28
「はははははははは!
愚かなものよ!我らが兄弟に素直に捕まればいいものを!」
チビマッチョが笑いながら剣に魔力を込める。
そして、放つ剣圧。
しかし、ボクのシールドはビクともしない。
「なにをやっている兄弟。
効いてないではないか」
デカマッチョが息を吸い込み魔力を込める。
そして火を吐きつける。
「熱い……でも!」
ボクは、炎の流れに身を任せシールドごとそのまま流され三兄弟から間合いを開けた。
「逃げる気か?」
細マッチョが素早い動きでボクとの間合いを詰めてナイフを投げる。
しかし、ナイフはボクのシールドに当たることなく弾き飛ばされる。
虎マスクの男が、刀でそれを弾いたのだ。
「さて、時間をあげよう」
虎マスクが刀の刃を三兄弟に向ける。
「なんだ?変態がいるぞ?」
チビマッチョが、剣を構える。
「君たちに変態呼ばわりされる筋合いはないね」
虎マスクの男が小さくいうと刀を鞘に収めた。
「刃を収めたぞ、降参のつもりか??
ははははは!でも許さんぞ」
チビマッチョが素早く剣で虎マスクに斬りかかる。
「遅いよ」
虎マスクは、その剣を余裕で避ける。
「なんだ?まぐれか……?」
チビマッチョは、そのまま剣を横に薙ぎ払い自分の身体を軸にして剣を回転させる。
「……軟弱だな兄弟よ」
デカマッチョが虎マスクの顔に拳をぶつけようとしたとき何かに弾かれるかのように身体を後退させた。
「なんだ?お前……
攻撃魔法も使えるのか?」
細マッチョが、ボクの方を睨む。
ボクはすぐにシールドを貼り直す。
そう、先程デカマッチョにぶつけたものは、ボクのシールドだったのだ。
「常時シールドってか?
どこまでもビビりなんだな」
チビマッチョが標的をボクに変えようとしたとき空が眩しく光る。
「ち……運のいいヤツめ」
細マッチョがそういってデカマッチョの肩に乗る。
「今度あったときは死を覚悟するんだな」
チビマッチョも同じようにデカマッチョの肩に乗るとデカマッチョの背中に翼を生やすとそのまま飛び去った。
「うん、見事な翼だな」
虎マスクの男が小さくうなずく。
「あの……
ありがとうございます」
ボクが小さくお礼を言った。
「いや、気にしなくていい。
君がボクくんだね?」
「あ、はい」
虎マスクの男がマスクを外すと眩しいくらいイケメンの男の顔が現れた。
「はじめましてこんにちは。
僕の名前は、星野 新一。
ですますスイッチのリュートを担当している勇者だよ」
「勇者……?」
勇者。
それは何万人にひとりの確率で産まれる多才で優秀な存在のことで、魔王や神を倒した存在に与えられる称号である。
「そう勇者さ」
新一が、小さく笑う。
「はじめてみました」
「そうだろうね。
でも、君はこれから先、沢山の勇者を見ることになるだろう」
新一がそういうとボクは首を傾げる。
そして思ってしまった。
「もしかして僕を殺しに……?」
「それについては意見が別れていてね。
君を生かすか殺すか……」
ボクはシールドの濃度を濃くした。
「あ、でも警戒しないでくれよ?
僕は君を殺すことには反対なんだ」
「信用できない」
僕は、さらにシールドを濃くした。
「まぁまぁ落ち着いてくれ。
そんなに魔力を高めると――」
新一がそこまで言ったとき。
沢山の魔物が集まってくる。
「魔力の高い人間がいるぞ。
美味しそうな美味しそうな人間が……」
魔物がそういって笑う。
「ほらね?君が魔力を高めるとこうなる。
魔力を消す能力を身に着けないとね……」
新一がそういって刀を構える。
ボクは恐ろしくなった。
ボクにはその刃はさほど大きくは見えない。
しかし、その刃からほとばしる恐ろしく禍々しい狂気を感じたのだ。
「な、なんだろう。
これ、手が震える……」
ボクの身体が震える。
怖い、恐ろしい。
「あ、そっか。
君は咎人だったね」
新一は、そういって剣を素振りした。
するとボクの後ろにいた魔物たちが真っ二つになった。
「え?」
ボクは後ろを見て驚く。
「僕の刀は、罪獏刀(ざいばくとう)といってね。
狙った敵の罪の分だけダメージを与えるんだ。
魔物は罪の塊だからね、綺麗にまっぷたつさ」
「くそ……
恐れるなあの男から食ってやろうぜ!」
魔物のリーダーがそういうと新一に襲いかかる。
「君たちではこの僕には勝てないさ」
新一はそういうと次々と魔物たちを倒していく
「な、なんだコイツは……」
最後の一匹になった魔物のリーダーが一歩下がる。
「僕かい?僕の名前は星野新一。
しがない勇者さ……」
新一が小さく笑う。
「ゆ、勇者……?」
魔物が逃げようとする。
しかし、新一は逃さない。
「助けてくれ……」
魔物がそういうも新一はため息をはく。
「安心してください。
君はもう斬られてます」
「あ……」
新一が刀を鞘に収めると魔物のリーダーが縦ふたつに切られ絶命した。