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痛い痛い痛い痛いよ……
ママは、何度も私の頬を叩いた。
「謝りなさい!
理香!武君に謝りなさい!」
私は、涙を堪えながら武さんに謝った。
「ごめんなさい……」
私は、悪くないのに謝った。
謝らなければつらい思いをする。
だったのなら謝った方がいい。
「ふん……」
武さんは、鼻で返事をした。
そして、テレビをつけてケラケラと笑う。
「理香。
武君は、もう家族なのよ?
パパと同じなのよ?
だから、武君の言う事はきちんと聞くのよ?」
「……」
「理香!
返事をしなさい!」
「はい……」
私は、涙を堪えながら返事をした。
武さんは、パパじゃないよ?
パパは、パパだけだよ?
私は、ゆっくりと自分の部屋に戻った。
誰もいない部屋。
寂しいけど仕方がない。
部屋の鍵を閉めて、私は泣いた。
静かに泣いた。
1人で泣いた。
悔しかった。
つらかった。
切なかった。
でも、どうする事も出来ない。
くるしいよ……
つらいよ……