第十章: 揺れる絆
それから数日後、翔馬は新たな提案をクラスに持ちかけた。今度は、文化祭に向けてクラス全体で何かを作り上げようというアイデアだ。
朝のホームルームで、翔馬は教卓の前に立ち、いつもの穏やかな口調で話し始めた。
「次のイベントは文化祭だ。これこそ、クラス全員で取り組む一大プロジェクトにしようと思う。」
教室内がざわめく。文化祭の準備には膨大な時間と労力が必要だ。生徒たちは期待と不安を胸に、次の言葉を待っていた。
「そこで提案なんだけど、クラス全員で劇をやらないか?」
その言葉に、一瞬静寂が訪れる。劇というアイデアは、予想外だったのだろう。
「劇って…具体的には何をやるんだ?」規が手を挙げて尋ねた。
「そこも含めて、みんなで決めたいと思ってる。」翔馬は微笑みながら答えた。「脚本から演出、役割分担まで、クラス全員で作り上げる劇だ。」
「俺ら男子校だぞ?どうせ全員男のキャストになるんだろ?」ノリトが笑いながら突っ込むと、クラス中から笑い声が上がった。
「それが逆に面白いんじゃないか?」翔馬は軽く肩をすくめた。「男子だけだからこそ、やれることがあると思うんだ。」
休み時間に、一海と宇俊が廊下で話していた。一海は劇の提案について考え込みながら言った。
「劇をやるのは悪くないけど、クラス全員をまとめるのは相当大変そうだな。」
「まあ、翔馬が何とかするだろう。」宇俊は軽く笑った。「ただ、脚本をどうするかが一番の問題だな。誰が書く?」
「そこなんだよ。俺たちの中に、そんな才能のあるやつがいるのか?」
その時、背後から誓が声をかけてきた。「あの…脚本なら、僕が少し手伝えるかもしれない。」
一海と宇俊は少し驚いて誓を見た。普段は目立たない誓が、自ら手を挙げるのは珍しいことだった。
「お前、脚本書けるのか?」宇俊が尋ねると、誓は恥ずかしそうに頷いた。
「うん…小さい頃から、ちょっとした物語を書くのが好きで…。でも、みんなが満足するものになるかは分からない。」
「それでも十分だ。」一海は柔らかく微笑んだ。「お前のその気持ちがあれば、きっといいものになるよ。」
その日の放課後、教室では早速劇のテーマを決めるための話し合いが行われた。
「どうせなら、インパクトのあるテーマがいいよな。」ノリトが言うと、規がすかさず提案した。
「例えば、廃校を舞台にしたサスペンスとか?」
「また廃校かよ!」太起が笑いながら突っ込む。「でも、それはそれで面白そうだな。」
「いや、ここはもっと壮大なファンタジーとかどうだ?」胤命が静かに提案すると、教室内が一瞬静まり返った。
「ファンタジーね…確かに、男子校ならではのダイナミックな演出ができるかもしれない。」翔馬が納得したように頷いた。
「じゃあ、ファンタジーとサスペンスを掛け合わせたらどうだ?」宇俊が冷静にまとめるように提案した。「壮大な世界観の中で、謎を解いていくようなストーリーにする。」
「それ、いいかも!」誓が思わず声を上げた。「僕なら、そんな脚本を書けそうな気がする。」
「よし、それで決まりだな!」翔馬が声を張り上げた。「誓、脚本はお前に任せる。みんなでサポートするから、安心して書いてくれ。」