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魔獣


 全員席に座り、話し合いをしている。



「それで、オオハラさん今回の報酬はどのくらいなのでしょうか?」

デラインは鋭い目で大原を見た。



「そうですね....」

正直、冒険者の一人当たりの人件費がいくらなのか分からない、ローレから銀貨二枚貰っているが、一人当たり銀貨一枚なのか、それとも一枚で複数人を雇えるぐらいなのか....まぁ、ローレはおそらく金持ちだろうから、ここでケチっても意味は無い、よし....。

「一人当たり銀貨二枚ずつの、報酬にしようと思います」

っと言い机に銀貨を並べた。



突然エラが席から立ちだした。

「ぎ、銀貨二枚~!?」

エラは立ったまま自身の手を見て、指で数えている。



「やったね、お兄ちゃん! しばらく贅沢できるよ!」

ルーナは笑顔でデラインを見た。



「あぁ...あああ」

デラインは両手で銀貨一枚を持ち、おかしくなっている様だ。



ミラは銀貨を手に持ちいじりながら、疑心そうな声で喋る。

「ふ~ん、貰えるのは嬉しいけど、何でうちらみたいな低級冒険者にこんなに払うんだい? もしかして、ヤバい系の依頼かい?」

ミラは獲物を狩るような目つきで大原を見る。



低級冒険者? 大原はそう思いミラの手首を見る。そこには銀色で金属製のリストバンド? 的な何かがついているのに気づく。

確か、この世界の冒険者達はこの様にリストバンドで自身の強さを表しているんだっけな? うーん、どうしたものか、本で情報を得ていたが冒険者なんてもう関わることなど無いっと思っていたから、冒険者のルール? 常識? など知らない。

俺はミラの目を見た。これが身に余るほどの報酬ってやつか....。



大原がそんな事を考えていると、エラがミラにつられるように喋り出す。

「そ..そうよ! こんな高い報酬、絶対何かヤバい事よ!」



エラは動揺した目で大原を見る。そして大原の胸倉を掴む。

「あんた! 一体私達に何をさせようとしてるのッ!!」

「あぁ! エラさん、暴力はダメですよ!」



ルーナはエラの腕を掴み、大原から離そうとするが力足りず、エラは微動だにしない。

「お兄ちゃん! 早く正気に戻って助けて!」

「はッ! 妹の助けが聞こえる!」



デラインはルーナの方を見ると何やら揉めているので、焦りながらエラ両肩を掴み、大原から離そうとする。

「エラ! 胸倉を掴むのなら、俺のを掴め!」

「はぁ~!? 何言ってんのよバカ!」

「も~! お兄ちゃんしっかりして!」



大原の胸倉らへんで三人がワチャワチャしている。大原は段々イライラしてきたが顔には出さない。



大原は静かに喋る。

「....護衛です...」

「え?」

三人は止まる。



「自分はいこいの森にある物を取りに行くために、護衛を雇いたかったのです。しかし自分は冒険者など雇った事は無かったので、一人当たりいくら払えばいいのか分からずこの金額になりました。....もし、金額に不満があるのなら変えることも..可能ですが....?」

大原は三人を見ると静かになり、静かに座った。

「いえ....大丈夫です」



大原は服装を直しながら喋る。

「そうですか、では詳しい説明は向かいながら説明しますので、行きましょうか」

「は..はい」

三人はまるで母親に怒られた子供みたいに体をシュンっと、させながら三人同時に返事した。

ミラはその光景を苦笑いしながら見ていた。



大原は立ち、先に歩く。もうこいつらと関わりたくないっと思いながら。







大原達は森の入口に着く。



ここが..いこいの森か....。意外と近くにあるんだな。そう思いながら大原は口を開ける。

「皆さんの情報によると、南側に凶暴化したルベアがいて、そこには討伐隊がいるっと言う事ですね?」

「そうですね~」

デラインのやる気の無い声が聞こえる。



なんとも頼りない奴らだ....。大原はそんな不満を抱えながら喋る。

「では、北側に行きましょう」

「はい!」

ルーナの気合の入った返事が聞こえ、それを合図に全員歩き森の中へと入っていく。





大原は歩きながら考える。

ルベアか、本で見た限りただの大きい熊だったな。普段は大人しく、人に危害など加える事など無いらしいが、たまに凶暴化した魔獣が何処からか現れるらしい。けど、すぐ討伐されるんだとか....。それなら、もう討伐されてるだろうなっと思い。

大原は素材がありそうな場所で止まる。

「ここら辺で探しましょう」

「ほ~い」

デラインはそう言い、ルーナと一緒に草を搔き分け探す。



「なんで私達まで探さないといけないのよぉ....」

エラは不満な声で喋る。



ミラはエラの長い耳元に行きコソコソ話す。

「エラ、こんな大仕事滅多に来ないのよ~....それに追加料金でもう銀貨二枚も、もらえるんだし!」

「う”ぅ”....そうだけどぉ~..」

「なぁに~、なんでそんなに怪しんでるの~」

ミラはコソコソ話を止め、エラの正面に立った。



「だって..ずっと執事の格好してるのおかしくない? しかも表情硬いし、何考えてるか分からないから、気持ち悪いじゃん?」

「気持ち悪いは言いすぎよ~....でもまぁ確かに、こんな危険な時に軽装備で森に来るのはなんか怪しいわね」

「でしょ!?」

二人がそんなことを話していると、しゃがんでいた大原立った。



「少し奥の方に行っていきますね」

「僕らも行きますよ~」

デラインは立ち大原に付いていこうとする。



「いえ、自分一人で大丈夫です。皆さんはここで引き続き探していてください」

「え..でも~....」

ルーナは心配そうに大原を見る。



「いいんじゃない? ルベアはどうせもう討伐されてるだろうから」

ミラ気軽に喋る。



「大原さん何かあったら大声で呼んで下さいね~」

デラインはしゃがみ手を振る。

ルーナは何か言いたそうな顔をデラインに向けた。



「はい、それでは....」

大原はお辞儀をし更に森の奥へと行く。





エラは大原が消えていくのを見守り、緊張から解き放たれた様な声を出した。

「はぁ~、ホント変な人」

そして怒りに満ちた声でデラインに喋りかける。

「デライン! なんであんな変な人を雇い主するのよ! もっとまともそうな人連れてきなさいよ!!」

「うぇ~、見た目はまともそうでしょ~」

「見た目は! ねっ! ....まったく、何? 変人同士惹かれ合うの?」

エラはそう愚痴をこぼす。



「でもまぁ! 実際良い人そうっぽくないですか?」

ルーナは頭を少し傾けて笑顔で喋る。



「えぇ~~?」

エラは否定するかのよな顔をした。



「そうねぇ~、でもそんなことより、私が一番気になるのは何処の執事なのかなぁ~って」

ミラは舌を出したり戻したりした。



「あ! それ私も気になりました!」

「まぁ確かに、でも本当にあんなのが執事なのぉ?」



皆がそんな雑談している中デラインは真面目に作業していて、サボっている仲間に勇気を振り絞って言う。

「者ども、今は仕事中だ、さぁ! 真面目に働こう!」

「はぁ~!? いつもサボってる癖に! なんでこんな変な依頼に本気出してんのよバカ!」

「お兄ちゃんそもそも、この植物? 本当にあるの?」

ルーナは首を傾げた。



「......それは、わからない..」

しばらく沈黙が流れ、ルーナは苦笑いし、エラはため息をし、ミラは植物を探し、それぞれ行動した。







男達の会話が聞こえる。

「くっそぉ~、お~い! そっちにいたか~?」

「ダメだ! さっき見つけたんだが見失っちまった!」



魔獣は人を殺さなければという使命感に駆られていた。

魔獣は身を隠せる場所から人間を見て襲い掛かろうと準備するが、今目の前の大量に武装している人間を相手にするのは生き物としての直感が働き、危機感を抱く。そして魔獣は考える。

もっと人間が少なく確実に殺せる人間を探そうっと、魔獣は静かにその場から逃げるかのように別の場所に移動する。







大原はやっと一人きりになり、丁度いい岩があったのでそこに座り一息ついた。

「はぁ~、疲れた」

まったく、ずっと疑心感の感情を向けられる身にもなってくれ..,,しかも、気持ち悪いは言いすぎだろ..。しかし銀色のリストバンドとはどのくらいの強さなのだろうか? 確かデラインとルーナは濃い銅色だったな、おそらく階級の違い、こういう階級的な奴はゲームにもあったな..。おそらくあの二人はそこまで強くはない..多分。仮にあのヘンテコの態度で強かったらこの世界は終わりだ。ふむ....冒険者の階級についてもう少し詳しく調べた方がいいのか? だがそこまで重要な情報なのか....?

大原は古紙を見る。

....今はとりあえずこれを探すか..早く帰りたいし。



大原はしゃがみ草の中を探す。



「グォォォ!」

獣の遠吠えが聞こえた。



大原は体制を更に低くして、耳を澄ます。戦っている音が聞こえる。

方角的にデライン達の方か、どうする....? ..一応様子だけ見に行こう、だがもしもの時は....。

大原は音を消しながら、デライン達の方に向かう。









「お兄ちゃん!!」

ルーナは木にもたれ掛かっているデラインに近寄り傷を見る。胸に爪傷がついていてそこから大量の血が流れていた。意識を保っているのがやっと、という感じだ。

ルーナは傷口に手を当て治そうと試みる。



「エラ!! ビビってないで支援して!」

ミラは両手に短剣を持ちながら魔獣と戦っていた。



「ミ....ミラ..ち、力が..入らないよぉ..」

エラは弓を引こうとするが、緊張のあまり力が入らない。



魔獣はミラに向かって、素早い動きで左手のかぎ爪を横に振る。

ミラは魔獣の左手を軽く空中に浮きかわすが、左肩でタックルされ吹き飛ぶ。



「かはぁ!」

ミラは木にぶつかりそのまま気を失う。



「ミラー!」

悲鳴に近い声でエラは名前を呼ぶ。

エラは魔獣に弓を向けるが手が震えていて上手く標準が合わない。



魔獣はゆっくりっと近づいてくる。逃がさず、確実に殺すよう慎重に。



「えいえい! この! バ~カ!」



魔獣はお尻らへんを数回殴られたが痛くはない、振り向くと杖を持ち震えた女がいた。

魔獣は標的を変え、杖の女を狙う。



「あぁ....! ルーナー!」

エラは勇敢に立ち向かうルーナを見るが、絶対勝てないのに何でそんな事を....っと思いながら見た。



「私が相手だ!」

私はエラさんに、逃げて! っと目で合図を送る。

正直わかってくれてるか分からないけど、私が少しでも時間を稼げば、きっと....。

そう思いルーナは目の前の魔獣を見る。

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