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第1章29話:シエラ視点

<シエラ視点>

ルチルが満足げに、カスタマイズした魔法の使用感を試している。

その横で、シエラは驚嘆(きょうたん)していた。

(こいつ……鑑定魔法と収納魔法を合体(がったい)させるなんて)

魔法を使い勝手が良いようにカスタマイズすること。

それ自体は(めずら)しいことじゃない。

しかしルチルがやったことは、その域を超えていた。

鑑定魔法と収納魔法。

異なる二つの魔法を、【ステータスオープン】なるスキルに集約させたのだ。

魔法と魔法を融合させる(わざ)

そんなのは精霊でさえ容易ではない。

魔法というものの本質について深く理解していないと実現できないことだ。

(しかも発想もぶっ飛んでるわ……何よ、ステータスオープンって)

自身のパラメータ、アイテム、スキルなどをウインドウ画面で表示するスタイル。

ここまで型破(かたやぶ)りな魔法は、シエラでさえ初めて目撃した。

いったいどんな生き方をすれば、こんな発想が出てくるのか?

不思議で仕方がない。

……しかし。

確かに便利そうではある。

鑑定魔法のウインドウ表示。

アイテムのリストアップ化。

視覚的なわかりやすさがあるし、アイテムの管理はかなり効率化されるだろう。

(なるほどね……)

と、シエラは納得する。

ルチルは錬金術の秘奥(ひおう)に到達しうる逸材(いつざい)

そう思ったからこそ、シエラは契約を結んだのだ。

そして、今、自分の目に狂いはなかったと確信する。

ルチルには常人には見えない何かが見えている。

常識にとらわれない発想力がある。

それは錬金術の達人級(アデプト)に至るには、絶対に必要なものだ。

(今後の成長が楽しみになってきたわ)

シエラは微笑み、内心で期待をふくらませるのだった。



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