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第二話、ああ、それじいちゃんだわ。

―――首都セルビア―――第三区画―――魔法高校―――

「(さて…どうしたものか。
このまま教師の上にふんぞり返って座るのもそれはとても気持ちの良いものなのだが、そろそろ俺が完全に悪になってしまいそうで怖い)」

「あの…ここってどこですか?」
尋ねてみた。
何やら生徒たちがヒソヒソと話している。
これでは全く話が進まない、そう思っていた時に
「君は本当にクローズワールドの人間ではないんだね?」
一人の男が現れた。
「気になってたんだが、クローズワールドって何だ?」
彼はしばらく雅を見た後、
「彼は嘘をついていない。安心していい」
そしてその声を聞いた人達が
「よかったぁ、でもいったい何なの?」
「俺今日で死ぬのかと思ったぜ、クヴェリオン先生も焦りすぎだよなー」
「……なんで天井から来たのかな?」
と、皆が安心したのか一斉に喋り出す。
「(そういや、なんで俺は無傷だったんだ?あの高さだと絶対5000mは上にいたけど)」
「でも…」

彼が口を開いた。
「そうなるとどうしてここに落ちてきただよね、最大の疑問は。僕が考えるに…」
彼が推理しようとしていると突然扉が勢いよく開けられた。
「皆さん!!すみません!召喚に失敗しまして…座標はしっかり入力でできていたのですが、
高さを指定するのを忘れてしまい…」
「…ああ、なるほどだいたい想像がつくね」
何やら自分の知らないところでどんどん話が進んでいるのに妙な焦りを覚えた雅は質問してみることにした。
「なぁ、結局ここはどこなんだ?」
「ここかい?ふふっ、そうだね、これから君にはしばらくお世話になるよ。ワイドワールドへようこそ!!!」
「え、えぇ…」
「(なんか歓迎されちゃったよ…どうすればいいの?俺の質問の答えになってないんだけど…)」
暗闇になった時よりも困惑している雅は何を言ったらいいかわからなくなっていた。
「おっと、自己紹介がまだだったね、僕の名前はシュベルツ・カウェイス」
「いやあの急に自己紹介されてもいまいちこの現状を理解できていないんだが」

「(というかさっぱりだな!!)」
「ここは日本のどこだ?お前は外国人なのか?Can you speak English?」
「二ホン…?…ああそういう事、君はその二ホンという故郷には戻れないんだよ」
…………………………………………………………………………………………………………
「はい?」
実に長い間雅は止まっていた。…ように感じた。
「だから君は元の世界へは帰れない。ここでクローズワールドの再占領を目指して頑張ってもらうんだよ」
「(……え、何?帰れない?クローズワールド?占領?)」
疑問がやがてイライラへと発展していく。どうしてこいつはこんなに説明が下手なのか。
「それでね、この地図なんだけど」
「…ああ!!!!もううるせえ!!」
イライラが頭痛へと変化していく頃に、雅はこの会場を飛び出していった。
「……ああ!!ちょっとまってくれ!!君はぶどう……」
ぶどうがおいしいだかなんだか言って呼び止められたがそれが逆に雅を走らせた。


―――首都セルビア―――第3区画―――見晴らしの広場―――


「ここまで来れば大丈夫か」
雅は扉を開けて飛び出した後、北へと向かっていた。
丁度建物の近くに海があったのでその逆をいけば北に行けると彼は思った。
何故北向かったのかというと、
上から景色を眺めて落ち着きたい事が一つ、
この場所が本当に日本とはかけ離れた世界なのか、それをしっかりと理解したかったのが一つ。
むしろ今日はそれだけ分かればいいと思っている。
まずは気持ちを落ち着かせたかった。


坂道を上ってある広場にやってきた雅は柵に手を乗っけて景色を眺めた。
「…なんだよ、これ…」
雅が目にした光景はまさに美しいの一言だった。
大きさが違う立方体のオブジェクトがいくつも重なっている建造物や、直方体が二つ中心で交わった物体の中に何やら光があったり、アンティーク風の時計台、噴水、植木、石畳、など、すべての建築物、建造物がお互いの魅力を引き出して夕日に溶け込んでいる。
洋風の街並みを維持しつつ、自然と科学的な建物が建てられていた。
「いいでしょ、ここの景色」
雅が景色に見とれているとどこからか女の子の声が聞こえた。
「ああ、綺麗ダナ……」
美しい、雅は素直にそう思った。
彼女は白色の髪を腰までストレートで伸ばし、その髪の色とは対照的な黒いピンを使って髪を束ねていた。顔は俺が日本ではまず見れなかっただろうというほどの整いぶりであり、彼女が転校してきたとしたら、その次の日は男子全員の(女子もおそらく含まれるであろう)人数で
お祭り騒ぎが起きてしまいそうだ。
体はすらっと引き締まっていて武道の嗜みがあることは雅にもすぐ分かった。胸は中の中といったサイズでこれもまた彼女の体に合っていた。
「……あの、そんなに見られると恥ずかしいんだけど…」
「っ!!ごっ御免!!」
ごめんのイントネーションを間違え、武士の情けのような声になってしまった。

「ねぇ、あなたの名前は?」
首をかしげて聞いてくる。そのあざとい姿に雅は顔を赤らめる。
「お、俺は大岡雅だ。君の名前は?」
雅は彼女の名前を聞いて今後ともお近づきになれないか、と思ったが、何やら彼女の様子がおかしい。
「…え、ウソ…」
彼女は両目をこれでもかというぐらいに開いて手を口に当てて驚いていた、足を何歩か後ろに引きずったことからこれは相当驚いているのは雅でもわかる。
雅はできるだけ優しい声、顔で
「どうした?具合でも悪いのか?」
「……あなた、ヨミって人を知ってる?」
「ん?ヨミ?」
雅は首を傾けて指を顎にあてて考える。
「んー。大岡黄泉。…ああ、それじいちゃんだわ」
「っ!!」
それを聞いた途端、彼女はさっきよりもさらに息を吸い込み驚いていた。
「…まさか、こんな場所で出会うとはね…」
話がかみ合わないのでまた首を傾ける。

「あの聞きたいこ…」
「ちょっと待ってくれ、俺の質問に答えてくれないか。さっきから誰にも俺の質問に答えてくれないんだよ」
右手を額にあて顔は彼女の方を向いておらず、左手を出してこちらの静止を促している。
その格好に彼女はあっけにとられて。

「ふふっ、私はフィレイ・アシュベル。第5貴族です」
面白い人の分類に雅は分類された

雅は答えてもらった喜びとともに脳みそ半分をもう一個の事に使っていた。
「(まーーーたわけのわからんタンゴガデテキタゾ……。)」
今日はどこかで休みたい、そう思った雅であった。

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