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第二話 魂に語りかける者

 一八四年、中華各地で黄巾賊の猛威に曝されていた。

 その頃、三年間による邪霊、鄧艾からの呪縛から開放された関羽はこれからの事を考えていた。

「確かに鄧艾の知識では、俺は劉備(りゅうび)に仕えて義兄弟になっていたが、実際は民や家族の事を考え無い卑劣漢で漢中王になってからは(かん)復興など無かった。曹操(そうそう)は厚遇してくれたが、冷酷な乱世の奸雄で、騙し討ちをして俺を殺した孫権(そんけん)は論外だ! 他の群雄も話しならない。俺は何処に仕えるか? いっそ俺が義勇軍集めた方が良いのではないか?」

 と悩んでいると、頭に? 否! 魂に語り掛けて来たものがいた。

「関羽よ……」

「俺に語りかける者は誰だ!」

「我が名は鄧艾。だが、関羽よ、安心するが良い。我に今は邪心は無い。そなたに献策をする為だけの存在となった」

「俺や民草を散々苦しめた事は許さん! 出て行け鄧艾!」

「罪滅ぼしに献策をしよう……。まずは黄巾賊討伐よりもある姫君を妻にし、その父親の領地、財力、兵力を我物にするのだ。敵は黄巾賊ばかりではない。匈奴(きょうど)鮮卑(せんぴ)烏桓(うがん)といった異民族、そして、今の皇帝が病で亡くなれば中華各地の群雄達という強敵もいる。我の献策は役に立つと思うぞ」

「ならば何処の姫君を妻にする? その策とは?」

并州(へいしゅう)の有力豪族の厳氏(げんし)に仕え、その一人娘である姫君、厳桃(げんとう)を妻にし、全てを継ぎ得よ。かの厳氏は常々、河北一の漢に姫君の婿にすると公言しておる。それに身分を問わない実力主義だ」

 



 こうして、冀州の西にある并州に赴き、厳氏の屋敷に向かい、門番に仕官の申し出を話すと、関羽の三年間の悪名は届いており、賞金首となっていたが、興味があるらしく採用試験をするらしい。

 試験内容は厳氏の精兵に何人勝てるか?

 関羽はある提案をした。

「厳氏様。賞金首であるこの関羽に仕官採用の機会を頂き有り難き幸せ! 期待に応える為、一人一人相手をするのは面倒だ。千人纏めて掛かって来い」

 提案を聞いた四十代後半で覇気のある当主の厳氏は関羽を値踏みして。

「面白い。やってみよ。もし千人勝てたなら一騎当千の称号にあった褒美として、千人長の地位と儂の一人娘厳桃(げんとう)を妻として与えよう。」

 すると精兵達は。

「俺達を舐めるな若造!」

「肉片に変えてやるわ!」

 と騒ぎ立てる。

 そして、関羽対精兵千人との試合が始まった。

 精兵達は槍や(ほこ)を武器とし、関羽は何と! 素手である。

「始め!」

 精兵達は槍で突いたり、矛で薙いだりして襲い掛かったが、関羽は巧みに交わし、拳や蹴り、投技、体当たりを使い、傷一つ負わず全員を倒した。

「見事だ関羽。約束通り千人長の地位と儂の一人娘、厳桃を与えて婚姻を許す」

 こうして、関羽二十二歳? と厳桃十六歳は婚姻した。

 厳桃は桃の様な乳と尻をしており、美しい美少女であった。

 こうして将来、関羽は厳桃を妻にした結果、厳氏の領地、精兵七千人、馬二千頭、軍糧三万石、金三千枚等を得る事になる。




 厳桃を妻にした祝いを并州全土に知らしめ、更に資金を集める策はないか? 魂に潜む鄧艾に尋ねると。

「ならば、婚礼の祝いとして民から銭を祝儀を貰え。良い策がある」

「その策とは?」

「領地にて銭で買わせる富くじを行い、抽選で銭や物を商品として与えれば良い」

「なる程、富くじか……。その場で買わせ抽選を発表すれば不正は免れる。民は欲に駆られ買うという事か……」

「そうだ」


 最初は富くじを婚礼祝いとして行うが、民から更に嘆願があり、十日に一回開催して売りさばき、民達は一喜一憂した。

「当たりだ銭が貰えるぞ」

「外れだ。次回はもっと買って大金を当ててやる」

 と、大盛況であった。

 数年の後に并州を得るのと同等以上の莫大な富を得るはずであった。

 だが……。
 




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