第29話「愛しきマイホーム、そして匙守音からの電話」
午後10時過ぎ。新宿警察署から自宅へと着いた焔火はソッコーで風呂場へと入ってシャワーを浴び、パジャマに着替えて歯磨きを済ませるとソッコーで寝室へと行き、ベッドの上にダイブした。
「あ~……やっぱ狭っ苦しい留置部屋と違って我が家のベッドは落ち着くな~……ではお休みなさ~い」
焔火は眠りにつこうとスーッと目を閉じた。するとその数秒後に枕元に置いていたスマホの着信が鳴った。
「くっそ、なんだよ誰だよこんな時間に?」
若干イラつきながらスマホを手に取り、着信画面を見てみると電話の主は匙守音であった。シス姉か……珍しいなこんな時間に……と思いながら焔火は電話に出た。
「もしもし?」
「あ、もしもし焔火?ごめんねこんな夜遅くに」
「いやいや平気、それよりどうしたの?」
「ええ、実はさっき小耳に挟んだんだけど、あなた今日新宿でミュータントと争って警察に捕まって取り調べを受けたんですてっね?」
「ああ~……その事か……はい、全て事実です」
「そう……随分災難だったわね……それよりも捕まった後大丈夫だった?時代錯誤の暴力的な取り調べとか受けなかった?」
「いや、全くなかったよそういうのは、取り調べ担当の刑事さん結構優しい感じの人でさ、今日起こった事全部話したらすぐに帰してくれたよ」
「そう……それならよかった……ところで焔火、ちょっと聞きたい事があるんだけど……いいかしら?」
「聞きたい事?うん、別にいいよ、俺が知ってる事なら何でも話すよ」
「ありがとう、じゃあ早速聞きたいんだけど、今日焔火が争ったミュータントって……五条三っていう名前の男で合ってる?」
「え?う、うん……合ってるけど……それがどうかしたの?」
「……実はあの男、渋谷で28人を昇天させた連続殺人犯だったのよ」
「え?マジで?」
焔火は少し驚いた。
「ええ、街中に設置されていた防犯カメラや殺人現場に残されていた微量な指紋などからアイツを特定してね、その後みおちんと一緒にアイツの事を逮捕するために追ってたのよ」
「へ~……そうだったんだ……あれ?もしかして俺余計な事しちゃった感じ?」
「ん?余計な事?一体何が?」
「いやほら、俺アイツの事追いつめて自爆させちゃったからさ……シス姉的には生け捕りにして詳しい取り調べとかしたかったんじゃないかな~と思って」
「ハハハ、まさか、焔火は全然余計な事なんてしてないわよ、むしろ良い事をしてくれたわ、だってアイツが生きてたらさらに犠牲者が増えてたと思うしね」
「そ、そう……?それなら良いんだけど……」
匙守音の言葉に焔火はホッとし、安堵の表情を浮かべた。
「さて焔火、ここからが本題なんだけどアイツ何か変な事とか言ってなかった?」
「え?変な事?変な事……変な事……?」
「そうね……例えば変なワードとか」
「変なワード……変なワード変なワード……あ!そういえば"殺人ゲーム"がどうたらとか言ってたな……」
「…………」
焔火の発言に匙守音はしばらく沈黙した。
「ん?シス姉?どうしたの?もしもし?もしも~し?」
「……やっぱりそうだったのね」
「え?何が?」
「あ!いえ!なんでもないわ!そうだ!他に何か変な事とか言ってたりした?例えばある人物の名前とか……それから組織っぽい名前とか」
「ん~………ない……かな?」
「そう……分かったわ、ありがとうねこんな夜遅くに、それじゃあお休みなさい、良い夢を」
「うん、お休み~」
2人は通話を終了させた。そしてそれから僅か5秒程で焔火は眠りについた。