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第3章の第87話 どうしようもない問題14


クリスティさんは、こう物語る。
「ホントの嵐の原因か……ミシマさんか……ヨシュディアエさんか……?!」
そう呟くクリスティ(あたし)、その顔を上げて。
「……」「……」
その声を上げた発信者のスバル君の顔を見て、その友人の少女アユミちゃんの顔を見て。
「……」「……」
ミノルさん、アヤネさんの顔を見て。
「……」「……」
妹のサファイアリー、エメラルティの顔を見て。
「……」「……」
最後に、この職に大きく関わってくる話のシャルロットさん、アンドロメダ王女様の顔を伺ったの。
「……」
そして、あたしは、その眼を閉じてよく考えるの。
【――ヨーシキワーカさんは、その小説に残した言葉がある、それは、『後戻り不可能地点』……】
【今、まさにその通りだと思うわ】
【今日、一日で、ホント色々な事があったわ――】
「……」
その眼を開けて、一同が介するこの場で、みんな顔色をよく伺うの。
(あたしだって、負けちゃいけない……!!)
「それは……」
(老いだった……婚期が迫っていた……。その中で、ミシマさん達に関わっていた事で、その金回りのいい話に飛びついた……もの)
「金よ」
「……」
(借金を負ったドクターイリヤマとドクターライセンのどうしようもない問題の企みに、加担したが為に、その中で隠蔽工作を進めていた詐欺幇助の女)
「何を当たり前のことを言っているの!?」
「……」
(自分を着飾り、行くところまで行って、その人生の終着点は――)
脳裏のイメージに浮かんだのは、幻の食虫植物と言われるラフレシアだったわ。
その植物に止まった虫たちは、そう芳香に誘われ、その大きな口の中に入って行き、誤って滑り落ちていくの――それはまさに捕食される様。
モムモム、モムモム
ラフレシアは、東南アジアの熱帯雨林に咲く世界最大の花で知られていて、その花の直径は、1メートルを超えるものもある。
そのとんでもなく大きいおっぱいに、とても良く似てるわよね。
その姿形から食虫植物に間違われやすく、寄生植物に分類(カテゴリー)される。
そう、まるで詐欺女のように。
そして、その虫を誘き寄せる芳香は、実は……ッ。
その大きく咲いた花から発せられるもので、堆肥のような悪臭がしてて、この悪臭で虫たちを誘き寄せているもの。
モムモム……ゲプッ……
だがそれも、もう終わりね。
そう、それはまるで、草木が生い茂り、やがては枯れていくように……。
「栄枯盛衰……」
「?」
「そう、まるで、かって栄えた街なみのように……、栄えては、衰え、やがて衰退していく……」
「……」
(そう、それが奪われた時間……。金回りのいい話にくっついたがために、それは、見る人達の視点と見解によっては、とても見苦しいもの)
「どうしようもない問題で、暴飲暴食して……ホント、自業自得……」
「……」
(自分でした悪い事の報いは、やがて自分の身にも跳ね返ってくるもの……。
そう、それも、森の奥の向こうから、音を立てて責まり立ててくる『ミシマファイアー』という業火のともがらによって……――)
ゴォオオオオオ
と凄まじい勢いで向かってくる火炎に、あっさりと飲み込まれていく様。
バチッバチッ
と激しい炎に包まれる中で、その食虫植物ラフレシアは、焼き焦がさられるのだった……。
そのはるか天空の夜空、月明かりが上がっていた。
「――あたしは、まだ、良かったのかもしれないわね……フッ……」
「?」
「……最後の婚期が迫っていた女は、訳がわからなくなっていたのよ……?」
「どーゆう事!?」
「1つしか選べなかったの……。その取捨選択を間違えていたの。
金か!? 無罪の実証成立を誤った形で手助けするか!? ……もちろん、後者だった……」
「……」
「どちらを取っても、最終的には、ヨシュディアエとヨーシキワーカさんは、くっ付かない……!
これは、元から、そーゆう風になる仕組みだからね……。そう、最終的に、どちらかしか救えなかったの……!
能力があるミシマさん達を取るか!?
その能力がなく、完全無罪の実証ができたヨーシキワーカさんを取るか!?
この2つの内、どちらかの道を進ませるしかなかった……!!」
「……能力……」
「……無罪……」
「みんながみんな、訳がわかんなくなっていたわ……両方とも救おうとしていたからよ!?
でも、途中で、勝負はついていた……。
それは、先にハッキングしていて、ヨーシキワーカさんの無罪が確定していたから……!!
でも、それはあくまで、この時点では、表沙汰になっていないからよ?
まだ未公開のメモ帳の状態で、ハッキングされていただけ……何もその証拠がない……。
だから、表になって公開しなければならなかった……!
そうしなければいけなくて、誰しもがヨーシキワーカさんが、無罪だったと実証できないでしょ!?
……だから、仕方がなかったのよ……――」

――白い霧の中。
払うその手。それはAIナビ:ペタルのものだ。緑と紫色の触手だった。
払われた霧。辺りを見回し、血走ったその眼で、あいつ、AIナビ:アントラローダイトを探す。
どこ、いない。
天につきたつ夜空。
その向こうの月に一点の影。
毒々しい大地の上に立つヨシュディアエのAIナビ:ペタルは、その顔を見上げる。
その眼に映るは、ヨーシキワーカのAIナビ:アントラローダイトのその姿だった。
その鯉口を切る。
キィン
交錯する両雄、アントラローダイトとペタル。
主人の想いが籠る、『さよなら』と。
白から赤へ逆巻く炎、そのまま抜刀一閃。
その首と胴体を切り離し、首と上半身が離れて行った刹那、
逆巻く火焔。そのナビを消去(デリート)する。
呟いた一言は、
『……自分が前にしてやったように、今度は、お前がそうなるんだ……。他ならない、被害者・遺族達の手によって……。
その手の持ったお金は、身に包んだ奇麗な服は、そうした人達を追いやった故の、対等の等価だ。
何より、奪われた時間、失われた命の重みはおもい……――』
ヒュン
と白刃を振るい、それについたデータの粒子を払い落とし。
チィン
とその鞘に刀を納める。
『……』
バチバチ
アントラローダイトは、そのナビだった情報(データ)の廃棄品(ジャンク)を見て、
『……』
感傷に思いつつも、まだやる事があるからと、その場を歩み去っていく。
夜の森の奥の向こうへ。
後に残された、そのナビだったデータのジャンクは、散り散りになり、このウェーブグローバルの電脳世界に漂うのだった――
【アントラローダイトVSペタル】
【勝者! アントラローダイト!】

「――あれは、主人の命運を賭けた『代理戦争』だったと言われてるわ。
ヨーシキワーカさんじゃ、勝てる勝負でも、職業安定所では、騒がないからね……。
そんな事したら、立場が危うくなるのが、決まってヨーシキワーカさんになるもの。だから、騒いではいけない。
証拠がまだ、出揃ってはいないからね……」
「証拠……」
「ヨシュディアエの立場を追い詰める実証の証拠よ!
証人になるのは、ヨシュディアエの隣にいた人物たちとその職員さん達!」
ポイントとなるのは、職業安定所職員として、相応しいか否か!? たったそれだけよ!」
「……」
「最後に手を下したのは、ヨーシキワーカさん。
最後にあそこからあの女を追い出したのは、そこにいた職員さん達。
あの娘(こ)は昔から、散々悪どい事をしていても、特別優秀だからと、周りの人達の間で取り次いで周り、どうにかこうにか瀬戸際を保たれていたものに過ぎない。
良くあの顔と肢体(身体)で、人を欺き、惑わせていたからね。
そうした証拠が何も残らないように、よく揉み消して回っていたから……。
実弾というお金も包んで……。
でも、自分の負い迫る老いには勝てなかった……。金だけはあってもね……!?
美容につぎ込んでも、まだ無理があった……。
どこで何をされるか、正直わからなかったからよ……!?
それだけ人に、恨みを持たれていた娘(こ)なのよ……。
良く、同じ女の人同士が、目の敵にしていたものよ!?
身内の人に付き放された形にもなるわね……」
「やられた人達が、その女の人とは別の人に、取り次いでいたんだね?」
「ええ、そうよ……。どんな悪行も、塵も積もれば山となる。
偽詐欺電話口から、よく昔から、ミシマさん達と一緒に、恫喝と恐喝行為をきたしていたからね……。
そうした実害の被害を受けていた人達が、そうした犯罪声明を、一度上がれば、もう首が回らなくなってくるわけよ。
ヨシュディアエという職員が、相応しくないとする声が上がっていたの……!」
「……」
「未来(いま)だから言えるわ。
Aは、ヨーシキワーカさんの人生を台無しにし、昔の会社を初め、ミシマさん、イリヤマ先生、ライセン先生を勝たせ、
その責任を払いきれないなら、土地や財産分野を担保に出し、盗り立てる話が、確実に成功していた。
これは絶対ね。
あっちが無視を決め込めば、確実に絶対に成立していた……!
反対に、ヨーシキワーカさん達は、何もできなかったんだから……!
この線で言えば、昔の職員さんを追い出し、ファウンフォレストさんが、偶然にも異動という形で来る線は、自然消失していたわ……!
Bは、1番邪魔になりそうなハローワークから、昔の同僚の方を追い出し、
その流れで、新しくやってきた女性の職員の方がいた。
これがファウンフォレストさん!
ほぼ同時期に、ヨーシキワーカさんが、その小説を手掛けていたわ。
自身のそうした無実の罪を、明かすために必要だから……来るべき時、未来にその望みを繋げて……。
それをあっちの人達が、誤った形でハッキングしたがために、電話を通じて、騒ぎが起こっていた時期があった。
Aを助けていれば、Aは確実に助かっていたわ。
Bの小説を跡形もなく消し去っていれば、ヨーシキワーカさんの人生は、確実に潰えていた……」
「それって……まさか……!?」
スバル君が、そう口を零し、クリスティ(あたし)が真理の事実を告げる。
「ええ、そうよ! あの人はね、自分が手掛けた作品の子供たちに、一命を取り留めた形になるの!」
「ウソでしょ!?」
「「ううん、ホントよ!」」
そう、声を上げたのは、サファイアリーさんにエメラルティさんの2人だった。
「だから、最後にトドメをさしたのは、ヨーシキワーカさんだと言えるのよ……。
そこまで、懊悩と苦悩の人生で迷う中で、その一太刀を振るったの――」
斬ッ
白刃の長刀が、黒石ヨシュディアエを断ち切るのだった……――
「あれを明かした以上、詐欺事件のその手助けをしていたヨシュディアエは、
詐欺幇助(さぎほうじょ)の疑いがあり、職業安定所職員としての、職員生命は潰えたのも、同然なの――」


★彡
【領収書が見つかった年の10月、ヨシュディアエの職業安定所職員としての終わり、詐欺幇助の手助け】
――この日、私は、職業安定所に毎週のように訪れていた。
今日も今日とて、職業相談面談ボックスに足を運ぶ。
今日、応対する人は、職業安定所の男性職員の方だった。
『この会社は、どんな会社ですか?』
『あぁ、こちらにある会社は――』
ヨーシキワーカ(私)は、父(ダダ)を通し、半導体製造工場のいい希望求人の話を見つけていた。
未来世界では、ほとんどがそうだが、紙やチラシのような紙の媒体物はほとんど見かけない。
普段のやり取りとしては、父(ダダ)が毎月購読で見ていた電子新聞に目を通して、そのチラシのデータが、私の元に届いてきたものだ。
父も、就職できずにいる私の身を案じてくれている。その思いに応えないといけない。
(なんだけど……自分の学力と技能(スキル)にできるところがあるからなぁ……ハァ……何事も仕事経験年数が大事か……。
でも、自分にできる事をしないといけない)
何かそうした動きをしないと、こちらからしないといけないんだ。
『ちょっと待ってくださいね。こちらにある職員用の端末を使って、今調べますから……!』
『……』
『あった……これだ!』
男性職員さんは、その職員用の端末のエアディスプレイ画面を、指タッチして、
私の方に投げ渡してきた。
その投影されたエアディスプレイ画面には、その会社の外観図と経営者名と顔写真があった。
『この【『株式会社太陽光機』Solar Machine Company Limited(ソーラーマシーン カンパニーリミテッド)】って、どーゆう会社なんですか!?』
『そうだな……。少し前に、私のところから、そうした人材の子をその会社に送り出した事があるんだが……』
『……』
『少し前に、その半導体製造工場に動きがあってね。最近できあがったものらしいんだ』
『……』
『割といいところみたいだよ! その女の子が言うにはね!?
なんでも手先が器用な子じゃないと扱う部品が細々としているらしいから、イスに座ったまま作業をしていて、アットホームな会社らしいよ!』
『へぇ~……中々いい会社なんですね!』
『まぁね……! 手先が器用な子じゃないと中々厳しいところがあるみたいだけど……。その娘(こ)は手先が器用だけじゃなく目もいいからね!
そうした細々した部品を扱うから、眼の識別能力がいるんだよ!』
『眼か……。あっ、自分は手が大きいから難しいかな!?』
『う~ん……。案外そうでもないのかもしれないよ……!? あそこはまだできたばかりの新工場だから、女性の割合が多いところみたいだからね!?
君みたいな若い人材の人が入ったら、そうした事で、向こうの人達も喜ぶだろうし、
力仕事の方で、向こうとしても何かと助かるんじゃないかな!?
……で、どうするんだい!?』
『……』
これには、ヨーシキワーカ(私)も迷うところだった――
――そして、所変わって、職業相談面談ボックスで言えば、そうした職員さんを通して、右に5つぐらい進んだところでは、
ヨシュディアエさんとファウンフォレストさんの姿があったんだ。
今日は、ファウンフォレストには会っていなかった……。
何か嫌な予感がしていたからだ……。
それが現実のものになっていく……――

『――あの子が着たね……じゃあ、やるとよ!?』
『……』

【ヨシュディアエ・カレン】
珍しい金髪ブロンドヘアーの赤毛(ストロベリーブロンド)を有し、灰色の瞳(ライトグレー)に、白人女性特有の白い肌。
一番際立っているのは、その類稀な信じられないくらい大きい爆乳である。
ドンッ
大の男であれば、まずそれに目が行ってしまう。
今日もデカいな……。Iカップぐらいか……? 結構縮んだな……過度なダイエットと老いとストレスがたたって……。
ここまで落ち込むものなのか?
その負い迫る老いには勝てず、乳頭の位置が下に垂れ下がり気味である。

【ファウンフォレスト】
アメリカ人女性の金髪ブロンドヘア―を染めた感が残る、くすみ感のあるスモーキーグリーン。
灰色の瞳(ライトグレー)に、白人女性特有の白い肌。
この人も、ヨシュディアエさんと同じ職業安定所の職員さんなんだ。
そして、ある理由がキッカケで、ここに異動になったらしい。
聞いたところの話によると、向こうで問題が起こり、騒ぎが起こったため、ここに異動になったらしい。
その理由は、この人に尋ねた事がないので、定かではない……。
聞くのは、この人に対し、不躾(ぶしつけ)にも失礼に値するからだ。
加えて、転勤になったこの人に、物珍しさと興味を抱き、こうして自分が何度も近づいたことで、
その人が、当時の俺の受付対応の人と相なるんだった。
それと言うのも、ヨシュディアエさんとはあんな事があり、疎遠となったため、
また、ヨシュディアエさんに関わるとロクな事が起こらないとも限らないから、こうして一定の距離を取っていたんだ。

ナレーションの語り手は、ヨーシキワーカ。
【――距離が結構離れていた為、あまりその声が聞こえ難い、位置関係にある……】
『……』
『……』
『……』
【ここに着た人達と職員さん同士のそうした会話】
ワイワイ、ガヤガヤ
【またTVから音声ガイダンスが流れていた為、あまり聞き取り難い状況下にあったんだ……】
ヨシュディアエさん、ファウンフォレストさんという順に語っていく。
『ファウンフォレストさん。
ここに『録画編集できるボタン』があるけんね!?
あの子が後でここで聞くものやけん、他の職員さんの方に、消させるものとじゃなかよ!?』
『あんたねぇ……ここまでの事をやっといて、今更になって言い逃れする気!?』
『……』
ナレーションの語り手は、守護霊の彼女。
【それは、ヨシュディアエさんにできる、最後の悪あがきで……】
【後日談で、音声レコーダー(それ)を知ってしまったあたしとお兄ちゃんを、とても苦悩させたものだったわ……】
【だから、2人で分かち合う事にしたの喜びも悲しみも、すべてを……――】
ファウンフォレストさんは、こう話す。
『それにあの子だって、ここまでの事をやられて、すごい根に持ってるけんね!?
ここの分だけ、後であのすごい小説に乗せる場合もあるし!?
そもそも、ここの分だけ、消す場合もあるとよ!?
あんた、それわかって言っていると!?』
そう、それができた話だ。
だが、私のそうした迷いと葛藤は、守護霊の彼女と分かち合って、乗り越えたものだ。……後悔も未練もない……。
ヨシュディアエさんは、迷いつつもこう話す。
『……あたしも、あの向こうの会社さんも、こんなになるまで、あの子にとんでもない事したけんね……。
……後になって、あの子の為に役立ってくれるなら、ほんに良かよ!?
それにほんに、捨て鉢になる気もなか……!
あの子の為、礎(いしずえ)になるなら、本望だしぃ……!』
『……あんたねぇ、そのつもりなら、今になって……』
『……』
その判断に迷いと葛藤と焦巡するファウンフォレストさんがいたの。
『……今からでも、あの子の所へ行った方がいいんじゃなかと!?』
『……』
『……』
『……』
その席を立つ気配はなかったわ……。
ヨシュディアエさんは、その音声レコーダーにこう吹き込むの。
『今更になって、あたしも、あの向こうの会社の人も、あの子に面と向かって、合わせる顔なんか……』
『あんた達ねぇ……今更になって、そうやって口裏を上手く合わせる気!?』
『あっ!? ボタンを……!?』
『――!? あんた、さてはそのつもりで……!?』
ハメられた……ッ!?
『よーし!! じゃあやるけんね!!』
『~~ッ』
気勢いっぱいのヨシュディアエさんがいて。
頭の中が、整理がつかずグチャグチャになっているファウンフォレストさんがいたのだった……。
『あんたも、上手くあっちの会社さんに取り次ぐとよ!?』
『……ハァ……』
呆れる思いのファウンフォレストさんがいたわ……。
失敗しちゃったわね……ヨシュディアエさん……。
そのまま、続けていれば、いくらか良かったのに……。
お兄ちゃんを怒らせると、後で、周りの人達が恐いのよ?
『いい!? この『タイミング』が『命』やけんね!? あの子も、これを聞いた後では、後でスゴイ後悔する事になるけんね!?』
『……』

――その時、ヨシュディアエさんの前回りを何か黒いものが纏わりついていた……。
(『死』……。せめてもの贖罪(しょくざい)……この女の気持ち……オオオオオ……)
(……)
(この女は、死んでも拭いきれない事をした……)
(……)
その視線を落とす、黒い靄(もや)のようなもの。
(罪を、拭いきれない事を犯した、その責任を持って、あそこへ連れていく……オオオオオ……)
羨望(せんぼう)の眼差しを向ける黒い靄(もや)みたいなもの。
それは、羨ましさや、ちょっとした妬み、嫉みにも似たもの。
(!?)
(オオオオオ……お前はいいやつだ……そいつに大切に扱ってもらえよ!?)
(……)
そう、ヨシュディアエさんが落ちていく先は、まさしく地獄行き。
あたしもお兄ちゃんも、地獄には落ちる事には、違いははないけど……。
きっと、違うところで、ヒドイ目に会う事でしょうね……。
(さよなら)
(オオオオオ、暇ができたら、あの『悪魔の賢人』を頼って、『たまに顔見せ』にきてくれ……)
(フフッ)
(またな……)
あたしは、ヨシュディアエさんの面談ボックスに訪れている人に視線を落とす。
その人は、多分、詐欺事件に関与した疑いのある電気工務店の人だと思うわ。
善か悪かは、あたしにもわからない……。
だから、それを見てくれているあなた達に委ねるわ。

『――やっぱりそうか……あの時、直接あいつに取り次いでおくんだった……』
後悔が滲む電気工事会社の人。
そう、ここからは、正しくタイミングが命の勝負だ。
その隣で、ファウンフォレストさんが動いていたわ。
ヨシュディアエさんは、こう怒気をこもった思いの言葉を吐いたの。
『もう何だってこんな事になってるですか!? 今の『あたし』の立場、どうしてくれるんですか!?』
『……』
(『達』じゃないんだな……?)
『何だってこんな大事になる前に、そちらで揉み消せなかったんですか!? その話知ってたはずですよねェ!?』
『……消したくても、消せなかったんだよ……なぜか……!? 周りで止められてて……!?』
(何かそうした、面白い動きになるからなんだが……!?)
『フゥ……あっちのそうしたお父さんの会社か……!? よくもォ……ッッ!!』
『そうしたチャンスの話を、一度は本人に巡ってくるようにタイミングを見計らっていたんだがな……!?
それがまさか、深夜に公開してくるとは……!?
こっちとしてもそれは予想外だったんだぞ……!?
てっきり日が明けている内かと……!?』
『フンッ、どちらにせよ……後であなた達の間で、何とかしてやってくださいね!! ……でないとこっちも気が許しませんからねッ!!』
チンッ……。

(どうする?)
(……罪人状に記しておく……)
(……)
(……)
守護霊の彼女も、黒い靄みたいなものも、その視線を下に落とすのだった……。

『――ったく、ホントに使えない……!! イリヤマ先生(あの人)を慕うだけの能なしの男連中の集まりのだけなんだから!!
まぁ要は、バカな男はこっちの使いようなんだけど……?!』
『……』
『……』
その話は、横で座っている同じ女性職員、ファウンフォレストさんも聞いていたわ。
『……』
でも、問題はヨーシキワーカ(お兄ちゃん)の方ね。
おそらく、ほどんど聴こえてないもの……結構距離があるし、雑音も酷いしね。
『……』
『……』
この日は、男性職員の方が職業相談に当たっていた。お兄ちゃんからの指名もあって。
ヨシュディアエさんや、ファウンフォレストさんとは、5人分ほど席が離れている。
この時、職業安定所内に、端末を使って、求人を見に来てくれた人と。
職業相談面談ボックスで、職員さんと話している人や。
その流れで、いい求人の子が着ましたよとばかりに、電話を取り次いで、希望求人の話を、向こうの会社の人と受付相談していたわ。
TVの音声ガイダンスも、ガヤガヤしていたいたから、音はとても拾い難い……。
(辛うじて、聞き取ったものを補完していくしか、なさそう……)
『……』
(お兄ちゃんも、聞き耳を立てているようだけど……。後で、あたしから夢見を通じて、上手く補完していくしかない……。
上手くできるかなぁ~? う~ん……。
……さて、今日はどんな交渉事を持ち掛けようかな? ふむぅ~?)

『えーと……次は……』
次にヨシュディアエさんが掛けようとしたところは、昔の会社だったわ。
その時、同時期のタイミングを見計らって、ファウンフォレストさんの方でも、そうした動きがあっていたの。
つまり、音声は二重になる。

(うっ……。同時に二面はさすがに無理……ッだよォ……!? キツイなぁ……)
(……なら、無理はするな)
(!)
(できる事でいいよ。自分にできる精一杯でっ!)
(……うん!)
『フッ……』
『?』
ヨーシキワーカは笑みを浮かべ。
対面の職業相談面談ボックスの男性職員の人は、その人の顔を見ては、まぁ、いつもの事だなぁと勝手に解釈してくれるのだった。
一番大事なのは、この求人に目を落とす事だ。

ナレーションの語り手は、クリスティさん。
【ヨーシキワーカさんはね。先週の金曜日から土曜日の深夜にかけて、小説を公開していたらしいわ】
【そう、恥ずかしい書店での出来事よ!?】
【それから、土日中に妙な電話が飛び回っていたそうよ!? 電話相談の電話がね!!】
【これにはさすがに、恥ずかしい書店の人も、いきなりの事だったそうで、相当、面食らってしまった事でしょうねぇ……】
【そうした気苦労が伺えるわ……】
【なんかごめんなさい……】
とエメラルティさんが代わって、謝罪するのだった……。
クリスティさんは、こう話を続ける。
【そして、翌週の月曜日の昼に、ヨーシキワーカさんがここに訪れたのよ?】
【実はね、もうわかっているとは思うけど、朝からそうした相談が相次いでいたから】
【黒の容疑者、ヨシュディアエさんの立場が危ぶまられていたのよ!?】
【つまりは、トドメをさす形になっちゃった理由(わけ)】

『あの子が、昔いたあの会社ね……。……こっちもなんだか気が重いやられるわ……今から、なにの嫌味を言われる事か……!?』
フンッ
クスックスッ
後ろから、周りからそうした中傷被害が相次いでいたのだった……。
もう、こっちはいい笑い者よッ。
なにさ、ちっとも顔を出さないくせに、こんな事までしてくれちゃってッ。
後で覚えていなさいよぉ~ッ。
臭ァ
『……ッ!?
朝から何で、こうも電話が鳴りっぱなしで……!?
陰口もなんでか叩かられてて……!?
でも、こっちもやらないと、どうにも気も治まらないし……!? ……何より気が進まない死(し)……ね!?』
その怒りの矛先は、ヨーシキワーカに向けられるものだった。
でも、今ばかりは、こっちの方に、お詫びと謝罪の電話を、一報入れておかないとダメだしね……。

PPP……PPP……ヴーン……
ヨシュディアエ(あたし)は、職員用の端末を操作し、宙に浮くエアディスプレイ画面を出力させる。
そのエアディスプレイ画面を触り操作して、、あっちの会社へ繋げる。
画面が切り替わり、あの昔の会社の人が現れたわ。


★彡
『――あの、もしもし』
『!? またあなたですか!? 今度はどれぐらいふんだくる気ですか!?
もうこっちはあなた達に散々支払っているし! もうこっちには何も手元に残っていませんよ!!』
『そうは言いますが……! そっち側のそうした落ち度のせいで、あっち側がなんだかとんでもない目に合ってるじゃないですか!?
その責任を払ってもらいますからね!?』
そう強気の発言のヨシュディアエさんがいたわ……。
(まだ、ふんだくる気なの!?
あっち側か……ミシマさん達かかしらね? 引いては自分も含むんだし……クスッ)
勝ちは完全に見えていたわ。
それと言うのも、仕掛けていたあの2人の落ち度のせい。
そう、領収書の一件と、モーターの騒音と異常振動トラブルにより、工場設備に色々と不具合を引き起こしていたものだったの。
自分たちで、その騒ぎの原因を作って……。
(お兄ちゃんのせいに仕立てようとしていたようだったけど……。
それを看破されてしまった以上は、そうした悲劇が跳ね返ってきてもおかしくはない……かな?
実害の被害を被るのは、実は、経営者様だったりもするんだから……!)
そう、1番の被害者は、その経営者様だったりもする……。
(……まぁ、そんな事は、関係ないかな? 今も、下で働いている人達に取っては……!?
倒産する前に、夜逃げしようとする動きがあっているんだけどね……!?
その裏の陰で、また、不正を働かられているんだから!?
こんな話、知らなかったでしょ~!?)
守護霊の彼女が、そんな不気味な事を告げる、あの会社は、もう長くはない……。
会社そのものは助かっても、その経営者だけは助からない。
その方法がある……んだけどもぉ。
(この手は、最終手段だから……ねぇ……?)
あたしは、その最後の手に気づきつつも、胸に秘める思い。
黙ってたままの方が良く、もう後にも先にも、もうその手しかないから……。

その時、質問を投げかけたのは、アヤネさん。
ナレーションの語り手は、クリスティさん。
【ねえ、最終手段って?】
【う~ん……今この場では、コメントを控えさせていただくわ……】
【え……!?】
【言わぬが花という諺もあるしね……】
【……】

『……ッ。まったくもう、完全にあの2人のせいで、今こんな事に……ッ!!』
『フンッ!!』
と鼻で笑うヨシュディアエ(あたし)がいたわ。
真犯人は、オオ……なんとかさん夫妻……。
片方が領収書、もう片方がモーター。それぞれが問題事を残し、それを、今向こうにいるあの子が次々と解き明かしていったわ。
こんな偶然、普通はそうそう起こり得ないけどね。でも……。
ニヤリ
とほくそ笑みを浮かべるヨシュディアエ(あたし)。
(馬を乗り換えるなら、今ね……!)
(オオオオオ……こいつ、鞍替えをしようとしているぞ?)
(あぁ……そんな事、今更、許す気もないけどね……ッ!!)
黒い靄(もや)が、ヨシュディアエのそうした心境の変化を読み取り、それをこの子に教える。
それを聞き、お怒りの守護霊の彼女がいたのだったッ。

『今、あなた達が『仕掛けたミス』のせいで、今、あの子がこちらに来ていて、別の男性職員さんを通して面談ボックスに着ています!』
『……今あの子が……!? ……あなたじゃないのね!?』
『違いますね……! ……あたし、あの子にどうにも避けられているようですから……!』
『……』
そう、口を酸っぱくして、愚痴を零すヨシュディアエさんは、あちら側に見えるヨーシキワーカを見てきた。
その視線を切り、電話にこう取り次ぐ。
『――言ってみれば、今のこうした状況を作ったのは、あなた達のせいなんですからね!?
あんな事がなければ、今もあたし達2人は、就職相談を今ここで請け負っていた仲(!?)なんですからね!?
そうした夢と希望の話を、あなた方が折ってくれたんです……!!
もちろん、あたしも……?!
そうした責任の問題の話を、今、しっかり支払ってくださいね!!
今もあの子は、ここに何年間もその顔を出していて、2,3年間、就職できずにいるんですから!?
……その責任をちゃんと払ってください!!』
『……』
その対応に困り苦慮する思いの女性の方がいたのだった。
『……』
その様子をファウンフォレストさんが見ていて、タイミングだと思って、別のところへ電話を取り次ぐ。
実は、こうした動きは、何回かあっていて、
そのタイミングを見計らっては、各々の会社へ取り次いでまわっていた。
当然、怪しい、チャンスの話だとつぶさに思い、あちら側から、職業安定所の方へ、相次いで電話をかけようとしていた動きがあっていた。
そんな怪しい動きを、何も知らない昔の会社側は――

『――あんた、今、どっちの味方ね!?』
『完全にこっち側ですね……。今勝っている方に乗り継いでいますね……。横の職員さんからも、いいって』
えっ!?
『……』
その真偽は不明……。
少なくとも、守護霊の彼女(あたし)もお兄ちゃんも認めていない。
あなたは、昔からミシマさんと2人で詐欺共謀を犯し、グルだったんでしょ?
そうした連れ合いの話からは、切っても切れないんだからね?
罪には、罰で償ってもらうわよ。
『あんた最初は、あの子側じゃなくて、『こっち側』じゃなかったとね!? なんね!? 途中で乗り換える気ね!? あんたそんな尻の軽い女ね!?』
『ハァ……人聞きの悪い……。そんな事があってただなんてこっちは知らないわ……! あたしはここの職員なんだし、いったい何の話だか……?』
『呆れたァ……!?
こっちはそうしたやり取りを何度もしていて!
あんた達側に、そうして何度もこっちは、お金を払っていたというのに……今更になって白々しい!』
『フンッ! ……ん!?』
鼻で笑うヨシュディアエ(あたし)がいたのだった。
そうした証拠は何も残していない。
こちらからあちらの方へ、そうした話に詳しい人を回して、契約書を取り交わしたものに過ぎない。
そこには、あたしの明記はない。
それは繋がりの話で、いずれはその線で、あたしに繋がるものだ。
だから、証拠とはとても言えない。
フフフ、考えたものでしょう?
職業安定所の職員である以上、そうした実害報告があっても、何も証拠が残っていないようであれば、それは無に等しいからよ?
ってあれ!? ファウンフォレストさん、あなたいったい何やっているの!?


『――そっちにそうした連絡がいきませんでしたか?』
『連絡……?』
『はい。うちのそうした職員さんが聞いた時には、
あの子のそうした凄い小説の中に、自分の名前が紛れ込んでいたみたいなんですよ!?』
『あぁ、あったな確かに1枚だけ……。凄い悪臭のが……こんな効果説明付きで……』
『やはりそうでしたか……。
そのカード1枚だけに話を結んできたみたいなんですが……!?
私共のそうした職員さん達がいて、その女の話を横で聞いていたみたいなんですが……!?』
『やはりそうでしたか……。
最初に妙にかかってきたときは、なんか怪しい人だなぁ……とこっちは思ってたんですよ……!?
まだそんなカードは、1枚も世の中に出ていないっていうのに……』
『そうですか……』
それは、ヨシュディアエ悪臭ブレスのカードの話だったわ。
ファウンフォレストさんは、向こうの会社の人と話を取り次いでいたようね。
その向こうの会社の人は、こう話していたの。
『変にそっちの職員さんが、自分の名前を持ち出してきて、妙に話を結んでくるから、
こっちは何だか怪しく思えてきて……。
後でもう1回見たら、なんか似てるな~~と思ってたぐらいなんですよ!?』
『やっぱり……そうでしたか……。恥ずかしい話です……うちの職員がそんな事を……』
『いやね、しかも……!!
そんな小説を見てくれる方は少ないって言うのに、
1万人ぐらい見ている中で、それを上にじゃなく、今よりももっと下に取り下げてくださいってものだったんですよ!?
だから、その子のは0人という扱いなんですよ。
しかもなんだか怪しくて、その子の『声真似』なんかをしてきて、あの子も、それでいいとか、なんとか……!?』
『え……!?』
(声真似……!?)
それでウソが通じると?!
その向こうの会社の人は、続けてこう話す。
『妙だな~思ってたんだよ! フツーはそんな事本人からは申し出ませんからね……!
だから、他の誰かからの『軽い悪戯』か何かだと、うちの人達が言ってんですよ!
やっぱり怪しいですね……。それを妬む怪しい連中の線ですよ……!?
どこの世界にも、そーゆう人達は、少なからずいるものなんですよ』
『いるっ!?』
『そりゃそうでしょ!?
そうやって他(た)を蹴落として、成り上がっていく輩も、時には出るものなんです!
……まぁ、いずれはそんな作品も、無理がたたって……。
後で落ちぶれていくものなんですが……。
最初は、みんなで寄り集まって、他に負けないぐらいの、集団でいい作品を手掛けますが……。
なぜか途中で、その身内内で『仲間割れ』が起きて、『締まらない作品』になるものなんです……』
『……』
みんなでやるよりも、1人の方がいいと?
『だから、今この子の小説のように、たった1人で手掛けた方が、先の展開が見えていて、他よりもいいんですよ!
他の作品と違って、あまりブレないし……!
後で自分で気に入らなかったら、そうした調整もし易いですからね!』
『……』
『だから、そういった事ができないものなんですよ、他の作品には……!?
あぁ、やっぱりその反応、やっぱりですか――!?
じゃあ、この小説の中にあるように、その2人は今そこにいるんですね!?』
『え、ええ……』
『あぁだと思いましたよ! 妙に吹き替えの名前が凝ってて、こんなにも生々しいと思ったものですよ!! ……あぁ、だからか――!?』
『!?』
『あんな事があってからは、例の2人、『あの職業訓練校の2人の先生』の話が、うちの中で上がっていたんだ……!?
妙におかしいな――ってこっちは思ってたんですよ!!』
『あぁ、やっぱりですかぁ……。実はその2人、今、刑務所の方へ突き出されていますよ!?
これはそうした問題じゃなく、歴とした事件と言う扱いで、『犯罪』でしたからね……! 『死亡届』も出てるし……』
『突き出されたあの2人がァッ!?
前にこっちにそうした『恐い電話』が掛かってきた時があって……!
妙に『声を荒げる』事があって、『横から』そうした『陰の声を上げてた連中』もいたんですよねェ……。
そうかぁ、やはり『フューチャーウォッチ』だったか……。
おかしいから、途中でこっちから切ったんですよね……。
そうか、あれが捕まったのか……』
『はい……』
危機感知能力を働かせる守護霊の彼女。
(うぅ~ん……まだ現時点では、捕まってはいないような……気配はするんだけど……なぁ!?
警察署にも、そうした繋がりの人達がいて、ロクに証拠がないからね……。
向こうから、取り下げることもできるし……。
ハァ……なんだかなぁ……。
昔やられた人達が、声を挙げれば別なんだけどなぁ……!?)

――とここでヨシュディアエさんの方に返り。
『――今の話、……聞こえてましたよね!?』
『……』
『あなた達のせいですからね!?
今もあの2人はあっちの刑務所に捕まっていて!
私共の知り合いの、そうした息子さんも、危うい立場に立たされているんですからね!! ……どうしてくれるんですか!?』
『……その息子さんは、あなたの親戚付き合いじゃなかね!? そうしたご近所付き合いじゃなかね!? あんたその話、今持ち出すとね!!』
『……ッ』
『見たわよぉ~~あの子の手掛けた小説……!!
あんた達2人、前にもそうやってこんだけのお金を、ふんだくって巻き上げていたんじゃなかね!! どの口が、そんな事言えるとね!?』
『……』
(バレてたか……!? これは、ミシマさんが捕まったら、いよいよもって危ないわね……。
今は、どうにかギリギリのところで、踏み止まられているようだけど……。
今のうちに、あの『未公開のメモ帳』のものを、『完全に根絶やし』にしないと……。
でも、あの子なら、また書きそうだし……。
ホント、どうしたらいいのよぉ~~!?)

質問を投げかけたのは、スバル君にアユミちゃんの2人だったわ。
【――どーゆう事!?】
【ちゃんと説明して!】
【あぁ、それはね……偽電話詐欺事件が起きた折、応対に当たっていたのは、お父様とお母様の2人で】
【たまに抜け落ちで弟君も、出てくる時があったんだけど……】
【昔、ヨシュディアエさんは、こんな悪い事を、顔の見えないTV電話口から、恫喝と恐喝行為を散々働き、騒ぎ立てていたそうよ!?】
【その数は、そのヨシュディアエさんご本人様が言っていて、『40回』ぐらいだったんだって!】
【40ッ!?】
と驚き得る一同。
そこへサファイアリーさんが。
【そうよ! その半分の数の20回でも許されないんだから……ッ!!】
続いて、エメラルティさんが。
【あっそうそう! ヨーシキワーカさんが、アヤさん達を通して見聞きした時の数は、まだ『8回』だったそうよ!】
【それをお父様に、告げたそうよ! 8回ぐらいだって】
とクリスティさんが。
【その後でね……。ヨシュディアエさんがイリヤマ先生がライセン先生の3人が、偽電話詐欺電話口で、散々騒ぎ立てていたんだって】
【その時にね、ポロッと言ったそうよ!】
【ここにいるみんなは、揃って地獄行きだから、その天国みたいな地獄のある場所を、特別に紹介しなさいよってね】
【天国みたいな地獄……!?】
【そんなのあるの……!?】
【どうやらあるみたいよ……。その名を『ペルセポネーガーデン』……!!】
【ペルセポネー……】
【ガーデン……】
【冥王ハデスの妻、ペルセポネー様が所有する特別な場所よ! 神々が定めた法を、自然の摂理に則り、新たに生まれた聖域なんだから!】
【そこでは、死んだ命とそこで新たに生まれた命が、共存し合っているそうよ!】
【そして、先に逝ったイチハ様達が待ってるんだって、そのヨーシキワーカさんが来るのをね】
【【ッ!?】】
ここで強く反応を示したのは、恵ご夫妻のミノルさんとアヤネさんだったわ。
それを見たクリスティさんは。
【あら? どうしたの?】
【いや……】
【何でもないわ……】
【……そう?】
新たな疑問が生じる想いだった……。
クリスティ(あたし)はこう続ける。
【まぁ、どんな人でも、その昔の会社を辞める前に、何らかの悪さをしている場合もあるからね……】
【そこを突いてきたわけよ!?】
【それはモノに当たったり、人間関係の問題だったり、掃除不足だったり、そうした仕事におけるちょっとした問題点をね……】
【だから、裏から昔の会社の人を通じて、その人の悪いところを聞き出しては】
【そこを上手く上手く、『複数回に小分け』しては、『詐欺電話』を通じて、騒ぎ立てていたそうよ!?】
【最初なんかは、どえらいぐらい騒ぎが酷かったんだからね!?】
【まぁ、本人の周りで好き勝手に騒いでいでは、おかしな取次ぎになるように】
【そうしたご家族の方を猜疑心で不安に陥らせては、疑心暗鬼の暗示に陥らせては……】
【散々、面白いぐらいちょろ勝ちしていたらしいんだから!!】
【まぁ、まともな精神力じゃ、保(も)てないでしょうね……!?】
【……】
【……まぁ、途中からお父様の方が、こいつは違うとわかっていて、話す必要はないとばかりに、『自己完結』していたようだけどね……】
【自己……完結……!?】
【え!? え!? どーゆう事!?】
【ええ、特にこの『自己完結』が『重要』で、『伝言ゲーム』のようなやり取りだからね……】
【実は、どうしようもない問題のグループ全員に言える事なのよ!?】
【いちいちあっちは、仕事してるんだから、仕事が終わった頃には、コロッと忘れている場合が、多いんだからね!?】
【だから、自分たちが思っていたよりも、相当無理がある話だったのよ!?】
【グループ全員には、そうした取り次ぎ上の話が、時々、抜けてたんじゃないのかなぁ~!? クスクス――】


『……あっ!?』
『……!?』
それはエアディスプレイ画面の向こうから、その女性の人に歩み寄ってくる人のものだったわ。
当然、この話とも、妙に符合してしまう。
その顔が、伺えないんだから。
その人は、その会社の女性の人に、エアディスプレイ画面を見せるのだった。
それを見た女性の人は――
『――あんた、その口臭がとてつもないぐらい臭いって話じゃなかね!? 今、うちでもそうした話が、周りで広がっているとよ!!』
『今日は朝からもう、それを聞いてます……。
後ろからも、そうした話を陰口で叩かられてて……』
クスクス
『……ッ』
ホントにいい笑い者じゃないの。
口が臭いってさ。
『あんなに小説の中に詳細にまとめてくれたものですから……。こっちとしても、どう怒っていいのかわかりませんけどね……?
まぁ、言ってみれば、あたし1人だけじゃないし……。
ここにいる全員がそうで、その話に不思議と当てはまるものですよ!?
……もちろん、あなたにも?』
『それはあんただけじゃなかね!?』
『違いますね! 朝っぱらからこっちはいい笑いものですよ!』
『どうだか……!』
『……』
ヨシュディアエ悪臭ブレスが、いい笑いものに……ッ。
こんな羞恥心、生まれて初めてだわ……。
今まで、そんな事言われた事ないのに……ッ。
『あたしも見たとよ? その話を聞いてて……何ね、あんた!? 『結婚』の話で、『男を選り好み』する『軽い女』だったとね!?』
『ちょっ!?』
『30万円稼げる男に、一軒家に豪邸ね! それかワンちゃんか猫ちゃんか、ベランダーがあってあなただけの専業主婦ね!?』
『フンッ! その話に付け加えて、
一等地のスゴイ豪邸に、あたしでも乗り回せる高級車の手配ですね! それといい血統書付きの白いワンちゃんを飼いたいですね!』
『ワンちゃんまで飼いたいってアンタ……。
毎日の餌代やらあんたの美容やらファッションまで考えだしたら、いったいいくらぐらいかかるかわからんとよ!?
そんなにお金を稼げる男が、どこの世界にいるとね!?
その子でも無理とよ!!
それぐらいの事ができる男は、ホントに限られていて、『大会社の社長さんぐらいの人』よ!!
最初から夢見るもんじゃなかッ!!』
この話を聞いてて、守護霊の彼女は。
(うんうん……お兄ちゃんでも無理ね……そこまでの力はないし……。何より、付き合った経験もない人だからね!)
デートすらした事がないのは事実だし……。
あの弟に尋ねられた時には、『完全にアウト判定』をもらってたぐらいだからね……)

『フンッ!! それぐらいできないと周りに力を示せないんじゃないですか!!
それぐらいの事を簡単にやってのけないと、あたしぐらいのいい女は手元に納まりませんからね!!!』
『フンッ何をバカバカしか!!
それぐらいできない事は、内心あんたでもわかってるんじゃなかね!?』
『……ハァ……』
と溜息をつく思いのヨシュディアエ。
その溜息音を、向こうで聞いちゃった人は、思わず――
『――あーっ臭々!!』
『!?』
『金にうるさい女の口臭のニオイがこっちまでプンプンとニオうとよ!!!』
『……電話(エアディスプレイ画面)越しですから、そちらにまで臭うわけないじゃないですかー!?』
ピョンピョン
とそんな事ないとばかりに、何度もお怒り加減で、中空で跳ねるエアディスプレイ画面の姿があった……。
エアディスプレイ画面には、そーゆう機能も備わっており、
あちらのAIナビが、そーゆう所作をしたという訳だ。
で、向こうの会社の女性から。
『いやね、今こっちまで、電話口からプンプンと漂ってくるとよ……! あんたスゴイ口臭がクサイじゃなかね……!!
さすが、あの子の言う通り、スゴイ悪臭だわ~ァ! あ~~臭い~ィ!』


☆彡
【ヨシュディアエ悪臭ブレスが生まれた逸話】
過去から現在に返り、アヤネさんが、クリスティさんにこの質問を投げかける。
「――そんなに臭かったの!?」
「イヤね、『ヨシュディアエ悪臭レス』の生まれる逸話ってのがあってね……ククッ」
「!?」
プププ、クスクス、ニヤニヤ
と思わずにやけてしまう美人三姉妹の方々。いったい何が……!?
「???」
これには一同、この不可思議な状況に付いていけず、甚だ疑問を覚える思いで。
「えーと……」
「!」
その困り声をあげたのは、アユミちゃんだったわ。
仕方ないから、あたしはこう答えたの。
「あぁ、この日の後、ヨシュディアエが扱うエアディスプレイ画面から、スゴイ悪臭がプンプンと臭ったんだって!」
「えっ!? え……エアディスプレイ画面から!?」
「なぜそんな事が!?」
同じ女性のアユミちゃん、アヤネさんと驚いていき。
クリスティさんが、それを簡潔にわかりやすく答える。
「簡単よぉ~そんな事は――!」
「「へっ……!?」
「クスッ……エアディスプレイ画面には、『香りセンサー』も備わっているからね!」
「「あっ……!?」」
そう、エアディスプレイ画面には、香りセンサーも備わっている。そんな事は常識だ。
だが、問題は。
「セキュリティーはどうなってるのよ!?」
「そういったところには、警備員がいるはずよ!!」
「アントラローダイトの犯行らしいわよ!」
その2人、アユミちゃんとアヤネさんの意見に応えたのは、サファイアリーさんだったわ。
「「へっ……!?」」
2人は揃って、マヌケ顔をさらすのだった。
そのサファイアリーさんが、続けてこう話す。
「そこのAIナビを脅して、『数100m先にも悪臭が届く、『チオアセトン』に『近い配合成分』をやらかしららしいから……!」
これにはスバル君も。
「いったい昔、何があったんだ……!?」
と疑問を持ち初め、そこをエメラルティさんが。
「あぁ、その後、それを知ったみんなは、一様に、『いい笑い話』だとばかりに笑ってたそうよぉ~!」
「悪臭ブレスが……」
「まさか、まさかの笑い話に……」
「「「「「プッ、アハハハハハッ!!」」」」」
そこには、呵々大笑を挙げる一同がいたのだった……――


★彡
【口臭がクサイと、さすがに好きな異性でもキスもできず……、そうした付き合いの話も、自然と減少傾向にある……】
【『オーム電機口臭チェッカー』で、チェックして、そんな危険は回避しようね】
『――あっ! だからかァあんたの所を見限って、好きでもない男達が逃げ出していくのが多かったのは……!!?』
『えーと……まだ、あの子が、確かにここに着た時は、臭くはなかったと思いますが……。
それはマスクをしていたからでしょう!?
今、あたし達も同じような状態ですから、似たようなものだと思いますが……!?』
『そんなに言うならあんた……』
『!?』
『ちょっとこっちにきて、その口臭のニオイを嗅がせてくれんね!?』
『ちょっ!?』
『あなたがどれぐらい臭いのか!? こっちは今、どれぐらい強いのか気になっているとよ……!?
プレイができないとか封じるとかね!』
『……ッ』
『あぁ、その時、ここに来るときには、『マウスウォッシュ』とかの小さいものは『ダメ』よ!!
もちろん、途中で歯磨きとかは禁止でね。
ちょっとそこで、仕事終わりに、こっちにすぐ着てくれんね!? どれぐらい凄いのか、こっちは気になってるし……!!』
『そんな事言うぐらいなら、こっちはそんな所には行きませんし! 顔だって出しません!!』
臭いんだ……
自覚してたんだ……
よ、ヨシュディアエ……おっお前……ッ。
ちょっとこっちでも臭ってたんだよな……。
前々から気になってたのよね……。
いいところを相手はついてくるよなぁ……。
そんな陰口が聞こえる思いだった……ついでに。
(なぁ、そーゆう機械あったよな?)
(うん……あったとは思うよ……。『オーム電機口臭チェッカー』がね……臭かったよね……あれ……)
(うん……キスは無理……。例え、やっても……口臭を通して、鼻腔からたまらなくなるもんね……)
とここで、守護霊の彼女がテレパシーで通じて。
(たまらずトイレに駆け込んで、もだえ苦しみそう……。絶対にやめてねお兄ちゃん……)
(やらんて……)
(みんなは毎日、健康な歯を護るためにも、歯磨きしようね! 守護霊(あたし)との約束だよ!)

『そんなに言うぐらいなら、いくらか払って下さるんですよね!? こっちはもういい笑い者なんですよ!! ホラッ!!』
プッ、クスクス
ククッ、失礼
さすがにそれはないって、ビシッ、と漫才劇を演じるのだった。
『今の聞きましたか!?』
『プッ……フフフ、それぐらいならまだ、あなたがその肢体(からだ)でいくらか稼げばいいんじゃなかね!?』
『……』
(えええええ……)
あたしは、先方にスルリと躱され、青ざめてしまう……。
これには、隣にいたファウンフォレストさんも、その御かけになっているところも。
『プッ、失礼……』
『クククッ』
これには、ヨシュディアエさんもジト目だ。
(もう、何よ信じられない……ッ!? こんな展開あり~~ィ!?)
でも、でもでもでも、こんな展開許さないとばかりにヨシュディアエ(あたし)は。
『あの……言ってみればあたし、大女優ぐらいあるんですよ!?』
『大女優!? 何言ってとねあんた……!? そんなのどこにも書かれてなかったとよッ!? あんた、そこの職員さんなんやろ!?』
『いやあのぅ……あたしの中では……?!』
それは夢見勝ちの少女にも似た思いだったわ……。
それを阿吽の呼吸で察した向こうの女性の方であっても、さすがに許せないとばかりに。
『あっ……そう……ふ~ん……』
『……』
もう、なんかジト目で晒さられていたわ……。
『そうなんだ……へぇ~! ……ってあんた何々!? へぇ~これを読めて!?』
『!?』
『って何ね!? あんた若い時は、Nカップもあったとね!? 前々から信じられないぐらい大きいって、こっちでも噂になってたけど、その話ホントね!?』
『……フフン』
とここで気分を良くしたヨシュディアエ(あたし)は、背中を椅子に預けるようにして、威張り加減で。
『――まぁ、昔はそれぐらい、あったと思いますねェ!』
ニヤリ
と勝ち誇った笑みを浮かべるヨシュディアエ(あたし)がいたのだった。
『ちょっとそれ、こっちにきて、少しぐらい分けてくれんね!? こっちはあんたと違って、胸が小さいとよ!?』
『あぁ、そうなんですかァ……!? へぇ~! そっちは小さいんだァ』
『……ッッ!! それぐらい大きいなら、そういったところに顔を出して、あんたが稼いだらどうね!?
丁度、AVの話、セクシービデオの話があったとしょ!?
その大きいおっぱいで、大きくなった男のあれを挟んであげたらどうね!? 相手の方は喜ぶじゃなかと!?』
『ちょっ!? そんな事したら、こう胸の谷間が、プンプンと臭うじゃないですかァ!?
こういった職場にも、顔を出せなくなりますよ!?
プンプンと臭いが漂ってきて、ここには、居ても立っても居られなくなりますよ!?
それをわかってて言ってるんですか!? あなた!?』
――そのエアディスプレイ画面の向こうの相手の方は、また、別の人のエアディスプレイ画面を見て、
こう仕掛けてくるのだった。
『――あぁそうなの!? へぇ~。
あなた今、その自慢の大きい胸も、縮んで垂れてしぼんで、見た目的にはIカップに落ち込んでいるじゃなかとね!?
あれ!? それでもまだスゴイ大きいじゃなかね!? もったいなか~~』
『フンッ! 今でもそれぐらいは、結構大きくありますね!!』
ボソッ……
とその電話口から、呟かれた一言は、
ヨーシキワーカ(私)のいる場所からは、聞き取りにくかったが……わからなかったが……。
おそらく、十中八句間違いなく、こうだ。その電話口からは――
『――思い切り凹め』。
だが、こうヨシュディアエさんも切り返してきて。
『いや、それは自然的に無理ですって……』
とやんわり躱すのだった。これには相手の方も。
『じゃあ、手術か何かで……それを小さくして……』
と応対を試みるが……。これにはさすがにヨシュディアエさんであっても、そんなのは、絶対生理的に嫌悪するので、無二の宝物を護るべく。
『なら、こっちはそれをやりませんって……必要もないでしょうし……』
とスルリと躱し。これには相手方も、嘆き半分、妬み半分。
『やっぱり無理かァ……それだけあって、こっちは羨ましか……』
『……』
これには、何とも言えない感じのヨシュディアエさんがいたのだった……。

【国家財産である】
【そんな女性が生まれる確率は、0.1%未満だと言われている】
【国内に、Nカップ女性がいる人口比は、わずか10人前後ぐらいだ】
また、こんな試算もある。
最も多い人口比は、BカップとCカップで、27.0%と27.1%ぐらいだ。
で、Aカップは12.0%、Dカップは17.0%、Eカップは10.4%、Fカップは5.5%。
で、Gカップ以降からはかなり著しく減って0.8%、Hカップ0.2%、Iカップ0.1%……。
で、それ以降からは、1000人1人、1万に1人の割合だとされている。
脂肪太りを除き、ぽっちょり体系とか、容姿端麗の美人さんとくればもう、1億人に1人の割合で、ほんとに一握りなのだ。
まぁ、ヨシュディアエは、罪人の悪人なので、除外するとして……。
如何に、クリスティさん、サファイアリーさん、エメラルティさんの未婚者さんが、地球に残された至宝なのかが良くわかる想いだ。

『どちらにせよ、ミシマさん達(そっち)側にそうした迷惑行為を及ぼしたんですかね……!!
言ってみればこっちは、昔の会社(そっち)側のせいで、とんだ被害を受けたんですからね!!』
『……何でそんな連中に、こっちがこんなに『賠償金』を支払わんばいかんとね!?
こっちはあれを見て知ってるのよ!!
何ねあんた達!! ハッキングして、あの子のを覗き見るだけの『いい趣味』じゃなく……!!
後で保存したものを『編集』したり、後でコッソリ一部分だけを『消去』できるとね……!?
こっちはそんな事すら知らなかったとよッ!! 『ロクでもない連中』じゃなか……!!』
『フンッ!! どちらにせよ……!
こちらは、そうしたとんだ被害を受けたんですから、後で支払ってもらいます!
今、そちらに『遣いの者』を走らせていますので……!』
『こんな悪どい連中に頼んのだが、そもそものあの2人の間違いだったわ……』
『フンッ!! そちらの者がつき次第、そちらで手続きを取ってください! こっちはそうした能力がある頼もしい人材の方が控えていますからね……!!』
『なんで……あの子を再び、うちに呼びこみたいだけとに……!
こうも簡単に行かずに……こうも、信じられないほどお金が出て行くとね……!? ホンに信じられんよ……!?』
もう嘆きたい思いの向こうの会社の人がいたのだった。
これには、ヨシュディアエさんも、これはもう仕方がないとばかりに、あっちの人に諦めてもらうべく。
『……あの子を、誘おうとした話は、もういい加減に諦めてください……。こっちにもそうした被害が続出していて、これ以上続ければ……どうなるかわかりません』
『あの子、あと1か月ぐらいしたら、こっちがそうして心待ちにしていた1番の稼ぎ時を、台無しにしてくれたとよ……!?
こっちに何の怨みがあるとね……。……あの子の考えている事がわからん……』

とここで守護霊の彼女が。
(まぁ、確かにそうだよねぇ……。
会社の人達は知らないようだけど……こんな騒ぎが起こっている以上は、あの会社には何かがあるぞとばかりに……。
周りで、変な話が上がってたんだからね……!?
せっかく美味しいケーキを作っても、いっぱい産廃しちゃったら……赤字だけしか残らないし……。
そんなのスゴイもったいないし……。何より、原材料さん達も可哀想……――
……。
それなら経営路線を、一時変更して、確実に売れるようにした方が、まだ黒字転換できるんだし……。……まぁ、無理かな……!?
チーズケーキとかは、確実に売れ残るもの筆頭だし……。
クリスマスケーキ期間中に、30%オフとか、50%オフの半額セールを開けば、まだ売れるんだけどなぁ……!?
ほとんどのみんなは知らないけどさ、あそこには『試食用』に作っているケーキがあって、『ブルーベリーケーキ』って言うんだけど……。
それを『蔵出し』にすれば、まだそうした望みに繋がるんじゃないかなぁ~!?
募集をかけたアルバイトさん達の呼びかけの噂もあれば、まだそうした『社内販売』の方で、確実に『黒字転換』できるよぉ~!?
まっ、言っても聞こえないかなぁ?)
ふよふよ
そこには宙に浮いている守護霊の彼女がいたのだった。

――ヨシュディアエさん達の話は、こう続いていた。
『――ですから、以前そちらにお送りした2人に代わって、こちらからも新たに2人、そちらにお送りしましたよね?』
『……』
『……その後、どうなりましたか?』
『もう辞めて行ったわよその2人も、早々と……何でか……!?』
『えっ!? 何でですか!?』
『そんなのわからないわよ……何の不満があるんだか……!?
あの子はまだそうして、こっちにいた時には、たった2人抜けた時期があっても、
ここまでの被害の落ち込みようがなかったというのに……!!?
例年にないほどの、被害の落ち込みようだわ……こっちは……ッ!?』
『……ッ!! もっと人を大事に扱ってください!!』
『そうは言うけど、やっぱりあの子じゃないと無理よ!!!
今も現場の人達が頑張っているけど、誰もが同じ意見で、あの子に振り向いてもらわないとダメだって!!
……ねえ、そちらで何とかなんないの!?
こっちはそうしたお願いを何度も出してて、こんなにも積んだでしょ!?』

質問を投げかけたのは、アユミちゃん。
ナレーションの語り手は、エメラルティさん。
【ねえ、お金を積んだって?】
【あぁ、詐欺グループの連中繋がりよ……。残念だけど、ヨーシキワーカさんのまだ未公開のメモ帳を見て】
【先に向こうが散々と言っていいほど、手柄を上げていたんだからね!】
【ご本人様の方に、まだそうした連絡を回していないから、お金の独り占めみたいなもの……と見ていいわ!】
とここでサファイアリーさんが。
【そんな連中を信じて、頼ったが上に、こうした哀しい悲劇を被ったのよ……! 要はそうした力の使い方を間違えた訳……】
【『会社を潰した』のは、『そいつ等』よ……――】

――その犯人一味の1人、ヨシュディアエさんはこう言い繕っていた。
『――……無理です……いい加減に諦めてください……。またそちらに、いい人材を2人、後でお送りしますから、今度こそ大切に扱ってください』
『あぁ……もう何でよォ!? こんな簡単な事だってのに、何であの子だけが、こうも手に入らないのよぉ……!?』
『こちらからはもう、そちらに希望求人を送りません……。
あたしも、今回の事があって、揉み消しきれなくなって……ここを出て行くことになって……。……その責任を取ってくださいね!?』
『あんたそればかりやね!! 何ねそんなに金が欲しいとね!?
あの子は、まだそうして、こっちにそうしたお願いの申請をしたことは、『少なか』よ!!
あんた、いったい幾ら、どれぐらい欲しいとね!?』
ボソッ……
と小さな声で呟くヨシュディアエさん。
『まぁ、年俸は300万以上ぐらいですかね……』
『1か月30万!? そんなに大金払ってくれるところ、どこをさがしても中々なかよ!!
うちであんたみたいな危ない女を雇うだなんて、それは無理ッ!!』
カァッ
とそう言われて、顔面真っ赤になるヨシュディアエさんがいたのだった。
それぐらいなら――
『――別にあなた達みたいな低いところで雇ってもらわなくても、こっちは結構です!!! 他を当りますからねッ!!』
と断言の意を宣告するのだった……。
それは等しくまるで、自身の死刑判決にも似たものであった。
それを聞いてしまった相手方の女性は――
『――言ったわね……今の言葉、後悔するんじゃなかよ!?』
『フン、どうだか』
『こっちで後で、そうした話があったって事を、周りの人達を通して、周りの会社に取り次いでまわるけんね!!』
ギョッ
と死んだ魚のような眼を、一瞬でもしてしまったヨシュディアエさんは、原状回復のために務めるのだった。
『ちょっちょっと! それは待ってください!!』
『は?』
『言ってみれば、今回はそうした『問題の不手際』があったからなんじゃないですか!?』
『……』
『……ねっ!?』

ナレーションの語り手は、クリスティさん
【――そうした交渉事を持ち掛けたそうよ】
【それはまるで、『パンドラの箱』のように……】
【それは決して開けてはならないものなの、ヨシュディアエは、そうした禁を破ろうとしたの】
【それは等しく、この世界に絶望をもたらせるものであって】
【でもね、その中にはたった1つだけ、希望が入っていたの】
【ヨシュディアエは、そうした希望すら、無きものにしようとしていたのよ……――】

『――あの子が今回、そうした失敗をしていったからこそ、ここまでこうした事態が長引いたんですよ?
こんな奇跡は、そうそう起こりませんよ。……ねっ!?』
『それも、あの子の手掛けた小説のせいで、あんた達でも、今のように使い難くなったんじゃなかね!?』
『……あと少しだけの期間だと思います……』
エアディスプレイ画面の向こうの相手の女性の方は、ヨシュディアエさんの今の心境の変化を、こう読み解いていく。
(それはあなただけのね……残りの年期でしょ?
何? それで勝負をかけるつもり? 信じられないわね……。まだそんなに自分が可愛いのかしら?)

ナレーションの語り手は、ヨーシキワーカ。
【――詐欺幇助の女ヨシュディアエ】
【それはもう周り中で、詐欺を手助けしていた職業安定所の美人職員である事が、触れ回っていた】
【もう言い逃れができない……】
【昔、そうやって騙されていた人達がいて、一様にそうした声を上げていたからだ】
【それを後押しした人物は、他ならない、ヨーシキワーカーー】
【……】
【理想の虚実と馬鹿げた愚者の道との諍(いさか)いだった……】
【卓越した優秀な能力を持った人でも、時にその道を誤り、奈落の底へ堕ちていく事がある……】
【たった1人の愚か者がまいた種が芽吹き、数年の時間をかけ、芽が咲き、生い茂っていき、花を咲かせる】
【まだ未成熟の実だ】
【それを誤って取ってしまった女達は、間違った方法を取ってしまった】
【それは、人の道を踏み外したものだった……】
【そう、彼女等は等しく、自滅の道を辿ったのだった――】

『今度こそ、そちらで上手くやってくださいね……?
あの子のようにそうした『現場』を万が一にも『見られない』ようにして、その『問題』を上手く『隠して』ください!
……後はこちらでやりますから!』
『なんねあんた達……まだこんな事『続ける気』ね!?』
もう、ホントに信じられないわ。
もしも、これをあの子が見ていて、これをあの小説の中に残したら、今度こそ終わりだわ……ッ
なのに、何も知らないこの女は、まだ勝つ気でいた。
そんなに勝って、まだそうした紛いモノの命とお金を得たいのあなた?
周りから殺されるわよッ。
『フンッ!! 今度こそ、『できのいい問題』を期待していますよ!!』
『呆れたァ……。こっちはそうした問題を、何も好きでやっているみたいに聞こえるじゃなかね!?』
『フン、今度こそ上手く行く自信があります!
あなた達さえ、上手く問題を、『周りの人達』に『バレない』ようにして、『隠す通す』事さえ、できればねぇ!?』
『そんなに何も、上手く証拠を隠し通せるようなところは、ここには少なかとよ……!?
あんなに頭のいいあの子でも、どうやっても『2,3年かかった』のを、もう『忘れた』と……!?
こんな事、そうそうこっちもできんとよ!! ……自ら首を絞めるようなものやからね!?』
(それを唆してきたグループは、あなた達繋がりだわ……!!
まだ『若い人たち』が、『出世のチャンス話』を、『ワザと作ろう』として……。 ……だから、こんな事に……ッ!!?)
それは後悔の怨嗟にも似た思いだったわ……。
(でも、あたし達も同じか……ッッ!!)
そこにはやり切れない思い、葛藤と歴史があった。
まともな方法では、やってはいけないのが、この厳しい世の中には、確かにあるのだから……ッ。
そう、思わずにはいられない、エアディスプレイ画面の向こうに見える女性の方がいた。
その人に対し、そんな奇跡はそうそう続かないとばかりに、この厳しい世の中の事を示唆するヨシュディアエがいた。
『あんなに事態が長引いて、こんな奇跡はそうそう起こりませんって!! こんな小説まで残してね……。
フツーの人は、決してそんな事はできませんって!!
後で気づいたら、こちらでも勝手に『それ』を『揉み消し』ます……。……それはわかってるでしょ!?』
『……』
『クスッ、『遣いの人』や『誰かそうしたご家族の方』を『騙して』でもね……?!
だから、今後そうした『奇跡』は、『2度』とは『起こりません』って!!
だから、そちらも、もっと自信を持って……ね!?』
『……うちの職員さん達も、あんな事が前にあってからか……以前と比べて給料が下がってしまったとよ……。
そのせいで正社員枠から落とされた子もおって……。
あの子のいたところに回されるぐらいなら、
こっちからこんな会社辞めてやるって、出てきた子もおった時には……、こっちもその対応に困ったとよ……!?
今は大丈夫やけど……。
もうこれ以上、正社員枠が減ったら、会社としてはもう機能しなくなるけんね……』
『まぁ……!』
『それをわかってて言ってると……!?
こっちは何も、それを好きでやっているような会社(ところ)じゃなかとよ!?
『どう言った経緯からか』それはわからないけども……それは『昔からの繋がり』や、『流れ』もあって、
それをあんた達の『仕掛けた』『問題行為』もあって、それが今回『偶然にも重なって』、
こんなにお金を包んでくれてていたからこそ、こんなになるまで、こっちはそうした手を尽くしていたとよ……?
それが何ね……こんなになるまで騙し盗られて……ッ!!』
『心中お察しします……』
『あなた、それよく言える立場ね……!?』
『……』
結局つまるところ、どっちもどっちで悪かった……。
関わるべきではない。
『こんな事になるなら、あなたなんかに頼むんじゃなかった……。
あの子と付き合っている『恋愛対象の恋人さん』って話も、あながちあの『ミシマさん辺り』がついた『嘘』なんやろ……!?』
『……』
『よくもそれで今まで騙し通してきたものね……ッ!?』
『……』
あたしは、今、心の内でこう思う。
(それは今まで、『散々使っていた手』だったわ……。
あたしは若い時から、周りですごいモテててたから、チヤホヤされていたから。
周りも羨ましがるほどの凄いボインだったから、
鼻の下を伸ばした男達が、言い寄ってきた事があったわ。
……。
すごい気分がいい。
いつしか自分が、この世の中で、特別な存在なんだと思い込んでいたものだわ……。
それは肢体(たい)に現れていた……。
ミシマさんとは、昔から知り合いで、そうした相談事を持ち掛けられていては、
良く、そうした男達のホントの値打ちを確かめていたわ。
値踏みを踏んでいたの。
けど、誰1人として、あたしの隣に立てるほどの理想の人物がいなかった……。
それは、あの子にしてもそう……。
勇の心を持ち合わせていないから……。
また、そうした現場経験を積んでなかったから、奇しくもあたしは、そうした人材を、自分よりも下に見立てて、低いところに回していた……。
詰まるところ、それを犯してしまった所業は、いつしか、自分の身にも跳ね返ってくるものだったわ……)
気分が落ち込み、焦燥の思いのあたしがいた。
(あの頃に戻りたい……ッ!!)
だが、それはできない相談で、ただ時間とは無情にも等しく、ただ前にしか進まない。
あたし達は、その世の中で、生きて行かなきゃならないの。
そう、これは試練ッ。
『フゥ……ッッ!!』
ビクッ
だが、現実は無情にも等しく、あたしのそうした希望と夢と期待を、折ろうとしていた。
『あの時は、あの子の担当の職員さんだったからこそ、
後で、あの子の担当の職員さんが、別の人だって気づいた時には、そっちに、まだ、頼んでおけば良かったと……後悔してる……!』
『……』
後悔か……。でもね……。
『……まだその時には、その職員さんは、こちらには見えておりませんでしたよ?』
『わかってる……ッ!』
それは、もう聞いたわ。
『今度こそ、『できのいい問題』を『仕掛ける』事を、こっちは期待していますからね!?』
『……』
『今度こそ大丈夫です!
後でそれに気づいたら、『こっちで勝手に取り外します』からね。……それならそちらでも、まぁ大丈夫でしょ!?』
『……えっ……!? 何か『ロクでもない結果になる』ような気が……!?
ヨーシキワーカ君の2、3年間、それに関わっていて……。
一向にあれに気づかなくて、知らなかった事もあるし……。それでここまで2,3年間就職難になって……!?』
『……』
それを見た守護霊の彼女は。
(恐ろしい話……ッ!!
こんなの誰でもそうだけど、まるで知らないなら、無理・無茶・無謀よッ! 絶対に馬鹿げてるッ!!
自ら、断頭台に進み、その首に、括ったロープの輪を引っかけて、
自分から飛び降りて、自殺しに行くようなものだわッ!!!)
闇夜の中、暗いくらい深き穴が待ち構えていた。
ブラブラと揺れる人だった肉の肢体、穴がその人物が、落ちてくるのを、ただジッと黙って待っていた――
『い、いったい今度はどんな方法を!? 闇子(あっち)の子が仕掛けてきて……ッ!?
ま、まるでこっちが、好きでこんな問題を仕掛けてくるような会社に、聞こえてくるみたいじゃないですか――!?』
『あら~何言ってるんですかぁ!? 実際に『前々から』こうしてやってきた『仲』じゃないですかァ~!?』
『あんたそれ、良く言える立場ね……!? ウチがこんなになるまで……!?』
フッ……
と怪しいほくそ笑みを浮かべるヨシュディアエがいた。
彼女は、こう続ける。
『……また、うちもそうした被害を被っている『仲』ですからねェ……!?』
『……』
仲良くやりません? 今度こそ?
『……次こそそうした問題を仕掛け、後はこちらで勝手に成功して、……入れて見せます』
『……』
ご覧に……とは言い切れないようね……。それだけの自信がないという事か。……でも、万が一の場合もあるし……。
彼女は、こう続けたわ。
『後で、その人達の『仕送り金』をそちらにもお送りします……。……それなら許してくれるでしょ!?』
『確かに前にも、そーゆう事があって、うちの子達が包んでくれたお金に喜んでくれてた事があったけども……』
『……フッ、そうですね……。確かに以前にもそーゆう事があって、『何回も成功してた』じゃないですかァー!?』
笑う哂う嗤うヨシュディアエさん。
これには相手の方も、肝が冷える思いだった……。
『……』

スバル君が質問を投げかけてきて、その流れで相槌を打つのがアユミちゃんだったわ。
ナレーションの語り手は、クリスティさん。
【――ちょっと待って、仕送り金って?】
【包んでくれるお金じゃないよね? 一時金じゃないだろうし……】
【そうだよね……】
【うん……】
と意外に鋭い子供達がいて。
これにはクリスティ(あたし)も。
【それは後で言うわ――】
と前もって、宣告しておくのだった。


★彡
【奇跡を起こしたのは、何も偶然ではない】
【悲劇を被った方々が、その泣けなしの金でノート(手記)を取り、また人伝手を経て話し、それがどこかの誰かに繋がっていく】
【それは希望であり、願いにも似た祈り】
【嘆きと怒りの仮面を被ったアヤが、ヨーシキワーカに託し】
【また、自身がそうした折、どうしようもない問題に関わり】
【たった1つの望みを託すため、小説の中に記す】
【それはまるで、パンドラの箱のようで、この世に満ちていた絶望を止める、抑止力にも似た一筋の希望だった――】
『――あんな奇跡は、そうそう何度も起こりませんって……! 出来のいいマグレもいいところです……!
そもそもそんな証拠すら、何も残させていませんしね……』
『……』
『ほら? あの子だって、一度だってその場に現れていないでしょ!?』
『あっ……』
そうだ、一度も現れてはいない……。そうした証拠が何も残されてはいない……。
知っているのは、あの子のお父さんとお母さんだけだ。
そして、弟君だけ。
ホントにそうか? 何か大事な事を忘れているような……。
『クスッ、だから大丈夫なんですよ! 騙されていたとも知らずに……。
これはそうした問題なんだと、『講義の場』で投げかけていたんですからね!?
後で、また、そうした『やり口』を『変えて』いけばいいだけ……!
だから、そうした証拠は何も残されていない……。
ほら? 上手くやっていけてるものでしょ!?』
『……』
『これから先もね……! こんなに『金まわりのいい話』は、『他にありません』からね!? そちらにとっても、悪い話じゃないでしょ!?』
『……』
『フフッ、だからどうか、あたし1人だけでも、許してください……』

(それが交渉条件ね?)
と告げる守護霊の彼女。
とここで黒い靄(もや)みたいなものが。
(オオオオオ……)
(確かに、このヨシュディアエさん1人だけ見逃せば、このどうしようもない問題を通して、そうした金回りのいいやり取りを、存続できる。
けど、ヨシュディアエさんが捕まれば、あそこで事情聴取を受け、こっちまでそうした被害が及びかねない……)
(……)
これはそうした交渉事にも見えたわね……意外に賢いみたいね……。
あっちには、何かといい人材が揃っているし、そうした優秀な人たちが、後に控えている……。
これは乗るか? それとも反るか?)
とここで、黒い靄(もや)の方が。
(オオオオオ……。昔から職業安定所には、そうした人材が繋がっているぞ!?)
(それを言ってしまえば、終わりだよぉ~……)

『……あんた、その言葉を信じる根拠がどこにあるとね!? 今あった事を、他のみんなのところにも、こっちは取り次いでまわるけんね……!?』
『……』
『……その話、忘れるんじゃなかとよ!?』
『……じゃ』
『あっ、ちょっと待って!? 今あの子が、横にいるかもしれないんでしょ!? どうか声だけでも聞かせて!?』
『ここからずいぶんと離れてますね……5人分ほど空いてね』
『あっ……』
そもそも無理だった。
そうした声は、届き難い……。
『それじゃ……』
フッ……
と中空に浮いているエアディスプレイ画面がブラックアウトし、その中空から消え去るのだった――

とここで、ファウンフォレストさんが。
『――今の話聞きましたか!?』
『あぁ、そーゆう女だったんだな……!? こっちでも聞いてた職員さんたちがいて、
電話で取り次いでまわって、その女の外から、周りを取り囲むようにする!!
こんな話、もしもこっちまで被害が及んだら、たまったものじゃないッッッ!!!』
『あたしもそう思います! ……では、そちらでもお願いしますね!』
『あぁ、わかった! 少し時間はかかるが……その女がどうなったのか、後で聞かせてくれ!?』
『わかりました!』
フッ……
と中空に浮いているエアディスプレイ画面がブラックアウトし、その中空から消え去るのだった――

とここで、ヨシュディアエさんの方でも、こっちがそうした意図した動きを見せていない事に、腹を立てて、その声を荒げるのだった。
ガオッ
と食って掛かり、まるで、死肉をあさるハイエナのような顔で。
『ちょっと!! ファウンフォレストさん!! 今の電話先どこねッ!?』
『? ハァ……何のこと~?』
『しらばってくれる気ね!!? あんたそーゆう女だったとね!!?』
『……』
ツーン……
と向こうの明日を向く、ファウンフォレストさんがいたのだった……
『こっちは何度もどうしようもないぐらい負けてるとよ!!!
それにあんた、去年にここに着たばかりの新米だって事忘れてるんでしょうが!!!
あたしが何度もあなたに、物事を教えていた事、もう忘れたとね!!?』
(フッ……見え見えよヨシュディアエ、あなた最後には、あたしまで裏切る気なんでしょ!?
あたしの前に、ここを辞めて行った人と、まったく同じ方法を使ってね。
そうは問屋が卸さないわよ!?
だから、そうしたやり取りやって、なんとかして、その心に情を訴えかけようとしてるのでしょ!?
見え透いた嘘も、バレバレなんだから……)
『ハッキリしなさいよもうッ!!』
(今までどうしようもないほどの、悪いやり取りを、ここで見ていたんだからね……!?
そうした職員さん同士の声の掛け合いもあって、
今、あたしは、どっちに付くべきなのか明白だったわ……!
ヨーシキワーカ君にも、そして、あなたにも付かない!!
あたしは、職業安定所職員として、その職にプライドを持ってやるだけ、それが仕事におけるプロフェッショナル精神よ!
……だったわよね!? ヨーシキワーカ君!?)
『ハァ……こんな女なんかと一緒に、同じ仕事場なんかで働けませんね……』
『あんた、それが本性ね……!?』
(しこたま怯えるヨシュディアエ(あたし)がいたわ……。
もう勝負は、完全についていたのかもしれない……。
もしかして、完全にあたしの負け……!?
誰に負けたのよぉ~あたしぃ~……!?
ヨーシキワーカ君じゃないし!? えっ、じゃあ、いったい誰に……!?)

守護霊の彼女は、心の中でこう思う。
(それは周りの助け合いの輪よ……ヨシュディアエ。
あなたは姑息にも、ミシマさん達と共謀し、人を騙しお金を得ていただけ……。
お兄ちゃんとあたしはそうじゃなく、自分が持っている情報を、周りの人達に話し、またはそれを小説に書き、それを教えただけ。
それを受け取った周りの人達が、どっちが正しいのかと判断し、助け合いの手を差し伸べた。
そう、お兄ちゃんとあたしは、そうした判断を、周りのみんなに委ねたのよ)

『フッ……』
と勝った笑みを浮かべるファウンフォレストさん。
その人に食って掛かる感じのヨシュディアエさん。
『今の電話先、いったいどこね!? あたしの方からかけ直して、一言言ってあげるわ!!』
『さあ、どこだったかしら~? あたし、身に覚えがないんだけどなぁ~!?』
『いいわ、さっきのやり取りの中で、いったいどこなのか薄々は勘づいてるんだからね!』
『フ~ン……今からあなたなんかが、間に合うのかな~!?』
『グッ……そんなのやって見なきゃわかんないでしょうが!?』
完全に手遅れだった……。
仮にもしも、こちらから電話をかけても、それは1人だけの応対で、その間に情報が出回る。
そうした部署に、人員が多いだろうから、それが成り立つの。
しかも、1番最悪なのが、そういった込み入った会話でも、そちらで聞き耳を立てている人達がいて、より一層、この首に縄が締まるほどだったわ

――で、所変わって、ヨーシキワーカサイドでは。
『――で、今君は、あっち側の人達の声、聞こえていたのかい?』
『……』
『あぁ、これは無理だな……。ここから結構離れていて、5,6人ほど人を挟んでいるし……。
今こっちでも聞いていた、俺の方でも、所々しか聞こえてこなかったしな……。
全部は無理か……!
こんだけ離れていれば、どうあっても聞こえないぞ……! ……仕方ない、俺の方から、後で何とかしてやってみるか……!?』
まぁ、何とかしてしてくれようとする動きがあったんだ。
その後、自分は自宅に帰り、今日あった出来事を、そのメモ帳の中に記すようになる。
その時の、私の心境が、どうだったかと言えば……。
(まぁ、無理……。どれだけ後で補完できるかが勝負の分かれ目になりそう……。40から60%できれば、上々か……!?)
結果は、上々だった
ありがとう、守護霊の彼女(チア)――

TO BE CONTINUD……


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