50
その日。
私は、武くんにレイプされた。
悪夢のような時間は、長時間にわたり続いた。
私は泣いた。
悔しくて悔しくて泣いた。
乱暴された……
こんなの誰にも言えない。
誰にも言えないよ……
私は、泣いた。
いっぱい泣いた。
涙が枯れるまで涙を流した。
何処をどうやって帰ったのかは、わからない。
昼過ぎだったと思う。
私は、家に着いた。
「ただいまー」
理香が、嬉しそうに私に飛びついてくれる。
ダメだ、この子の前でこんな顔見せれない。
私は、必死に笑顔を作った。
「遅かったな。
昨日、理香のヤツ泣いてたんだぞ?
『ママが居ない』って……」
「ごめん、終電に乗り遅れて友達とカラオケで、オールしちゃった……」
初めて嘘をついた。
初めて英雄さんに嘘をついた。
「そんなことだろうと思った」
英雄さんは、疑いもせずに笑った。