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第1話ー想像ー

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嗚呼、暇だ。暇すぎる。
英語表現の授業が無くなるのはこれが何回目だろうか。
いきなり自習と言われても、今日こそ授業があるだろと高を括って、なにも持って来て居ない私には暇な時間としか言いようがない。
しかしまあ、この暇な時間に授業料を払っていると思うと癪である。
なのでスズメの涙程ではあるが贅沢をさせてもらおうではないか。
セーターを着ながら冷房の風に当たるという贅沢を。
これには何の意味もない。
ただ私がやってみたいだけである。
いや、光熱費を学校が払ってくれるのだから、多少のリターンはあったわけだ。
これで私のやりたい事は終わった。心が少しは満たされた。
もうやる事が思いつかない。窓でも開けるか。
窓を開けても、空はどんよりと曇っている。
晴れてくれれば、『長閑な天気だ。』や『世界の恐怖から切り離されたようだ。』と書けた物を。
風すら吹いて居ないとは、つくずく嫌になる。
心地よい風ならば、ここではない爽やかな何処かを想像する。
しかし無風である。全くやる事が思いつかない。

どんよりとした曇り空の下無風。
この条件だと物悲しい雰囲気を私は感じ取った。
そうだな、背広を着た中年のおじさんが首にされてトボトボと歩く感じだろうか。
それだと絶望だな。空模様は雨になてしまう。
曇り空……この一面を覆う雲の間から暖かい光が差す。というのはどうだろう。
ありきたり過ぎてつまらないな。
天候の話ではもう間が持ちそうに無い。
次の話だ。

私は学生である。
高校生という事にでもしておこう。
別段変わった事も無い頭の可笑しい学校に入ってしまった人間である。
いや、隣の芝生は青く見える理論で他の学校が良く見えているだけかも知れない。
なので、この学校は普通の学校である。
私の事についても書いておこう。
私は普通の人間である。
周りの人間からはmadやcrazyと言われているが意味不明だ。
それと、アイデアが浮かべば文章を書いている。
蜘蛛の巣にその文章をあげる勇気は無いが……
そんな人間である。

授業は45分授業である。
もう、30分使った。まだ30分とも言えるが。
あぁ、暇だ。暇すぎる。
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ノートに書き取った、『暇だーーーーー!!!』文を眺め、次は何を書こうか考える。

もう書く事が無いな。

教室に何かネタは無いかと辺りを見回した。
クラスで真面目に自習している人は5人ほど。定期テストでのランキング上位の人々だ。
他の連中は勝手に席移動をしていて、よくつるんでいる集団でゲームの話やら、誰が可愛いかやら、雑誌の話をしていて無法地帯の様相だ。
監督の先生も一切注意せずに、自分のPCをいじっている。
監督の職務を果たしているのか?この人。教室から勝手に抜け出す人は居ないけどさ。

自習道具を持ってくればよかった。それだけを悔やむ。
いやぁ、だって流石に10回連続って事はありえないでしょう。授業料返せよ。
普通代講とかね、誰かがやるでしょ。本当にこの学校は頭がおかしい。

あーー。暇だ。本当に暇だ。近くのビルに隕石でも落下しないかな。
そうすると、大きさにもよるけど人類滅亡とかするか。ならできないな。
消滅はどうだろうか。
パッて消えるの。中にいる人はどこかに飛ばされ、そこで生活するとか。
いきなり消えるのは仕方ない。天災だ。運が無かった。

あ、鐘が鳴った。終わりだ。終了。この無意味な時間からの解放だ。





——僕はこの時は想像しなかった。自分の想像が現実(リアル)に起こるなんて事を。
自分の身に降りかかるという事を。

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