第2章36話:出発
公爵領都を歩く。
私が先頭、その斜め後ろにつき従うように、二人が歩いている。
エドゥアルトが質問してきた。
「あの……ルチル様。此度の旅では、いったいどちらに向かわれるのでしょうか?」
「そうですね。最終目的地は【カルッシャ海岸】ですわ」
カルッシャ海岸には、秋になると、ある魔物が出現する。
それを倒すと得られる素材が、強力なスキル石を作るために必要なのだ。
エドゥアルトが言った。
「カルッシャ海岸……ですか。聞いたことがない地名ですね」
「二つ隣の領地にある東の海岸ですわ。ただ道中、寄り道したいところもありますから、真っ直ぐ向かうわけではないですが」
「明確な目的地がおありなのですね。では、我々はルチル様についてまいります」
エドゥアルトがそう述べたので、私は応える。
「ええ、そうしてくださいまし」
そのまま東門を抜けて領都を出た。
東門からは草原と雑木林が広がっている。
草原の真ん中には街道がうねるように走っていた。
私たちは街道の上を進んでいく。
たまに、行商人の馬車や旅人とすれ違う。
雑木林の中に入っていく冒険者たちの姿も見える。
空には晴れ渡る青色が広がっていた。
穏やかな雰囲気だ。
フランカがふいに尋ねてきた。
「あの……馬車は使わないんですか?」
私は歩きながら答えた。
「ちょっと立ち寄りたいフィールドがありますの」
実は、領都から少し離れたところの山奥に滝がある。
そこで手に入るスキル石を回収しておきたい。
しかし馬車では、滝にいくのは不可能である。
なので徒歩で移動することにしたのだ。