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第30話「麗水退院」

「ん~……ご機嫌な朝だ~……」

日曜日の午前6時55分。焔火はスマホのアラームではなく部屋のカーテンの隙間から入り込んだ日差しと外にいた小鳥達のさえずりにより目を覚ました。そしてその後洗顔と朝食と歯磨きを済ませるとリビングのソファーへと座ってテレビを点けた。すると丁度ニュース番組が放送されており、昨日の新宿で起きた自分と五条の争いの事が報道されていた。

「え~、昨日新宿の街中で20代のミュータント男と10代のミュータント少年が争うという事件が起きました。そして20代の男の方の能力により街のあちこちで大爆発が起き、数々の建物などが半壊し、約200人の民間人が重傷を負うという悲惨な事態となりました

それからその後2人は争いの末に10代の少年の方が勝利し、20代の男の方は鼬の最後っ屁として60キロトンの威力の自爆を図ろうとしたようですが、少年が咄嗟に男を空高くに投げつけた事により男は空中で爆散し、街が崩壊するのは防げたとの事です、そしてその後少年は駆けつけてきた新宿警察に連行されて詳しい取り調べを受け、現在は釈放されているとの事です」

テレビに映っていた20代くらいの女性レポーターは新宿の街中でカメラに向かってそう語ると、その後街中を歩いていた人々にインタビューをし始めた。

~今回の事件についてどう思いますか?~

「そうっすね~……マジでクソっすよね、街をこんな滅茶苦茶にして、マジで死ねって感じっすね、あ、もう死んでるか、あ、ついでにもう1人の方も死ねばいいのにって思いますね~、つーか死ね」

そう答えた20代くらいのモヒカン男。

「最悪!!ホント最悪よ~!!私が好きだった喫茶店が半壊して長期営業停止になっちゃったわ~ん!!もう~!!これだからミュータントは嫌いなのよ~!!というわけで死んでちょうだい!!あ!!もう死んでたわね!!南無三!!あ!!それからもう1人のクソガキミュータントも死んでちょうだい!!南無三!!」

そう答えた50代くらいの肥満女。

「マジで不快也……、もう1人の方も大罪だと思う也……なので死すべし……、否、死ね」

そう答えた30代くらいの坊さん風の男。

インタビューに答えた人々は全員五条だけでなく焔火の事も悪く語っていた。

「ぐぬぬ……コイツら……!!俺は街を大爆発の危機から救ったんだぞ!!ちったあ感謝の気持ちとかねぇのかよ!!」

焔火がイライラしながらテレビを観ていると彼のズボンポケットに入っていたスマホの着信が鳴った。

「ん?誰だ?こんな朝早くに」

ポケットからスマホを出し、着信画面を見てみると電話主は現在入院中の麗水であった。焔火はすぐに電話に出た。

「もしもし?」

「あ、もしもし焔火?」

「おう麗水、どうした?」

「へへへん、私今日退院できちゃった~ん」

麗水は嬉々とした感じで焔火にそう伝えた。そしてそれを聞いた焔火は一瞬驚き顔を浮かべ、その後すぐに嬉しそうな顔を浮かべた。

「マジでか?そりゃあ吉報じゃねえか!良かったな!おめでとう!」

焔火は麗水の退院を心から祝った。

「へへへ、ありがと~、というわけでいきなりなんだけどさ~、今日の午後暇?」

「今日の午後?おう、暇暇」

「ホント?じゃあどっか遊び行かない?」

「ああ、いいよ~」

「へへ、決まりね~ん、じゃあとりあえず午後1時に渋谷駅前に集合でいい?」

「はいは~い了解」

「うん、それじゃあまた後でね~」

「あいよ、またな~」

2人は通話を終了させた。

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