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第36話「ポイズン、サンダー、ブラッド」

「さて……いくわよ……」

翡翠はそう言うと、右手を前に振り、匙守音達目掛けて勢いよく毒液を飛ばした。すると匙守音と白鳥は左右にそれぞれジャンプして毒液を避けた。そして地面に着地した瞬間に、今度は2人が同時に攻撃を仕掛けてきた。まず動いたのは匙守音。匙守音は右手を翡翠の方へと向けた。するとそこから1000万ボルトはありそうな強烈そうな雷がバチバチと発生し、翡翠の元へと飛んでいった。

「フン……こんなもの……」

そう言うと翡翠は右手に毒液を集め、それを盾の様に
変化させた。そしてそのまま向かってくる雷を受け止めた。

「うっそ……!あれを防ぐの……!?」

驚いた匙守音。そして翡翠は毒液の盾を解除すると、今度は毒液で槍を作り出し、それを匙守音目掛けて飛ばした。

「くっ……!」

向かってくる毒液の槍を、匙守音は即座に雷で作った剣で弾いた。翡翠は自分の毒槍が弾かれたのを確認すると、今度は左手を白鳥の方へ向けた。すると各指先から物凄いスピードで無数の毒液の弾丸の様な物が飛び出した。

「ッッ!!!」

突然の攻撃に白鳥は驚いた。そして彼女は咄嗟に自身の血を使って壁を生成し、飛んできた毒液の弾丸を防いだ。

「ほ~……なかなかやるわね」

白鳥を褒めた翡翠。

「今度はこっちの番よ!!」

そう言うと白鳥は壁を解除し、右手に持っていた剣を翡翠に向かって振った。すると赤い斬撃が発生し、翡翠目掛けて飛んでいった。それに対して翡翠は、先程の匙守音の攻撃を防いだ時の様に再び毒の盾を生成し、防ごうとした。しかし……。

「ぐっ!?」

何と白鳥の斬撃は毒の盾を軽々と破壊し、そのまま翡翠の体を切り裂いた。切られた箇所から勢いよく出血する翡翠。そして出血している箇所を押さえながら地面に片膝を付けた。

「ぐっ……!!私の盾を破壊するなんて……!!中々の威力ね……!!」

「どうも~」

白鳥は翡翠に軽く会釈すると、続けて匙守音が攻撃を仕掛けてきた。匙守音は右手から雷の槍を生成した。

「これでチェックメイトよ!!」

そう言って匙守音は槍を思いっきり翡翠の右太もも目掛けて投げた。なぜ右太ももに投げたかというと、胸や頭部に当ててしまったら殺してしまうと思ったからである。匙守音と白鳥の目的はあくまで翡翠を生け捕りにして事情聴取をする事なのだ。そして一方で投げられた槍は物凄い速さで飛んでいき、そのまま翡翠の右太ももに突き刺さる……かの様に思えたが。

「甘いわね」

翡翠は左手を槍の方に向け、毒液の塊をこちらに向かって飛んできていた槍目掛けて飛ばした。すると毒液の塊は見事に槍に直撃し、槍は溶けて消滅した。そのため翡翠の右太ももに刺さる事は無かった。そして溶かしたと同時に右手で生成していた毒の剣を匙守音と白鳥目掛けて思いっきり4回程振りかざした。それにより紫色の斬撃が4つ発生し、2人に向かって飛んでいった。すると2人はそれぞれ左と右側にローリングやジャンプをして、その攻撃を避けた。そしてその後匙守音は再び雷の槍を生成し、飛ばす準備をした。それに対して白鳥も先程の様な赤い斬撃を翡翠に向かって飛ばす準備をした。

「みおちん、分かってると思うけど接近戦は絶対にNGよ!」

「ええ!なんせ相手は毒使いですからね!迂闊に近づいて触れられたりでもしたら御陀仏ですもんね!」

そんな2人の会話を聞いていた翡翠はニヤリと笑みを浮かべた。

「中~遠距離からなら無事でいられると思っているのね……私も舐められたものね……」

翡翠がそう呟いた矢先に匙守音は雷の槍を両手から2本、そして白鳥は血の剣から赤色の斬撃を4つ程翡翠目掛けて飛ばしてしてきた。

(あれをこの場に固まったまま全て捌くのは無理ね)

そう思った翡翠は立ち上がり、ダッシュで横に向かって走り出した。結果飛んできた槍やら斬撃やらはその辺に生えていた木々にぶつかり、ドカァァァンッと激しい爆発を起こした。そしてその木々はドシャアーンッと崩れ落ちた。それを見ていた匙守音と白鳥は若干青ざめた表情になった。

「ヤバい!!やっちった!!」

「き、器物損壊罪……!!」

罪悪感に包まれていた匙守音と白鳥。そして2人はここである事に気がつく。翡翠の姿がないという事に。その後匙守音と白鳥が辺りを見渡していると、ふと、近くの茂みの中で何かが動いた。

「ッ!!そこか!!」

匙守音はそう言うや否や、音の聞こえた茂みに向かって落雷を落とした。すると茂みの中から「きゅ~」という鳴き声と共にハクビシンが出てきた。そのハクビシンは匙守音の落雷をマトモに喰らってしまっていたらしく、体からバチバチと音を立てながらピクピクと痙攣してしまっていた。

「ハ、ハクビシンだったの……ごめんなさい……」

「警部、ハクビシンは害獣ですよ、謝る必要なんてありませんよ」

「う、うぅ~ん……そうは言われても……心が傷むわ……」

「別に殺した訳じゃないんだからそんな罪悪感を感じる事なんてないですよ!ほっとけばその内元気になって動ける様になりますって!というか今はそんな事より翡翠ですよ!」

「そ、そうね!そのとおりだわ!」

その後2人は警戒しつつ公園内を歩きながら翡翠を捜索した。

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