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「えーん」
僕は、また泣いている。
小さな小さな孤児院。
全部で、30人くらいの子供達が、そこで暮らしていた。
僕は、その場所が怖かった。
お父さんもお母さんもそこにはいない。
そして、お姉ちゃんもいない。
だけど、その場所に入った時から、知らない人がお姉ちゃんになり知らない人がお兄ちゃんになった。
知らない人が妹になり……
知らない人が弟になった。
それが、怖かった。
だから、毎日毎日泣いていた。
本当のお姉ちゃんと『泣かない』って約束したのに毎日泣いていた。
その度に、瞳が俺に話しかけてきた。
「泣かないで……」
瞳は、優しく俺の頭を撫でた。