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第22話「お見舞い其の二」

ピピピピッピピピピッ

ある日の土曜午前7時。自宅寝室のベッドの上で眠っていた焔火の枕元で鳴り響いたスマホのアラーム。

「うーん……」

焔火はアラーム音で目を覚まし、枕元に置いてあったスマホを手に取り、アラームを止めた。その後ゆっくりと体を起こしてグ~ッと伸びをした。

「……あ~……腹減った……」

焔火はベッドから降り、寝室を出て洗面所へと向かって顔を洗った。そしてその後台所へと移動して朝食の準備を始めた。



「───うし!できた!」

焔火が作ったのは白米600gにサンマの塩焼き3匹、それから豆腐とワカメの味噌汁に、大豆の煮物、それからキュウリとニンジンと大根の漬物というTHE日本食であった。

「いただきます」

焔火はリビングにあるダイニングテーブルに移動して食事を始めた。

「うん!うん!うめ!うめ!うんめぇ!この力が漲ってくる感がたまらねぇ!」

焔火はよく噛み、よく味わい、しばらく食事を堪能した。



「───ふい~……ごっそさん」

食事を終えた焔火は使い終わった食器を流しに持っていって洗い、それが終わると冷蔵庫からあんパンを1つ取り出して再びリビングへと移動して、ダイニングテーブルの近くへ置かれていたソファーへと座った。そしてその後目の前に置かれていたテーブルの上に置かれていたリモコンを手に取って目の前に置かれていたテレビを点けた。すると丁度ニュース番組が放送されていた。

「え~……昨夜10時過ぎ頃に渋谷で体の一部が吹き飛ばされた遺体が15体発見されたとの事です、警視庁はミュータントによる犯行と見て捜査を進めているとの事です」

テレビに映っていた若い女性ニュースキャスターはそう語った。

(15人!?多すぎだろ……)

あんパンをかじりながらそう思った焔火。するとその直後にズボンポケットに入れていたスマホの通知が鳴ったので見てみると現在入院している水咲姫からメッセージが届いていた。内容は"暇すぎて死にそう。今日遊びに来てよ"というものであった。それに対して焔火は"分かった、13時頃になったら行くわ"と返信をした。すると彼女の方から"待ってます"というスタンプが届いた。その後焔火はテキトーに自宅で過ごして約束の時間10分前に身支度を整えて病院へと向かっていった。


「───すんません、お見舞いに来たんですけど」

病院へと着いた焔火は受付にて女性看護師にそう伝えた。

「お見舞いですか?ではこちらの用紙に記入をお願いします」

「へ~い」

焔火は看護師に渡された受付用紙に自分の名前やら今日の日付を記入して彼女に渡した。そしてその後水咲姫のいる病室へと向かっていった。

「う~っす水咲姫」

病室に入るなりベッドの上で横になって雑誌を読んでいた水咲姫に軽めの挨拶を交わした焔火。すると向こうはそれに反応して顔を焔火の方へと向けた。

「おっす燈~、本当に来てくれたんだ~」

「ああ、どうよ?体調の方は?」

「超良い感じ~、痛みとかもうほとんどないし、だから先生が予定よりも早く退院できるかもだって」

「マジか、そりゃあ良かった」

彼女から伝えられた吉報に焔火は笑みを浮かべた。

「あ、そうそう、お見舞い品持ってきたんだ」

そう言って焔火は右手に持っていた紙袋を彼女に差し出した。

「え?また何か持ってきてくれたの?何か……申し訳ない……」

「へへ、遠慮なんかいらねぇっての、黙って受け取れい」

「う、うん……ありがとう」

水咲姫は礼を言いつつ紙袋を受け取った。そして中を見てみるとバナナ10房と夕張メロン1つ、それから今週のジャンプとマガジンとサンデーが入っていた。

「うわぁ……嬉しい……こんなにいいの?」

「ああ、あ!そうだ!これも持ってきたんだ」

焔火はズボンのポケットからトランプセットを取り出した。

「トランプ?」

「ああ、これで遊ぼうぜ」

「おお~!いいね~!何する?ババ抜き?ポーカー?ジンラミー?」

「水咲姫が好きなのでいいよ」

「ほんと?じゃあ……神経衰弱!」

「おっけ~い」

2人はベッドの上で神経衰弱を開始した。



「───うし!今度は俺の勝ち!」

「あ~……負けちゃった」

2人は、かれこれ2時間程神経衰弱を楽しんでいた。するとここで水咲姫が焔火に話しかける。

「ねぇ燈、ちょっといい?」

「ん?」

「いきなりなんだけどさ、燈の事これから下で呼んでもいい?」

「え?あ、ああ……別にいいけど」

「ほんとに?よかった~、あ、そうだ、私の事も下で呼んでいいよ、というか呼んで」

「分かった」

焔火が答えると水咲姫はニコリと笑みを浮かべた。

「へへへ、よろしく焔火」

「ああ、よろしく麗水」

以前よりも仲が深まった様な感じの2人であった。そしてその後2人は神経衰弱をやめ、ババ抜きやポーカーなど様々なトランプゲームを楽しんだ。



「───さて、俺そろそろ行くわ、もうじきお見舞い時間終了するしな」

焔火は病室に設置されていた時計を見ながら麗水に向かってそう言った。ちなみに時刻はお見舞い時間終了5分前の16時55分を指していた。

「うん、今日はありがとね、お見舞い品持ってきてくれたり私の暇に付き合ってくれて」

「ハハハ、礼を言われるような事なんかしてねぇっつの、それじゃあまたな」

「うん、またね」

麗水に別れを告げた焔火は病室を後にした。

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