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人国


 大原は砂利道沿いの草むらから飛び出し、砂利道を塞ぐように倒れた。



「うお! あぶっね!」

っと馬に乗っていた男は無理やり手綱を引き馬を止まらせる。

「お兄さん! 急に飛び出したら、危ないすよ!」



「ああどうか、お助けを....」



「んぁ? どうしたんですか?」

 男は馬から降り、大原に近づく。

「どっか、ケガでもしたんすか?」



「いえ..お腹を壊してしまい、動けないのです..」



「お腹壊したぁ? ハハハ! お兄さん面白いですね~。丁度街に帰るとこだったんで、乗っかて行きますか?」



「あぁ...お願いします」

 大原は男を見て、なんだかチャライ男だなっと思っていた。



 男は大原を担ぎ、馬の後ろに付いていた荷車に雑に放り投げた。その勢いで転がっていた鉱石に大原は背中をぶつけ、うっ! っとなったが我慢した。

 男は馬に乗り、ハッ! っと言い、馬が動き出した。



 男は喋りだす。

「ところでお兄さん、なんでこんな裏道にいるんですか?」



 大原は、そうかここは裏道なのかっと考え、男に返事を返す。

「はい..実は、旅をしている者でして。荷物が全部燃えてしまい、迷子になってしまったのです」



「うお~、まじですか。それはまた災難ですねぇ~」



「はい..いや~でも、わざわざ助けてくださり、ありがとうございます....」



「いやいや! ただ街まで送るだけすよ~! そうだ! お兄さん名前は?」



「自分はオオハラっと言います」



「そうすか! 俺はマイク! 短い間よろしくっす!」



 大原はここでマイクからある程度の情報を手に入れようと質問する。

「あの~ちなみに、今向かっている街ってどこですか?」



「今ホッカイすよ~!」



(ホッカイ? まるで北海道みたいな名前だな。更に質問したいが、直接的に聞くと怪しまれる可能性がある。それなら街に着いてから、図書館とかから情報を得た方が良いかもな..。でも、もう少し質問してみよう)

「ほぉ~ホッカイですか。あと、どれくらいで着きます?」



「あと~もう数日かな~。オオハラさんお腹、ヤバい感じすか?」



「あぁ...いえいえ、さっきよりかはマシになりました」

 大原は心の中で、もう治ってますよ~。なんて言えるか! っと思った。



「そっか! ならよかったっす!」



 さっきぶつけた背中を押さえ大原は横になっていた体を置き上げる。そして荷車に置いてあった謎の袋に寄りかかった時、マイクが喋り出す。



「オオハラさん。次は俺から質問いいすか?」



「はい、いいですよ」

 大原はマイクの目を見たかったが、背中を向けているため目を見れなく、少し気分が下がった。



「オオハラさんって、どこから来たんですか~?」



「....自分は、遠いとこから来ました」



「えぇ~、なんすかそれ! 教えてくださいよ~」



「.......」



「まぁいいや。じゃあ次にその変わった服はどこで買ったんですか?」



「これは、自分の故郷で買ったものです」



「ほ~ん、いや~いい素材で作られているから、是非ともオオハラさんの故郷に買いに行きたいすね~」



「ええ、是非とも来てください。故郷も教えませんが」



「あちゃ! ダメか、ハハ!」



 愛想笑いかの様に軽いにやけ顔をする一方で大原はこの世界にお金の概念あるの?っと考えていた。

(..メムロ村では、物々交換が主流でお金など使っているとこなど見たことない。どこからか来る商人達でさえ物々交換だ。ということは、俺は今、一文無し?)

っと思い大原はハァ~、っと深いため息が出た。



 その大原の深いため息を聞き、マイクは馬を止め、振り向き心配そうに話しかける。

「どうかしました? オオハラさん?」



「ああいえ、大丈夫です」



「そうすか~。あっ! そういえば! 最近メムロ村によろうと行ってみたんですけど。な~んか、赤い球体に囲まれてて、不気味だったんで近寄らなかったんですよ! それで、丁度パルンテ人国の商人がいて、慌てた様子で帰って行ったんですよ。オオハラさんならここら辺にいたので、何か知ってると思い聞いてみたんですけど。どうです?」



(期待か....)

「いえ..自分はその様な村には行ってないので、分からないです」



「はぁ~そうですか~。一体なんだったんだろうな~」



(失望。これ以上のやり取りは危険だな。とりあえず、お金問題とパルンテ人国? 恐らく人と言うから、人間の国なんだろう。今はその国に向かってるのか? まぁいい、着いたらわかる)

 大原は色々な問題をどうするか考え、マイクとちょっとした旅をしながらホッカイに向かった。









「んじゃ! オオハラさん! またいつか会いましょう!」



「はい、また」



 マイクは大きな門までの道を馬に乗りながら、ゆっくり進んでいく。



 大原はマイクと別れ、遠くから城壁を見る。

(これは、城郭都市じょうかくとし? 流石異世界、こんなものテレビでしか見たことない、中に入りたいがパスポート的な物? がいるかもしれない....とりあえず行ってみるか)





 道を歩き続け、大原は城門まで来た。

そして兵士みたいのが立っていたので、話しかけてみた。

「すみません、中に入ってもいいですか」



「? はい、全然構いませんが?」



「あ、ありがとうございます」

(常識的に考えたら、荷物確認とかするはずだが、何もないな..)

 大原は拍子抜けし、緊張していたのがバカバカしくなった。



 門を潜り、街に入ると、それはもう賑やかだった。あらゆるところで人? の声が聞こえる。

そう、大原がここで一番びっくりしたのが、人間みたいな二足歩行のトカゲや、角の生えた人間とか様々な種類の生き物が沢山いることだった。



(ここは、人国..なのか?)

っと思いながら街を探索する。

 辺りを見渡しながら歩いていると、超目立つ大きいな銅像の目の前に着く。そして、台座になにか書いてあるので読んでみる。



「歴代の勇者達」



 大原は、ふーんっと眺めていき三代目勇者の名前で目が留まった。



「有馬ありま 隼しゅん」

 一人だけ文字の違う者がいた。



(やっはり日本人か、大体予想はしていた。

あの古本で読んだとき三代目だけ違和感があった。恐らくこの世界の通訳本を作ったのも、三代目だろう。銅像も多分、三代目をモデルとした作り出し。ていうか何でこいつは、漢字で書いたんだ? まぁ、どうでもいいか)

 そして次に目が行ったのは、七代目勇者。



「ベルフェト・アルトリウス」



(一番会いたくない人物だ。この世界のヒーロー。きっと俺とは嚙み合わない人間だ。

名前は覚えただが、見た目、歳、性格がわからない。まぁ、いずれ会うかもしれない (会いたくないが)、その時に全て把握し、もう二度と会わないようにしたいな..)

 そんなことを考え、大原はまず一番の問題、お金をどうにかしないとっと頭を抱えながら街を再び探索する。









 街に来て一日が立ち。俺は路地に座り考える。



 俺は人生で初めて、ホームレスを経験した。

あっちの世界なら今頃バイトでもしてお金を手に入れるだろう。だが! こっちの世界には、バイトなどない! クソが。

 色んな場所に声をかけてみたが、どこも人は足りてるっと言われ彷徨っていたら、この世界特有の冒険者ギルドに着き、俺は救われた! っと思って行ったら、冒険者登録するのにもお金がいる。

....もうお金は諦め、図書館で本でも読むかっと思い行くが、有料。

 そして、何もしないまま現在に至る。



「はぁ~、着替えたい....」

 風呂、何日入ってないんだろうなっと考えていると。



「なにか、お困りですか?」

 自動で動いている車椅子に乗った。お婆さんが話しかけてきた。



「いえ、特に何も困っていません」



「あら、そう? もし、暇だったら、ちょと手伝ってもらえるかしら?」



 俺はお婆さんを観察した。

髪は白髪で、耳ぐらいまである。かつてはかなり美しかったであろうと思うぐらい、今も若々しいし、おそらく高貴な人間で、他の人とは雰囲気が全然違う。

 最後に目を見た。



慈悲....ハハ。

「ええ、喜んで手伝いましょう」



「あら! じゃあ、車椅子押してくれるかしら?」



「はい」

しばらく、働くかぁ~っと俺は思い、お婆さんと何処かへと向かう。









 ある程度の時間大原が車椅子を押していくと、豪邸にたどり着く。



「ほい!」

っとお婆さんが言い、軽く指を振ると豪邸の前の門が開く。

「さあ、入りましょ」



 大原は頷き、お婆さんの車椅子を押しながら豪邸の庭へと入っていく。





 家の扉まで着き、扉は自動に開き玄関に入っていく。

 お婆さんの車椅子は、大原の手から離れ勝手に動き始める。



「はい! あなた臭いから、お風呂にお入りなさい!」

 どこからか服が飛んできて、大原は服を受け取った。



「いいんですか?」



「体を綺麗にするのも、お手伝いのうちよ!」



「はい」



 大原はお風呂に向かおうとするが、場所が分からなかった。

突然、大原の体が勝手に浮き、どこかに連れていかれる。



「うわ」



「場所分からないでしょ? 連れてってあげるわ」





 大原はお風呂に着き、広すぎる脱衣所で服を脱ぎ、お風呂場に向かう。

そこは、大浴場だった。大原は心の声が出てしまった。



「落ち着かねー」

そう、大原は広いとこよりか、狭い方が好きだからだ。

(軽済まして、直ぐに出るか)



 大原は、チャチャっと済まして、大浴場から出てすぐに着替えた。

でも、久々のお風呂でそこそこ気持ちよかったっと思い、若干気分が良くなった。



 脱衣所から出で大原は思う、広すぎだろっと。しかも、何処に行けばいいのか分からずに居た。

(とりあえず、お婆さんが居そうなとこを目指すか)





 広く長い廊下を歩いていき、なんとなく人の気配がする部屋までやってきた。

部屋を覗くとお婆さんが居たので、入っていく。



「あら、もう上がったの? ちゃんと洗ったのかしら?」



「ええ、サッパリしました」



 そこにはくつろぎ、まったりと本を読んでいるお婆さんが居た。そしてそのお婆さんの手前には、テーブルの上に置いてあるカップと何やらお菓子? 的な物があり、二人はテーブル越しに会話を続ける。



「なら、よかったわ! ほら、座ってお茶にしましょ」



「いえ、そん....」

 また、大原の体は勝手に浮き、椅子に座らせられた。



「私の入れた、紅茶は美味しいのよぉ~」



「....頂きます」

 一口飲む。大原自身、紅茶に興味無かったので、これが美味しいのかは分からない。



「私ローレって言うの、あなたは?」



「オオハラです」



「そう、じゃぁオオハラ、あなたをここの庭師にするわ。問題はない?」



「....なぜ..自分を雇うのですか?」

 大原は持っていたカップを置き、ローレの目を見つめる。



「なぜって? そうねぇ....あなたが暇そうだったし。しかも、ここに一人で住んでいるのも、もう退屈だわ」



「そう....ですか」



「さぁて! 今日はもうゆっくりして、明日からお仕事しましょ!」



「はい」

 ローレは大原のカップを浮かし、どこかに持っていく。そしてカップを追うようにローレもついていく。そんなローレの後姿を大原は見ていた。



(嫌な感情だ。しかし、しばらくここを拠点とするか)



 大原の庭師生活が始まる。

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