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生き延びるすべ

とりあえず、今わかったことを簡潔にまとめておこう。

・モンスター、冒険者にはともにランクがあり、下からE、D、C、B、A、Sで、俺(ゴブリン)はEランクである。

・相手の冒険者ランクがわかる。

・物質の位置と位置を交換できる。ただし範囲に制限あり。また、生き物には不可。

・氷魔法あり。でも弱そう。

・再生あり。あと、魔石が心臓みたいな感じっぽい。

・多分ここは地獄とかじゃなくて、異世界のダンジョンの中っぽい。これが俗にいう異世界転生ってやつかな。

・多分最弱っぽい。クッソ腹立つ。

とりあえずこんなもんか。

大体簡単に理解したところで、もう一回見落としがないか、モンスターカードをチェックしてみる。

(あれ?なんかここちょっと色違う?)

モンスターカードの写真で、左胸の部分、人間でいう心臓の部分だけ、色が少し紫色に見える気がする。

ふと自分の体を見てみるが、やっぱりそうだ。

もしかすると、ここが魔石なのかもしれない。魔石って紫のイメージあるし。

そこまで考えたところで、天才的なアイディアが下りてきた。

〈この魔石を動かすことができたら?〉

魔石が急所に当たるのであれば、急所を逃がせばいい。そういうアイディアだ。

やり方はよくわからないが、とりあえず体の中を意識してみる。

構造がよくわからないから、なかなか体の中に入り込んでいけない。

(唱えればいいのか?)

とりあえず何も考えずに魔法を唱えてみることにする。

「スワップ」

唱えた瞬間、世界が点線で区切られたような感覚がした。実際そうではないのはわかっているが、すべての空間が認識できたかのような、そんな気が。

今ならいけるかも、という希望を抱いて、体の中をイメージする。

(見える、見える。構造が、血管が、欠陥が。)

体の隅々まで張り巡らされている血管は見えるが、もやがかかったように見えなくなる空間がある、という欠陥も見える。

とりあえず今はそんなこと関係ない、と自分を落ち着かせ、左胸へと神経を集中させる。

進む。進む。進む。

血管という血管をくぐり抜けて、ようやく―――――。

「見つけた、、。」

紫色に輝くガラスの破片のような物体。これが、『魔石』

これを奪うがために、冒険者はダンジョンへやってくる、と昔読んだラノベ小説には書いていた気がする。

その魔石を下へ運ぶイメージをする。

持って、下へ運んで、そして、そこにある『空気』と位置を入れ替える。

「ふうー。」

魔石の位置が動いた感覚がして、ようやく集中を切らす。

集中しすぎて、息をするのも忘れ、汗がだらだらと流れているのにも気が付かなかったみたいだ。

多分、たった数秒のことだろうが、それでも、だいぶ体力と、集中力を消耗するんだな、と知ることができるいい経験になったんじゃないかと思う。

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