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第28話「焔火、取り調べの巻き」

なぜだろう。なぜ街をラクーンシティ滅菌作戦以上の大爆発の危機から救った自分がこんな扱いを受けているんだろう。焔火は新宿警察署に設置されていた留置場の狭い留置部屋の中で仰向けに寝そべりながらそう思っていた。実は彼は五条戦の後に爆発の騒ぎを聞きつけて駆けつけてきた警官達によって新宿爆発事件の重要参考人として詳しい取り調べを行うと言われて連行されていたのだ。そして取り調べの準備ができるまで現在この場所へと入れられていたという訳である。

「取り調べは分かるとして何も留置場にブチ込むこたぁねぇよなぁ~……VIPルームとかねぇのかよ……」

焔火が入れられていた部屋はミュータントの力を封じ込む特殊な電磁波を発生させられていた部屋であった。なのでここでは自慢の炎は出せなかった。とはいえ彼は強靭なフィジカル持ちなのでその気になればこんな部屋など腕力で破壊して脱走できたのだがあえてしなかった。その理由は2つあった。まず1つ目は脱走なんてすれば全国指名手配され、知人や家族に迷惑がかかると思ったから。そして2つ目は、もし天下の警察が高校生如きに脱走なんてされたとなったら彼等の面子を潰してしまい世間からバッシングをされてしまうと思ったからである。

「あ~……何か眠くなってきた……寝よ」

色々と考え事をしている内に焔火は突然強烈な睡魔に襲われ眠ってしまった。するとそれから少し経った頃に、ある1人の女性と1人の男性が留置場内へと入ってきて焔火の入っていた留置部屋の前で立ち止まった。

「少年、起きて」

女性は眠っている焔火に向かってそう呼び掛けた。

「Zzz」

焔火は女性の呼び掛けに全く気づかないくらい熟睡していた。そんな焔火に女性はさらに呼び掛ける。

「少年、起きて、起きてったら」

「……ん?」

焔火は目を覚ました。そして顔を上げるとそこには黒のスーツを着た見知らぬ茶髪ショートヘアの女性と制服姿のM字ハゲの男性が立っていた。

「あの……どちら様達でしょうか?」

焔火は2人にそう尋ねた。

「私はここの刑事課の井河よ、そして隣にいる彼は留置場担当の部時異田(べじいた)君よ」

「ほ~……そんな2人がここに来たという事は俺は遂にここから出られるという事ですか?」

「ええ、そのとおりよ、部時異田君、開けて」

「はい」

井河は部時異田に留置部屋の扉の解錠をさせた。

「やったー、やっと出られるー」

焔火は意気揚々としながら留置部屋から出た。

「意気揚々としてるところ悪いけど、まだ帰れる訳じゃないわよ、この後取り調べがあるから」

「へ~い、分かってますよ」

井河の発言に焔火は若干暗い顔で反応した。

「さて、それじゃあ移動しましょうか」

その後焔火は井河に先導されて取調室へと向かっていった。



「───それじゃあまず始めに伝えておくわ、あなたは無実よ、先程街に設置されていた防犯カメラの解析からあなたが爆発を起こした犯人じゃないって事が証明されたからね」

井河は取調室の席に座りながらキリッとした表情で正面に座っていた焔火にそう伝えた。

「え?防犯カメラ?よく無事でしたね……あんな激しい爆発が起きまくったっていうのに……」

「いえ、壊れてたわ、でも科捜研の方達が頑張って映像データを復旧させてくれたのよ」

「ほえ~……科捜研すごい……さて、それで?無実の俺なんかを取り調べして一体何を聞き出したいんですか?」

「天パ男との詳しい経緯を色々と聞きたいのよ、事件の調書を作成しなきゃいけないから」

「あ~……なるほど、そんじゃ詳しく話していきますよ」

「ええ、お願い」

焔火は彼女に五条との詳しい経緯を話した。



「───なるほど、天パ男が最初にあなたを罵倒してそこから戦いが勃発した訳ね、で、最後は向こうが自爆して終わったと……」

「はい」

「なるほど……分かったわ、ありがとう、これで取り調べは終了よ、お疲れ様でした」

「うい~、お疲れ様で~す、俺もう帰っていいんすよね?」

「ええ、出口まで案内するわ」

「あざっす」

焔火は井河に警察署の出口まで案内され、そこで彼女に彼女に軽い別れの挨拶を交わして自宅へと帰っていった。

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