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いざ王都へ 1

 海からスーナの街へ帰ってからは忙しかった。

 まず全員が冒険者ギルドに呼ばれ、またトウヨウとの話になる。

「アシノ、お前に王から勲章を渡したいという話になっている」

「これまた御大層な話だな」

 アシノは赤髪をクルクルといじって、少しも興味が無さそうに言った。

「テロ組織キエーウを壊滅させたんだから当然の事だろう。1週間後だ」

 はぁーっとため息をついてアシノは「はいはい」と返事をする。

「私は王都に行くみたいだが、お前達はどうする?」

「王都ですか!? 言ってみたいでず!!」

 ムツヤは最初に食いついた。その焦げ茶色の瞳をキラキラと輝かせていた。

「私も行くわよ!! 王都なんて久しぶりー!!」

「私も同行します」

「僕も行きますよ!!」

 ヨーリィ以外の皆が行くと返事をする。

 相変わらず意思表示は無かったがヨーリィも付いてくるだろう。

「すまんな、それじゃ早速王都に向かって出発するか」

 王都までは馬車を使えば4日で着く。ムツヤ達はまたスーナの街を後にした。

 ムツヤ達はガラガラと馬車に揺られ、途中で街に寄り、4日かけて王都『ツノミヤ』の目前まで来た。

「うわー、すげーでけー!!!」

 千里眼で見える距離まで来るとムツヤがはしゃぎ始める。

「まだ僕にはまだ小さくしか見えませんけど、大きな街ですねー」

 隣でユモトが馬車から顔を出して、茶色い髪を風になびかせながら言った。

「王都はすごいわよー、なんてったって国1番の街なんだから!」

 何故かルーが得意そうに言う。アシノは興味なさげに馬車にもたれかかって目を瞑る。

 いよいよ皆が目で見えて大きさを感じられるぐらい近付くと、大きな門が迎えてくれた。

 そこでは検問を待つ者たちが列を成している。暫く待つと順番が来た。

「次の方どうぞ」

「あぁ、これで良いですか?」

 モモは国からの招待状を取り出して見せる。

 文章と王国印を見て兵士は驚いた後に、カシャカシャ鎧の音を立てて姿勢を正す。

「勇者アシノ様ですね!! お待ちしておりました!!」

 その言葉が届く範囲の者たちがざわつき始めた。

 馬車の中でアシノは「はぁーっ」とため息をついた後、荷台から降りる。

「はい、私がアシノです」

「アシノ様!! お待ちしておりました!! どうぞ王都の中へ!!」

「わかりました、お疲れさまです」

「はっ!!」

 兵士は敬礼をして荷馬車を送った。ルーは笑いを殺してうずくまっている。

 門をくぐるとスーナの街よりも更に賑やかな光景が出迎えてくれた。

 スーナの街の数倍は居る道路を行き交う人々に馬車。露天に店に行商人。そして何よりも大きくそびえ立つ城。

 ムツヤは興奮を隠しきれず、うわーっと言いながらそれを見上げていた。

 馬車を預けると皆は街の中を歩き出す。ムツヤだけでなくユモトとモモもその立派な街並みに目を奪われていた。

「ここから少し行ったホテルに招待をされている。向かうぞ」

 アシノの後を付いて行くと、一際大きな建物の前へたどり着く。

「ここみたいだな」

「へぇー、立派な所じゃない」

 流石に国からの招待というだけあり、それは外装から分かるぐらいの一流ホテルだった。

 外に立つボーイに声を掛けられ、招待状を見せると「お待ちしておりました」と中へ通される。

 まるで城のような内装にムツヤは心躍らせていた。

「お荷物お預かりいたします」

「えぇ、お願いします」

 アシノに習って皆が荷物を預けると、部屋まで案内され、ドアの向こうを見るなりユモトまで思わず「うわー」っと声が出る。

 今まで見たことが無いぐらい豪華な部屋がそこにはあった。広い部屋に大きなベッド。なんと部屋に風呂まであるらしい。

「何か御用がございましたら備え付けの連絡石でお呼び下さいませ」

 ボーイの姿が見えなくなると同時にムツヤはベッドに走ってダイブした。

「ユモトさんすげー、大きいですよー」

「ふふっ、そうですね」

 ユモトは歩いてベッドに座り、ヨーリィもムツヤのベッドの端にちょこんと座る。

 その頃一方女子部屋はと言うと。

「ふふっ、優雅な私にピッタリの部屋ね」

 淹れてもらった紅茶にミルクを入れて、優雅とは程遠くクッキーをモシャモシャ頬張りながらルーは言った。

 モモは大きな鏡付きの化粧台の前に座ってみる。

「後3日、いや、式典が終わる日も考えると4日はこの部屋で世話になるわけか、悪い気はしないな」

 アシノはベッドに寝っ転がりながらそう言った。

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