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第21話「遺体発見ラッシュ」

「ふ~……また殺人事件か……翡翠碧の捜索どころじゃないわね」

ある日の晩に現場に向かってパトカーを運転しながらそう呟いた匙守音。彼女の呟きに助手席に座っていた部下の白鳥が反応する。

「警部、さっき現場の者から電話で聞いたんですけど仏様、左半身が吹き飛んでたらしいですよ」

「吹き飛んでた?切断されてたとかじゃなくて?」

「ええ、なんか爆発でもしたかの様にグチャグチャに吹き飛んでたらしいです」

「爆発……ね」

「警部……なんとなくですけどこれってミュータントの仕業の様な気がしませんか?」

「そうね……現代の日本で左半身を吹き飛ばせる程の爆発物なんて手に入る訳ないし……その線はありえるわね」

「もしかしたら例の殺戮会とかいう組織の奴が新たな殺人ゲームを始めたのかも」

「ありえるわね……あ!」

匙守音は運転中に車内の窓から外を歩いていた焔火を見つけたので彼の近くで車を停止させて窓を開けた。

「おいっす焔火」

「ばんわんこ~、焔火く~ん」

焔火に向かって軽い挨拶を交わした匙守音と白鳥。

「あれ?シス姉、それにみおちんも」

実は焔火と白鳥は顔見知りであった。

「焔火、こんなところで何してんの?」

「俺?バイトが終わって家帰るとこ」

「バイト……もしかして……例の地下格闘技?」

「うん」

焔火が答えると匙守音は若干険しい表情を浮かべた。

「…………焔火……あなたまだあんな場所でお金稼いでるの?私前にも言ったでしょ?あんな反社まみれの場所で稼ぐのなんてやめてマトモな場所で働いて稼ぎなさいって」

「な事言われても……俺タトゥーまみれだからマトモなところはどこも雇ってくれないよ……」

「そっか……それは難しい問題ね……ま、この話はまた今度ね、私達これから仕事に行かなきゃだから、それじゃあね、気をつけて帰るのよ」

「うん、またね、頑張ってね」

「またね焔火くん」

「うん、またね、頑張ってね」

匙守音と白鳥は焔火に別れを告げて現場へと向かっていった。そしてそれから数分後に2人は現場へと到着した。

「はいはい通してね~」

匙守音と白鳥は現場付近に群がっていた野次馬達を掻き分けて引かれていた規制テープをくぐっていった。すると現場検証を行っていた1人の小太りの警官が2人に気がつき、近寄ってきた。

「お疲れ様です、雷光警部、白鳥巡査部長」

「お疲れ、仏様は?」

「こちらです」

2人は小太り警官に案内されて路地裏の奥へと進んでいった。

「こちらになります」

「ワ~オ……大分派手ね……」

案内された先に転がっていたのはスーツを着た薄毛の中年男性の遺体であった。それからその男性は先程現場へと向かってる途中に白鳥が言っていたように左半身が爆発でもしたかの様に吹き飛ばされていた。

「被害者の身元は割れてるの?」

匙守音は小太り警官に尋ねた。

「ええ、佐藤三郎、38歳、この近くにある商社に勤務していた平凡なサラリーマンです」

「ふむ……」

匙守音は両手にゴム手袋をはめて、その場にしゃがみこみ、遺体の確認を始めた。

「……吹き飛ばされているところ以外に目立った外傷はないわね……」

プルルルルルルップルルルルルルッ

遺体を調べている最中に匙守音の上着ポケットに入っていたスマホから着信が鳴った。

ピッ

匙守音はスマホを取り出して電話に出た。

「もしもし?……何ですって!?分かったわ、今別の現場にいるから少ししたら向かうわ」

ピッ

匙守音は電話を切った。すると近くにいた白鳥が彼女に話しかける。

「警部、どうかしたんですか?」

「みおちん……また別の場所で体の一部が吹き飛ばされた遺体が発見されたそうよ」

「ええ!?またですか!?」

「ええ、全く物騒続きね」

プルルルルルルップルルルルルルッ

また匙守音のスマホから着信が鳴った。

ピッ

匙守音は電話に出た。

「もしもし?……何ですって!?分かったわ、後で向かうわ」

ピッ

匙守音は電話を切った。

「警部、どうされたんですか?」

「……また別の場所で遺体が見つかったそうよ」

「ま、また!?」

「ええ……物騒三連続ね」

プルルルルルルップルルルルルルッ

また匙守音のスマホから着信が鳴った。

ピッ

匙守音は電話に出た。

「もしもし?……分かったわ、後で向かうわ」

ピッ

匙守音は電話を切った。

「警部……またですか?」

「……ええ……またよ……物騒四連続」

さすがにこれ以上の遺体発見連絡は来ないと思っていた匙守音であったが、そんな思いも裏腹にその後彼女の元に11件の遺体発見の連絡電話がきた。これはつまり一晩で合計15人の遺体が発見されたという事になる。これは非常に大惨事と思った匙守音は白鳥と共に早急に一連の連続殺人の犯人捜索に乗り出した。

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