点と欠点がある、さらにそこから二つのルートに分かれる」

 座り続け固まった筋肉をほぐす為立ち上がり、焚き木を囲って座っている三人の後方を歩きながら再び話し始める。

「まず利点は移動先が友好的な種族の場合だ、この惑星で暮らすよりまともな生活ができるという点だ、さらに地球より進んだ科学を持っていて、かつ地球の場所と移動方法を知っているかもしれない点。欠点はテレポートをするときに地球の時間が進んでしまう事と、移動先の種族が敵対的な行動をとってくる可能性がある点だ」

 話しながら3人の周りを回り、3ほど回り元居た場所に再び座る。

「三つ目の最大の問題は、行ってみないと分らないという点だ。ただ、ある程度は俺の力で見ているから、推測することはできる。しかし種族の考え方まではわからないから、いきなり捕まって人体実験される可能性もある。以上だ」

 話し終えると木が燃える音しか聞こえない、目を閉じると誰もいないように感じる、この静かな間がとても長く感じた。
 最初に瑠偉が話し始める。

「保護を求める一択です。こんな何もない場所では暮らせません」
「そうだね瑠偉ちゃん、ここスライム居ないし。移動しよう」

 麻衣は瑠偉の意見に賛成のようだ、美憂は黙って何も言わなかったので美憂の顔を見ながら返答を待った、美憂は顔を俺に向けた。

「私は、皆の意見に合わせるよ」と言うと、瑠偉と麻衣の顔を確認するように見て、焚き木を見つめ始めた。

 ここまでは予想範囲内の返答だ、後の問題は何処に行くかだ。

「では移動先を決めよう候補は三つある。個々に利点と欠点があるので、即時の回答は求めないじっくり考えるといい。一つ目の惑星、ここの利点はまずこの惑星から一番近い12光年の距離だ。この距離はこの惑星に移動した距離と同じなので確実に移動できるという保証がある。そして、住民はほぼ地球人にそっくりだが腕が4本ある。欠点は、各地で戦争をしている点だな、文明は地球とほぼ変わらないし住んでる住民以外は地球と同じと思ってもらえればいい」


 美憂が近くにあった小枝を拾い、先端で焚き木の中にある木を突き始めた。
 麻衣と瑠偉は変わらず俺を見ている。

「二つ目は少し遠く17光年先だ。翼の無い飛行機が飛んでいたので、地球よりは科学は進んではいそうだが圧倒的に進んでいるとは言いがたい。戦争もなく情勢は安定しているはずだ。問題は住民の見た目だな、気分が悪くなるといけないので詳細は説明しないが大雑把に言うと爬虫類だ」

 瑠偉は爬虫類が苦手なのか、眉間にしわを寄せてこちらを見ている。
 これで最後だな、一応全員聞いてはいるようだ。

「三つ目だ、ここの最大の利点は圧倒的な科学力だろう。都市自体が空中に浮かんでいる。しかも、かなり巨大うえ住んでる住人も地球人とほぼ変わらない。欠点は遠いことだな、34光年離れているのでテレポートは失敗する可能性がある、成功しても今までの経過年数の12年に34年が加わる、つまり46年経過するわけだ、君たちの両親は90歳前後だろう寿命を迎えている可能性がある。つまり、地球に戻れた場合、両親が天寿を全うしている可能性がある。」

 長々な説明を終え立ち上がり3人を見渡す。

「以上だ、考える時間は夜明けまでとしよう。俺はこの遠見でかなり消耗したので少しでも寝て回復に専念するよ」

 そう言いながら、俺は両手を上げて背伸びをした。

「最後に言い忘れたが地球に戻れた場合、確実に社会情勢が激変しているからな。最悪な場合は核戦争で滅んでいるかもな・・・すまんが今思い出したよ」

 俺はそう言ってテレポートで飛行機に移動した。

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