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第1章10話:契約魔法について


ところで、トマトケチャップはルチル商会だけが販売する専売品だ。

他の店では扱われていない。

製法が知られていないので、他店では製造できないのだ。




しかし製法がバレてしまうこともあるだろう。

一番ありうるのは、ルチル商会の従業員が口を()らすことだ。

だがこの世界では、それを防ぐために契約魔法というものがある。

正式名称は【契約魔法(商業)】

商売の取り決めに使われる魔法だ。

この魔法が、いわゆる契約書として機能する。

しかもその契約は、なんと精霊が守ることを強制してくれるのだ。

つまり、精霊による拘束力が発生する契約であり、破ることは絶対にできなくなる。

(まあ理不尽な契約や、非道な契約はできないようになっているけどね……)

今回、トマトケチャップを販売するにあたっては、従業員に、この契約魔法を使った。

つまり「トマトケチャップの製法を秘密にせよ」という契約だ。

この契約に同意した者のみ、従業員として雇っている。

だから製法が従業員の口から漏れることは絶対にない。

製法を吹聴(ふいちょう)しようとしても、従業員の口が魔法で塞がれる……という、直接的な制止が働くからだ。




しかし、それは一時的な処置に過ぎない。

そういう対策をとっても、いずれ製法はバレることになる……と私は思っている。

トマトケチャップはそんなに作るのが難しいわけではないからだ。

いずれ他店(たてん)が自力で製法に辿り着くことになるだろう。

まあ数年後には作り方が広まってしまっているかな。

それまでに、新しい商品を開発したいところだね。

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