転生
ピッピッピッ
無機質な電子音が聞こえる。
あれ?ここどこだっけ?ああ、そうか。そういえば癌が見つかったんだった。
もう長くはないってこういう時に使うんだろうな。
ピッピッピッピーーーーーーーーーーーーー
無機質な電子音を最後に、俺は人生に幕を閉じた。
***
薄暗い。
ここが地獄ってとこなのか。それにしても、なんだか無機質なところだな、、
今自分の死に直面したはずなのに、俺はいたって冷静だ。
はあ、おもんなかったな。人生。
小児がん患者の5年後生存率は80%近くという現代で、がん発覚後4年で死んだ俺は不幸なんだろう。
中3の冬、さあこれから受験だって時に小児がんが発覚して、高校に行かずにずっと闘病して、同年代のやつらが成人式を迎えて、そろそろ二十歳になるってところで死ぬって、、。
あーあ。
それなのにこんな薄暗い洞窟の中に放置されるわけ?明かりがたいまつっていつの時代だよ。本当に。
ごろーんと地面に転がろうとすると、腰付近に固いものが当たった。
なんだろう。と腰の方を見ると、体が緑色だった。
―――――。
俺は言葉を失った。
地獄って体が緑色になるもんなのか?なんて意味の分からない疑問が頭の中を駆け巡る。
そういえば、と腰付近を見た本来の目的を思い出す。
短パンのようなものの後ろのポケットあたりに、スマホみたいな長方形の物体が入っていた。
そこには、『モンスターカード』と書かれていた。
モンスターカード、、、冒険者カードなら聞いたことなくはないが、モンスターカードなんてカードバトルくらいでしか使わないんじゃないだろうか。
もちろん、カードバトルに使うようなカードじゃなくて、色々か情報が書かれているカードだ。
とりあえず、一番最初に飛び込んできた緑色の物体?人?の写真を見る。
「とりあえず、認めたくはないが、これが俺ってことなんだよな。」
おもむろにそうつぶやいてみるが、もちろん返事はない。
その写真は、見れば見るほど俺の知っている『ゴブリン』にそっくりだ。
このまま写真をずっと眺めていても何の進展もないな、と思い直し、写真の下のびっしりと書かれた情報を見ることにする。
字が小さすぎて読めなかったから、モンスターカードとやらをもっと自分に近づけて読む。
写真の下を見てみると、『ゴブリン』とかいてある。
うん、進展した。
その他には、モンスターランクや、魔法・スキル、現在地、というような項目があった。
モンスターカードによると、どうやら俺(ゴブリン)は、モンスターランクはE、出没階層は1~5階層らしい。
根っからのくそ雑魚じゃねえか!!と叫びたくなるのを我慢して魔法・スキルの欄を見る。
『魔法』
スワップ
半径20m以内のものを対象とでき、選んだ対象と対象を入れ替えることができる。
対象の大きさは直径5mまで。また、生き物は対象に指定できない。
クールダウンは10秒
スノーム
先端のとがった氷を発射できる。
クールダウンは5秒
『スキル』
リカバー
魔石に攻撃が当たっていなければ、失われた体の部分を自動で復元する。
ヴィジブル
冒険者の冒険者ランクがわかる。
ーーーーーーーー
ほう。
魔法・スキルの欄を確認して、わずかながら高揚感が生まれる。
出没地域、1~5階層か。
なら実力で行ってやろうじゃないか。ここの最下層まで。