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第十六話_座学2

「さて、まずは基礎中の基礎からですね」
そう言って、スミルはホワイトボードに書いていく。

「まず、魔法がどのようにして発動するか、それはこの世界の様々な要因が関わってきます。魔導士の言葉の紡ぎ方、呼吸、自律神経等々を安定させることから魔法を発動することができます」
「はい、質問。俺さ、学校で一回魔法使ったよな?そういうのってしっかりとそういう事を学んでからやらないと危ないんじゃないか?」
「ええ、確かに危ないです。ですが、それはあくまで上級以上の魔法を使う場合です。ミヤビ様が、使用した、ファイヤーストームは初級魔法に分類されるもので誰でも使うことができるのです」

「え、それってあの魔法を誰でも撃てるってこと?ちょっと危険じゃない?」
「あれは、ミヤビ様が規格外なだけです。普通はちょっと焦げる程度なんですよ。ファイヤーストームって」
「…でもさ、ストームって日本語に直すと『嵐』だぞ?なんで『ボール』じゃないんだ?」
「それはですね、歴史上の人物に関係してきます。まず、魔法の発見をした人の名前がストートム・レイヤーという人物なのですが、この人が『自分の名前を魔法に入れたい』という考えからストートムからストームを入れたそうなんです。ですから、あまり名称に関しては気にする必要はないかと思います」

「ちょっと話がずれてるけど続けるね、えっと、この世界に英語っていう概念あるの?」
「はい、存在しています。確か、ゴントラン王国が確かそうでしたね」
「(なるほどな、ここは異世界って言っても並行世界だから日本語があったら英語もあるわけだ)」
「ありがとな。じゃ、話を戻して続けてくれ」

「はい。では、魔法の発動についてですが、これは魔導士側だけが注意して今まで言ってきた自律神経等々を整えるだけじゃダメなんです。これは、自身のMPや、精霊の好みが挙げられます。これは先天的要因なので仕方ありません。精霊の好みとは、いわば、動物に好かれるかどうかという事です」
「じゃあ、俺は好かれてるってことでいいのか…?」
「えー、…どうでしょうか?とりあえず初級魔法であれほどの威力が出せるのですから普通に好かれてると思います。まぁ、魔力量が測定不能なので一概には言えませんが」
「ふーん…」

「次に階級について説明します。下から初級、中級、上級、最上級の4種類です。大体の人は中級と上級を少しかじった程度までしか行けません。最上級の魔導士というとこのワイドワールドには5人います。また、この基準は武道の方にも適応され、こちらは最上級の上に師範があります。こちらの最上級はワイドワールドには60人ほど、師範は3人しかいません」

「それってさ、ゾルキア先生ってその60人に入ってる?」
「はい、ゾルキア先生は武道最上級、魔法を中級までマスターしてます。大会でも毎回優秀な成績を残しているんですよ」
「あの人で最上級か、師範となると手も足も出ないんだろうな…」
「でも、ミヤビ様もその年齢でとてもお強いですけどね…」
「…あ、ありがとう」
あまり褒められるのに耐性が付いていない雅だった。

「では、続けましょうか!」
こうして、雅は魔法について様々な知識を取り入れていく。
そして気づく。
「(全然退屈しない…楽しすぎだろ)」
そう、日本で学んでいた学業は雅にとってとても苦で退屈なものでしかなかった。だが、この世界では基本的な数学、文学、歴史しか勉強しないのでとても簡単で、魔法の勉強に力を入れているため、必然的に魔法の授業が多くなるのである。
雅は、魔法を学ぶことがとても楽しかった。

一方、そのころのフィレイというと。
「(私も負けてられないわ。しっかりと力をつけなきゃ)」
と、一心不乱に魔法の勉強をしていた。


ーーーフィレイのお屋敷の庭ーーー

雅は、先ほどスミルから興味深い話を聞いた。

「魔法は基本的に教科書に載っている魔法を使うのがベースですが、自分でオリジナルの魔法を創ることができます」
「詳しく教えてくれ!」
「は、はい。ちょっと、…近い…です」
雅とスミルの顔の距離は実に10㎝を切っていて鼻先が触れそうくらい近かった。
「あっ、ご、ごめん」
「大丈夫です。では、続けますね。オリジナルの魔法を創るにはまず、理科学的な知識が必要となってきます。まず、この物を動かす魔法ですが、これは物とそれを置いている地面との摩擦力より、魔力操作の方が上回ったため、動く。などというように少し頭を使わないといけません。しかし、理科学的要素を使わなくても魔法が使えるものがあります。それが、自身の魔法を使ってイメージするやり方や、手順通りに言葉を紡いでいくものです。しかし、前者は魔力をかなり消費します。後者はあまり威力がでません。まぁ、教科書に載っているほとんどの魔法がその2つなのですが」
「え、そうなの?科学技術も発展してるんじゃないの?だったら火がなんで燃えるのかとか研究で分からないのか?」
「科学技術が発展していると言ってもまだまだ全然です。後からやってきた魔法の存在でほとんどの人が研究の意欲を魔法に回してしまいましたからね。今から理化学的研究なんてめんどくさいと思っているのかと思います。これらの魔法で十分戦ったりできますからね」
「ふーん。なぁ、スミル、もう座学はいいからさ、ちょっと庭に出ないか。試したいことがあるんだ」

このような会話だったのだ。
そして、この世界の人は火が燃える理由を知らないと雅が尋ねるとスミルは答えた。
「これは、やってみるしかないな」
今まで学んできた苦手な理科の要素。その知識を絞り出す。

「おっ」
火が燃えるのは有機物、あと酸素があれば燃える。これは中学の時に習ったことだ。

とりあえず、酸素は容易できる。しかし、有機物となると身近にある草でもよかったのだが、すぐに火が消えてしまうので、雅は、スミルに持ってきてもらった木で実験することにした。
そうしたら…

「青白い炎…?」
実験は成功し、酸素の量を風魔法で調節すれば、温度の高い炎を作ることができた。
「よし、成功だな。しっかし、苦手属性とか言ってたくせに意外と扱えるもんなんだな」
「そういえば、雅さんちゃっかり魔法使えてますね。なんでさっきできなかったんでしょうか」
「さぁ?俺にもよくわからん。でも、俺にはこのやり方が一番合ってるかもしれないな」

「このやり方って自分でオリジナルの魔法を作っていくんですか?」
「ああ、まぁ、ほとんどじいちゃんのまねごとになると思うけどな」
「…黄泉様はこのような魔法は使っておりませんでした」
「そういえばあの人おじいちゃんなんだよな、理科そのものを忘れてそう」
「でも、とても元気でしたよ。魔法研究のやり込み具合の右に出るものはいなかったですからね」
「そんなに魔法好きだったのかあの人。…よし!じゃあ、頑張って色々試してみますか!!」

こうして、雅の魔法研究が始まったのだった。

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