前兆
男二人は机を挟み、何か話している。
「村長、犯人が見つからず、一日たっちまったぞ、、」
「ふむ」
「俺はもう、あいつしかいないと、思うんだけどよ? ....もう、いっそのこと、パルンテ人国に使者を出そう!」
「少し待てい、明日、パルンテ人国から、商人が来るはずじゃ。その時に、勇者様を呼んでもらうのじゃ。今、村から、使者を出すのは、ちと危険じゃろうて、道中で殺されたら、たまらんわい」
「いいや! 今すぐ! 出すべきだ! 一刻も早く伝えなければ、また死者がでるぞ!」
と四十代の男は机に向かって、手をバンっと強く叩く。
村長と四十代の男が口論していると、何やら外が騒がしく、二人は気になり、外に出ていく。
リュエンがいなくなり、一日が経った。
私はここままじゃいけないと思い。
今日は外に出て皆の手伝いをしようと、決意した。
そのうち、勇者様が来たら、リュエンも帰ってくるし!っと思い。
私は手のひらで頬を強く打ち、気合を入れる。
「よし!」
部屋から出ようと、ベットから立ち上がった時。
コンコン、ドアを数回叩く音が聞こえ「クエンさん、いますか?」っとドアの向こうから、オオハラの声が聞こえた。
オオハラが、私の部屋に来るなんて、初めてだから、ちょと驚いた。
「あっ、う、うん! いるよ!」
「それじゃあ、入りますね」
ガチャとドアが開き、オオハラは中に入ってきた。
「どうしたの? 朝早くから、、」
クエンはオオハラを見たとき、まだ、謎の服を着ており、両手には黒い手袋がしてあった。
その手には、小さい袋に、白いひもがついた、物があった。
「クエンさんに、これを渡したくて..」
「これは、なに?」
「それは自分のいたとこの、お守りですよ」
「お守り?」
「そうです。クエンさんに、いいことありますようにーっと思いながら一生懸命に作ったんです」
オオハラは、微笑みながら渡してきた。
クエンは、お守りを手に取り、見つめ、自分が知っている、お守りとは全然違った。
そういえば、オオハラは何も教えてくれなかった。
この長い期間、どこから来たのか、なぜ森で倒れていたのかを。
クエンは、そんなことを考えていると、オオハラが。
「あれ? もしかして、いりませんでした?」
「あ! ううん! 嬉しい! 大事にするね!」
クエンは、お守りを腰に付け、オオハラの横を通り過ぎて、部屋を出ようとする。
「ああ、大事なことを一つ。絶対にお守りは、開けないでください、効果がなくなってしまうので」
私は、振り返り「わかった!」と言い、リビングへ向かった。
なぜだか、わからないが、私が振り返った時の、オオハラの顔が、すごく怖く感じた。
「さて、荷物をまとめますか」
大原は、自分の部屋へ向かった。
「クエン、もう大丈夫なのかい?」
シュルアは心配そうな目でクエンを見る。
朝ご飯を食べながらクエンは「大丈夫!」っと言い、ご飯をかきこむ。
「そうかい」っとお母さんは言い、安心した顔を見せた。
「今日は、皆のお手伝いしてくるね!」
「はいよ。..そういえば、今日、穀物の倉庫で人手が欲しいって、言ってたらしいから。クエン、試しに行ってみなさい」
「わかった!」
私は、ご飯を食べを終わり。
颯爽さっそうと、玄関ドアのドアハンドルに手をかけた時。
ビリビリっと、かなり強い電気感じ手を反射的に離した。
一瞬立ち止まった、クエンを変に思ったが、シュルアは元気づけるよに。
「クエン! あんまり無理するんでないよ!」
クエンは、電気の事など忘れて。
「は~い!」
と言い、外に出た。
老人は、穀物の倉庫で作業していた。
ここは風通しがよく、常に両扉をあけ誰かが道を通るたびに挨拶するためだとか。
しかし、今日は誰も通らなかった。
老人は砕き終わった粉を袋に入れ、壁棚に置こうと思い。
手が届かないので椅子の上に立ち、置こうとした時。
「う、うわ!」
椅子の足が折れ、バランスを崩した。
手に持っていた粉袋と周りにも置いていった粉袋が一斉に落下し、男は粉まみれになった。
「イテテ、腰が、誰か~、おらんのか~!」
っと叫び、喉に粉が入り込みゴホゴホっと咳き込む。
クエンは穀物の倉庫に、何か手伝える事がないか、向かっていた。
「誰か~!」
クエンは誰かが必死に、叫んでいるのが聞こえ。
声のするほうへ走った。
「大丈夫ですか!」
っと声をかけ倉庫の中を見る。そこには粉に埋もれた、老人を見つける。
「おお! クエンちゃんかい! ありがたい、今、腰を痛めてのぉ~、動けなくなってな! ちと、手を貸してをくれ」
老人はクエンが来たことに安堵した。
「はい!」
クエンは倉庫に入っていき、老人に手を差し伸べた。
老人は、妻の形見として肌身離さず、指に金属製の指輪をしており、その手がクエンと触れた。
バチバチ、バチン!
っと小さい破裂音が響いた。
クエンはびっくりし、後ろに下がり、手に怪我が無いか、確認した。
特に怪我はなく、クエンは安堵していた。
焦げ臭かった、クエンは嫌な予感がした。
恐る恐る顔を上げ、老人を見た。
「あ、あああ! 熱い、ああああ!」
老人の全身が、激しく燃え上がっていた。
クエンは助けなければと、思っていたが。
火の手が回るのが、とても早く、もう助けれる状況ではなかった。
「くーー、えーーーーんんちゃーー」
老人は、動けない体で腕だけを振り。
助けを求めている声が聞こえる。
私は怖かった。
もう手が届かないまでに火が広がり、私は自分の命の危険を感じ、その場から逃げだした。
扉は開いていたのですぐに逃げれたが、もう、老人がいた場所は真っ赤に染まっていた。
私は外から倉庫を見ていた。
老人の助けを呼ぶ声が、聞こえた気がした。
私は安全なところまで行き、そこから倉庫を見て地面に座り込んだ、両手を耳に当て、耳をふさぐ、何も聞きたくない。
遠くから、人の声が聞こえるよな気がしたが、私はもう、暗い暗い底へ落ちていた。
「助けて。お母さん....」
大原は、村を出る準備をしていた。
何やら外が騒がしい、部屋の外からドタドタっと足音が聞こえ、あぁ、親子だなーっと、大原は思った。
ドアがバタン! っと開き。
慌てた様子のシュルアが喋る。
「オオハラ居るかい!?」
「どうかしましたか? シュルアさん」
「今、外が大変なんだ! ちょっと行くよ!」
大原の返答も聞かず、シュルアは大原の腕を強引に引っ張って行く。
大原は、特に抵抗などせず、シュルアの手に引っ張られるまま、ついていく。
行先など、もう知っているが。
そんなに遠くはないので、穀物の倉庫へと、たどり着いた。
そこには、頑張って火を消すもの、周りから心配そうに見ているもの、そして、座り込んでいるもの。
人だかりの中、シュルアは座り込んでいるクエンを見つけ。
「クエーーン!」っと叫ぶ。
それに気づいたクエンは振り返り、顔をこちらに向けた。
俺は、計画が成功したことを喜んだ。
大原の計画。
一、リュエンを殺すこと。
リュエンが祭りの日、クエンに告白することを教えてもらっていたので、計画は祭りに実行。
まず、踊りが終わったあと、シュルアに眠いから先に帰る、ことを伝え。
家に行き、ベットに葉っぱやら雑草を詰め込んだ袋をいれ、毛布をかぶせて、人が寝ているかのように見せる、部屋の窓を少し開け、家から出てリュエンに会いに行く。
ここで、予想外にリュエンは早く帰宅、本来なら道中で殺す予定だった。
俺はどこか、入れるとこを探し、寝室の窓が開いていることに気づく、入ろうと思ったが、窓を閉めようとしていた。
だが、リュエンは家族写真に目が行っていた。
俺は音を消し、窓から入り込み、ベットの下に潜り込んだ。
リュエンが寝静まったところで、ベットの下から出て、リュエン脳天に、家にあったナイフで一撃。
リュエンの痙攣がおさまり、死亡が確認できたので、死体をかつぎ、森に向かった。
森につき、頭と胴体を切り離し、後は、掘っておいた穴に胴体入れ、大きい葉っぱで隠す。
頭を家に持ってき、朝日と同時に頭を外に置き、自分の部屋の窓から帰宅で、おわりっと。
二、穀物の倉庫を燃やすこと。
リュエンが死に一日が経過し。
俺は、森でトウモロコシ? 麦? みたいなイネ科? を、集めていたので老人に砕いてもらう用に頼んだ。
この老人を選んだ理由は、仕事熱心、なにが何でも指輪を外さない、運動能力が低いだ。
あらかじめ、倉庫の椅子に切れ目を入れ、腰から倒れるようにしとく。これで倉庫の準備は終わり。
次にクエンを倉庫に誘導する。
恐らくクエンは自身を元気付ける為に人の役に立つ事をし、今の不満感を薄れさせようとするはずだ。
だから朝早く、俺はシュルアにこう伝える。今日穀物の倉庫で人手が足りないらしいですよー、っと言えば、クエンに言ってくれる。
っで、俺は静電石を砕いた物を、お守りにしてクエンに渡した。
この、静電石は装備している者に、電気の力を与えるのだが、クエンは滅多に魔法を使わない、よって、クエンの小さい気力エネルギーの器から力をあふれ出し、常に電気を放っている状況だ。
でもまぁ、小さい袋に、少ししか入れてないから威力は低いが十分。
これにて倉庫が燃え作戦は成功し。
俺は、このあたりから突然と姿を消す。
三、クエンを自殺させること。
これにより、倉庫は燃え、クエンは人を殺す。
クエンは火の魔法が使えるため、皆から犯人扱いされるだろう。
クエンはさらに病み、皆から痛ましい目で見られ、母、村人に助けてもらえなくなり、最後の希望リュエンに会いたく、自殺を決行する。
俺はその様子を森から観察していて、クエンの自殺がわかったら、クエンの死体を回収。
森に持っていき、胴体だけの死体と一緒に埋めてあげる。
これで完成だ。
永遠に、彼らは二人だけの時間を過ごせる。もう離れることの無い、永遠の幸せを....。
大原は完璧だと心の底から喜んでいた。
しかし、計画は壊れる。
俺はシュルアの声に反応した、クエンを見た。
振り返ったクエンの、瞳の奥に今まで見たこともない、感情で、黒い靄があった。
その靄は、徐々に大きくなっていくのを感じた。
まずい、本能がそう言っている。
本当は家に帰り荷物を持って消える、予定だった..。
俺は、唇をかみしめ。
ここから逃げ....いや、この村から離れることにした。