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第2章37話:森の中へ


昼食を摂って、さらに歩き続ける。

途中で街道を離れ、森に入った。

目的地の滝までは、この森を通らなければならない。

明るい森である。

そこそこ見晴らしがよく、木々の隙間から木漏れ日が射し込んできている。

エドゥアルトが感想を述べた。

「穏やかな森ですね」

フランカが相槌を打つ。

「そうですね。でも魔物がいますよ」

彼女の視線の先には、一匹のホーンラビットがいた。

一本角が生えた可愛らしいウサギ型モンスターだ。

私はホーンラビットを眺めながら告げた。

「食料は現地調達が基本ですから、アレを狩っていきましょうか」

「では、自分が」

エドゥアルトが言いつつ剣を取り出し、ホーンラビットに近づく。

ある程度接近してから、一気に踏み込んで斬りかかった。

(さすがエドゥアルト。冴えた体さばきだね)

間合いを定めてから無駄なく距離を詰めるさまは、洗練されていた。

さすが若くして騎士団に入隊するだけのことはあった。

エドゥアルトがフランカに尋ねた。

「フランカさん、解体は任せてよろしいですか?」

「は、はい」

フランカが了解してホーンラビットの処理を始める。

こちらも兵士だから、解体作業は手馴れているようだ。

手際よくホーンラビットを解体して肉を手に入れる。

「ああ、その肉、わたくしが収納しておきますわ。このカバン、アイテムバッグですの」

と言ってバッグを見せびらかす私。

実際はアイテムバッグではなく、ただのバッグ。

バッグに収納すると見せかけて、収納魔法でアイテムボックス送りにするという、カモフラージュのためのものだ。

「何か他に収納してほしいものがあれば、いつでも言ってくださいまし。結構大容量のバッグですので」

実際は大容量ではなく、容量無限なのだが、もちろん本当のことは言わない。

収納魔法やアイテムボックスの存在が知られるのは、良くないからである。

「そのようなアイテムバッグをお持ちとは、さすが公爵令嬢様です。おかげで旅がとても捗りますね」

と、エドゥアルトが褒めてくる。

するとフランカが慌てて、

「あ……さ、さすがルチル様です!」

と、ぎこちなく太鼓持ちを始めた。

私は苦笑しながらホーンラビットの肉を受け取って、アイテムボックスに放り込んだ。

「さあ、この調子でどんどん進みましょう」

そう言って、歩みを再開した。


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