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過去


 (ああ..懐かしいここは、教室か....)



 俺は目覚めたら教室の角にいた。

そして、もう一人の自分が机の上で寝ている。



「大原さん! 大原さん!」



「...んぁ?」



「授業中ですよ!」



 辺りから笑い声が聞こえる。



(そうか、これは確か、高校一年の記憶か....)



 俺は小さい頃から、常に人目を気にしながら生きていた。

なんせ目は嘘を付かないから、そのおかけで人の感情が大体読み取れるようになった。



 慈顔じがんな顔ををしながら、瞳の奥には嫌悪感を抱いてたり。

 喜色きしょくな顔をしながら、瞳の奥には失望を抱いてたり。

人は絶対、裏の感情がある。



(そう、これが全ての始まり..)

っと思っていたら、場面は移り変わった。





「ただいまー」



「迅じんちゃ~ん! おかえり! はい! お帰りのチュ!」



「母さん、僕もう高校生だよ」



「いいや、迅ちゃんはずっと可愛い子供よ!」



「......」



 そう、俺は母に愛されていた。だが行過ぎた愛は、人を壊す。

俺は母に愛されすぎて、少しずつ壊れていった。





 場面は変わる。





 俺が部屋でゆっくりしている時、突然扉が勢いよく開く。



「迅ちゃん! 今日はお家に居るんでちゅか~?」



「うん、今日はゆっくりしようと、思うよ」



「あら~、じゃあママ、買い物行ってくるからね! 寂しいと思うけど、頑張ってお留守番しててね!」



「はい」



「じゃあ、行ってくるからね! ちゃんとお留守番しててよ!」



「うん」

 俺に、反抗期などなかったよ。

反抗したとしても、全て愛で包まれるから許されてしまう。



 少し時間が経ち夜になる。



「迅ちゃんただいま~! 今日もいっぱい作るからね!」



 俺の家は三人家族で兄弟などいないのだが、毎回晩御飯は五人前分の料理が出てくる。

もちろん、食べきれなく毎回残ってしまうが、俺の母は気にしない。

父は最初の頃は、こんなに要らないっと言っていたが。母が家の大黒柱で逆らえなくなっていた。







 場面は変わる。





 俺がトイレに行く途中で、母と父がリビングで何やら話し合っている声が聞こえる。





「なぁ、少しは迅を認めてやったらどうだ?」



「はぁ? 認める? 何を言っているの?」



「迅だってもう大人になる段階を踏んでいるんだ、だから....」



「あんたねぇ! 迅ちゃんはまだ高校生よ! 子供じゃない!」



「俺らからしたら、子供かも知れないが....」



「なによ! あたしが! 甘やかし過ぎだって言うの!? 子供には愛情を注ぐのが、親の役目でしょ! そもそもね!....」





 そう、母は俺のことになると熱くなる。

だから少しでも怪我をしたりしたら、学校にクレームを言いに行く。簡単に言えば、モンスターペアレンツだ。そのせいで友達とかにいじられる事が多々あった。俺は、凄く嫌だった....。



 このぐらい平気だよっと言っても、俺の言う事は聞かない。何せ、自分を中心とした感情しか持っていないからだ。俺はいつからか、母の目を見るのをやめていた。気持ち悪くなったんだ。





 場面は変わる。





 こんな生活が続ぎ、二年に上がってクラス替えを行った。

俺は人から愛情を感じるのが嫌になっていた時。



 君が現れた。



「あ! よろしくね!」



「ああ、よろしく」

 丁度、席が隣同士だった。

 俺は彼女の瞳を見た時、無、そう何も感じなったんだ。初めてだった、初対面なのに何も感じないのは。人は必ず期待や好奇心っといった感情を出すのに、彼女は無だった。



 俺はそれから、彼女を観察した。

 友達と喋ている時も、無。

 先生と話している時も、無。



 そう彼女は誰にも興味が無いのだ、ただ人に愛想よく振る舞っているだけで、無欲なのだ。

自分はまるで、ただ生きているだけの人形かの様に。

俺は彼女の幸せを見たくなった。彼女が幸せになればきっと、僕も満たされる。そう思ったんだ。



 俺はまず、彼女と仲良くなった。

彼女の名前は、高橋たかはし 瑠奈るな。

見た目は中の下だが、俺にとってそんなの関係ない。



 俺は早速行動に移す。

まず、瑠奈とラインを交換し、俺はそこそこ友達は居たので、瑠奈と相性がいい人を厳選し。瑠奈を幸せにいてくれる人物とくっ付けるようと努力した。



 しかし瑠奈は誰ともくっ付かず、何もないまま一年が過ぎていた。





 場面は変わる。





 これは、秋。

俺と瑠奈は帰り道が一緒なので、帰っている途中の、出来後だった。



「ねぇ、迅てさぁー、好きな人とか..いるの....?」



「好きな人? いないよ」



「そっかー」

 その時、瑠奈は歩くのやめた。



 俺は歩くのを止めない。



「ねぇ! 私達、毎日こうやって一緒に歩いて帰ってるでしょ...」



 俺は止まり、嫌な予感がした。



「だから..その..迅はさぁ、私の事どう思ってるのかなぁ~って....」



 俺は瑠奈の方へ振り返り、目を見た。

(なんだよ....。

何なんだぁ! その感情は! クソが。僕に向けるな! 君は、君はもう瑠奈じゃあない! 戻さなければ! 元の瑠奈に....)

「今日の九時、○○神社で」



「え....?」



「そこで、答えるよ」

っと言い俺は帰った。





 場面は変わる。





 俺は先に神社来て何かを待った。そして、何かが来た。何かは俺が来るのを待っていた。



 俺は何かの背後を取り、ロープで首を絞めた。最初はジタバタと暴れていたが、静かになった。

俺はバレないよう死体を林の中に隠した。今日はもう時間が無い為、明日海に捨てに行こうと思った。

 だけど、もしもの為にっと懐から箱を取り出し、死体の髪を取り、箱の中に入れ神社の下に埋めて隠した。これが初めての殺人、意外と呆気ないものだったよ..。

でも、俺は天才でも何でもない、ただの凡人だ。死体はすぐに見つかる。



 最近の神社には監視カメラがあり、俺が殺しているのがバレた。だけど、奇跡的に箱は見つからなかった。

俺は警察に捕まり、母は泣いていた。警察から動機を聞かれたが、無言を貫いた。





 場面は変わる。





 そして、裁判。

母は高い弁護士を雇い、検察官と激しい口論が始まった。



 俺は当時十七歳、少年法の範囲内だった。

 裁判の結果、殺した動機が分からず、懲役三年を言い渡された。



 高橋家から、短い! 娘を殺されたたんだ! っと聞こえるが、無視。

母は俺を見ていた。だから言ってやったよ。



「人殺しの母親」

てね。



 母は発狂していたよ。

俺はなんか解放された気分だった。

母の目を見てみると、もう愛の感情が消え憎悪ぞうお、怒りが見え俺は満足した..。





 場面は変わる。





 あれから三年が経ち、俺にはもう身寄りはいなかった。



 どうやら、ネットで叩かれまくって母は自殺、父は行方不明。

だけど、もうそんなのはどうでもいい。



 俺は神社に向かい、箱を取りに行った。

箱を取り中から髪を取り出す。そして俺は左手の小指に巻き、空に掲げる。

「あぁ、瑠奈、ただいま。これからはずっと一緒だ」

小指を頬に付ける。



「瑠奈....僕は瑠奈のそばで、ずっと瑠奈の幸せを見ていたかった。だから探しに行こう、瑠奈を..」





 場面は変わる。





 俺はそこからアルバイト、派遣やらをやって遂に、会社員になった。

ここまで来るのに、四年も経った。

 俺はボロボロのアパートに住み、思った。幸せが足りない、こんなんじゃあないっと。

 夜、街中のベンチに座ってる時、たまたまカップルが向こうのベンチに座っているのを見つける。

....とても幸せそうだった。



「なぁ瑠奈、あのカップルはずっと幸せなのだろうか....?」

人はすぐ不倫、浮気をする。

なら今、愛し合っている内に一緒に死ねば、永遠に幸せなんじゃないか?



「フフ..」

 俺はすぐさま、行動に移したよ。

だけど、結果はあのざまだ....。





 辺りは映画が始まる時みたいな感じで、徐々に真っ暗になっていく。

すると目の前に、高校時代の自分が現れ問いかけてくる。



「今は、幸せかい?」



 俺は薄笑いを浮かべる。

「....ハハ! これからさぁ!」

両腕を広げる。





 俺は林の中で目が覚める。



「うぅ、お腹いてぇ~」

 俺は腹を押さえ、何があったか思い出した。



 メムロ村から出て、数日が経ち。最初は何処かにつながっている砂利道を歩いていたが、お腹が減ったので、食べ物を探そうと思い林に入り。

なんとなく食べたことのある、きのこ? を発見したので。一口食べたら激痛になり、気を失ったようだ。



「はぁー、クソ、このままじゃ野垂れ死ぬ..」



 遠くから何かが走っている音が聞こえる。

俺は林から覗くと、遠くから馬が走ってきていた。しかもその上には人が乗っている。

 俺はチャンスだと思い話しかけに行く。

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