バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

悲劇


 俺は村の出口に向かいながら、考える。

あの瞳の奥にある、黒い靄。

まさか....っと、考えていると。



向こうから走って来る、見覚えのある二人がいた。

大原に近づき、話しかけてきた。



「お! オオハラじゃねーかー」

「おぬし、向こうから来たようじゃが、なぜこっちに来た? まだ、火は消えとらんぞ!」

「いやー、助けを呼ぼうと思いまして」

苦し紛れの言い訳だ。

俺は二人の瞳から、警戒感、疑い、の感情が見えた。



「ふむ....」

「おい! オオ、、」



四十代の大柄な男が何か言おうとした時、後の方から光が強くなったのを感じた。



大原は、後ろを振り向いた。

そこには、火が空まで上っていた。



「なんじゃ、、あれは、、」

「くっ! 村長! 早く行こう!」

二人は、穀物の倉庫方へ向かう。



俺も早く出なければと思い、動こうとした。

そうすると、大柄な男が叫んできた。



「オオハラ! この騒動が終わったら話がる、後で村長の家に来い!」

「わかりました」



もう二度と、会わないがな。

大原は、村の出口に走って行った。













あぁ、私、どうしちゃったんだろう。

ただ毎日、楽しく、平和に、過ごしていただけなのに....。

クエンは、体を丸めていた。



「やぁ! また会ったね!」

「あ、、、黒いの....」

「どうしたんだい? 元気がないよ?」

「私ね..人を殺して、しまったの....」

「あら~、それは大変だね! でもでも! 君には、力があるよね!」

「....力?」

「そう力! 僕は君の力を強くする事が、できるんだ!」

「力を強くしても、どうにもなんないよ!!」

「..なるんだよ」

「.....え?」

「殺してしまった、人間を蘇らせるんだ」

っと言い、黒いものはあの時と同じ、何か差し出してきた。





「で、でも! 蘇生は、勇者様しかできないって!」

「はぁ~、全く、皆して勇者様勇者様って、彼等の何がいいんだい? でもまぁ、それは、嘘だよ」

「そんな! 私は、騙されない!」

「君は人の人生を奪ったんだ、しかも、もう勇者でも、あの人間は蘇生できない。だから、君がするんだ」

「わ、わたし....」





「クエーーン!」

っと外から叫ぶ声が、聞こえる。

私の体は、反射的に振り返っていた。

それはお母さんで、嬉しい気持ちになったっが。

動きが遅く感じ、時間の流れが違う事に気付いた。



「君のお母さんはどう思う。自分の娘が人を殺したっと、思ったら」



私はただ、ジッとした。



「君は、欲しくないのかい? 永遠の幸せを?」

「えいえんの、しあわせ....」

「皆んなを、幸せにしてあげるんだ、そして、本当の平和を手に入れるんだ」



黒いのが近づき。

何かを、更に近づけさせる。

「さあ、、」





「わたし、みんなを....」

私は手を、何かに、近づける。











シュルアは、人混みをかき分け、クエンを抱きに行く。



「クエン! 大丈夫かい!?」

「あ~、お母さ~ん」

「よかった~~」



特にケガが無いことを、喜び。

シュルアは、クエンを強く抱きしめる。



「お母さん、わたし......みんなをしあわせにするの」

「....え?」



突然後ろで、燃えていた倉庫の火が、クエンとシュルアの周りに、集まってくる。

シュルアは火を見渡し。

「ク、クエン! あんた一体何を!」



周りの人も、驚いていた。

「お、おい! 大丈夫か! 誰か、水を!」



火は円形状にクエンとシュルアを囲み、火は天高く上り、壁ができ、周りの人が、見えなくなった。



クエンは、シュルアの腕から離れ、見る見る姿が変わっていく。



シュルアは、何も言葉に出来なかった。

愛する娘が、悪魔のような姿になっていく様を。





クエンの体から、火の翼が生え、全身に火の鎧みたいなのがつき、手からは鉤爪が生えていた。

体は人だが、もはや、人ではない、何かだ。



「クエン......」

「あぁ..お母さん、今、凄く気分がいいよ」

「一体どうしたの!!」

「お母さん見てて、私が殺してしまった人を、蘇らせるから」



クエンは手を横に振ると、火の壁は消え、周りの、人の姿が見えた。



「んな! だ、誰だ!」

「クエンちゃん?」

周りの人は戸惑っているが。



クエンは無視し、手を前に出し、人混みの空いている空間に、火を集めだした。

その火は、人形ひとがたになっていく。



「ばっ、バケモンだ!!」

周りの人は、悲鳴を上げた。



クエンは、シュルアを見た。

「お母さん、ほら! 蘇ったよ!」

「やめなさい! クエン!」

「あぁでも、皆の分も、蘇らせないとなぁ~」



もうシュルアの声は届かなかった。

シュルアはクエンの元へ、駆け寄ろうとするが。



「だめだよ~、お母さん、勝手に動いたら~」



シュルアは、火の檻に閉じ込められた。

檻は熱くはなく、逆に暖かった。



クエンは、一人の人間に手を伸ばした。









悲鳴が聞こえる。



わしらはより早く走る。

やっと、倉庫につき、悲惨な状況を目にする。

クエン? っと思しき人物が、人を灰に変えている姿を。



「村長! あんたは逃げろ!」

四十代の大柄な男は、冷静に対処してる。っと思ったが、手が震えていた。



「何を言う! お主も逃げるぞ!」

「いや、俺はシュルアさんを助けに行く!」



村長はシュルア? っと思い。

クエン? の奥を見たら檻に囚われている、シュルアを発見する。

少し窶やつれているかのように、見えた。



「む、無理じゃ! あんな化け物と戦ったら死ぬぞ!」

「村長....俺は、誰も見捨てない!」

「馬鹿を言うな!」



男、床に落ちていた鍬くわを手に取り、走り出した。

「うおおお!」



クエン? は近づいてきた人間に気付き、手を前に出し。

男を灰に変えた。



村長は、逃げようと足を動かそうとする。

ふと、視界に倒れている子供を発見する。

まだ、灰になっていないので、生きていると思い、近寄る。



「おい! 大丈夫か! しっかりせい!」

しかし、返事がない。



村長は、仕方ないおぶっていくかっと思い。

体に触れた瞬間、違和感があった。

フワフワしていると。



子供は顔を上げた、村長は顔を見た。

顔は真っ赤で、服を着た人形だった。

それは人間では無かった。



「キャハハ!」

それはまるで、本物の子どもかの様に、笑った。



村長は絶望した。もう、終わりだと。

ふと、自身の体に異変を感じ、さっき何かに触れた手を見た。

灰になっていた。

灰は徐々に、手から腕へと進行していった。

不思議に痛みはなかった。



村長は、その場で座り、手を合わせるかの様に。

「どうか! 勇者様、我らをお救いください!!」

周りから、笑い声が聞こえる中、村長は目を瞑った。







「ウフフ、お母さん見て! 皆、蘇ったよ!」

シュルアは何も喋らない、ただ、座って俯うつむいていた。



クエンは、まだやる事を思い出し行動する。

「後は....永遠を手に入れるだけ!」



手に火の玉を作り、空に向かって放つ。

火の玉は空中で、村を囲む様に広がり。村は火の壁で覆われた。



「もう、これで誰も死なず! 永遠にここで、幸せな暮らしができる!」

アハハハハ! っとクエンは高らかに笑う。







大原は森の木の上から、惨劇を見ていた。



「見てよ、瑠奈るな! あれこそが、愛だ!」

左小指を自分の頬に当てながら喋る。



大原は満足していた。

計画は失敗したが、結果的にいいものが見れて。



「リュエン、君もあそこに連れていきたいが、近寄っただけで死ぬかもしれないから、君はぁ、ここで我慢してくれ」

下におり、大原はリュエンの死体を埋める。





大原は、リュエンを埋め終え。

ふぅーっと、一息を付きながら、火の球体に囲まれた村を見た。



「クエン、君の幸せは、俺の幸せになる。だから君は、そこで永遠に幸せでいてくれ」

でも、まだだ、あれでは本当の永遠にはたどり着けない。



大原は立ち。

道は分からないが、歩き出そうとしていた。

「さて、瑠奈、次はどんな物語が待っているんだろうね」



手に、黒い手袋をはめて、歩き出した。





永遠。

そう、時間を巻き戻せる魔法を探しに。



しおり