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第19話「次のプレイヤー」

「タカシとかいう野郎……ゲーム失敗か……」

都内にある某ビルの中の一室。室内に置かれていたビリヤード台でドローショットを決めながらそう呟いたヴィジュアル系な服装の茶髪ウルフカットの男。

「設定人数25人で殺した数2人ってちとカスすぎねぇか?」

室内に置かれていたソファーに座り、雑誌を読みながらそう呟いた黒のタンクトップにジーンズ姿の茶髪ソフトモヒカンの筋肉質男。

「つーかさ~、アイツ高校生にやられたんでしょ~?マァジダサくなぁ~い?」

室内に置かれていた椅子に座り、爪にマニキュアを塗りながらそう呟いたパンクファッションに派手なメイクをしたピンクとブルーのツートンショートボブヘアの女。

「どうやらその高校生もミュータントみたいね~……」

ピンクのタンクトップに黒のレギンス姿で室内に置かれていたエアロバイクを漕ぎながらそう呟いた紫色のアシメショートヘア女。そして彼女の発言に対してウルフカットが反応する。

「しかもよ~……そいつ素手で倒したんだろ?あの鋼男をよ、マジイカれてんぜ」

ウルフカットの発言にマニキュアを塗っていたツートン女が反応する。

「ハハハ、イカれてんのは時代錯誤のクソダサファッションしたあんたでしょ」

彼女の発言にウルフカットは若干額の血管をピクつかせて言う。

「ハッハッハ、イカれてるって?この最先端ファッションが?殺してやろうか整形メンヘラブス?」

「ああ!?誰が整形メンヘラブスだゴラァ!!!」

ツートン女はウルフカットに対して凄まじい剣幕を浮かべながら勢いよく椅子から立ち上がった。そんな彼女に向かってウルフカットは追加で罵倒をする。

「俺さ~……前から言おうと思ってたんだけどお前の事死ぬほど嫌いなんだわ~……なんか見てるだけでイライラしてくんだよな~……中学の時同じクラスにいたクソ女そっくりでよ~……つーわけで死ねボケ」

「……言いてぇ事はそれだけかよ!?腐れチ◯カス野郎!!」

「ん?もっとあるぜ?ヤリマン、ガバマン、低能、ボケナス、クラミジア」

「……ッッッ!!!てめぇは殺す!!!」

「上等だよ、カモンビッチ」

2人は殺気を放ちながら互いに詰め寄ろうとした。

「そのへんにしときなさい!!」

「「!!」」

突然部屋の入り口の方から聞こえた怒鳴り声にウルフカットとツートン女はピタッと立ち止まった。そして2人が声が聞こえた方向に顔を向けるとそこには、首に蛇柄のネックウォーマーを付け、緑のノースリーブニットに黒のミニスカートに黒タイツ、そして黒のショートブーツ、さらに右肩に蛇のタトゥーを刻んだ緑のセミロングヘアの美女がキセルを右手にやや不機嫌そうな顔を浮かべて立っていた。

「「翡翠(ひすい)さん……」」

ウルフカットとツートン女は緑髪女に向かってそう呟いた。

「か、帰ってきてたのか……」

「お、お帰りなさい……」

2人がそう言うと翡翠という緑髪女は、やれやれという表情を浮かべながら口を開く。

「ふ~……あんた達……また喧嘩してたのね」

「このアホブスが先に煽ってきたんすよ」

「誰がアホブスだゴラァ!!!」

「やめなさいっつの」

翡翠は再び喧嘩しようとする2人を制止させつつ、スタスタと部屋の奥へと歩いていき、そこに置かれていた蛇柄の椅子に座った。そしてキセルを口に加えた。

「フ~……」

翡翠が一服を済ませると、エアロバイクを漕いでいたアシメ女が彼女に話しかける。

「翡翠さん、今回の"幹部集会"はどうでした?」

「……いつも通りよ、特に変わった事はなかったわ」

「そうですか……ところでニュース観ました?最近あなたが引き抜いたタカシとかいう男……ゲーム失敗しちゃいましたよ」

「ええ観たわよ、何でも高校生にやられたんですってね?全く……相手もミュータントとはいえ10代のキッズに負けて警察に捕まるなんて情けない事この上なしね、控え目に言ってゴミだわ、さらに言えば虫けら」

「ハハハ、辛辣~、超辛口~」

「フフフ、あなた程じゃないわよ、さて、さっさと次のプレイヤーを決めないとね、ていうかもう既に決めてるわ」

「誰ですか?」

「コイツよ」

翡翠はスカートのポケットからスマホを取り出して画面を正面に向けた。画面にはあみだくじが表示されていた。

「「「「どれどれ?」」」」

部屋にいた翡翠以外の4人は彼女の元へと近づいてき、スマホの画面を見た。

「……アイツか」

「アイツかぁ~ん」

「アイツか……」

「アイツね」

あみだが指し示していたのは"五条三(ごじょうさん)"という名前であった。

「さて、早速連絡しなきゃね」

翡翠はスマホで五条という人物に電話をかけた。

プルルルルルル……プルルルルルル……ピッ!

「あ~?もしもし?」

「もしもし、翡翠よ」

「ああ……あんたか……何の用だよ」

「次のプレイヤーが決まったわ……あなたよ」

「……マジ?」

「ええ」

「うは!!ktkr!!30億を我が手に!!ルールは!?」

「そうね……72時間以内に90人、殺害対象は渋谷、新宿、中野にいる薄毛の男(ツルッパゲも可)、殺害方法は……能力を使えば何だっていいわ」

「承知した」

「今から監視役の蓬莱(ほうらい)を鍋島松濤公園に向かわせるからそこで合流してゲームを始めてちょうだい」

「あいよ、んじゃあな」

「ええ」

翡翠と五条は通話を終了とさせた。するとその直後にウルフカットが翡翠の方へと近づいてきた。

「なぁ翡翠さん、ちょっといいすか?」

「何かしら?」

「……その~……聞きたい事があるんすけど……どうして"うちのボス"はあなたに"こんな事"やらせてんすか?」

「こんな事?」

「ああ……"殺戮会"なんてクソダサな組織名乗ってあちこちから荒くれミュータント集めて大金ちらつかせて殺人ゲームなんてもんをやらせてるって事っすよ」

「…………"望愛(のあ)様"は優秀なミュータントが欲しいのよ」

「優秀なミュータント?」

「私が提示した難関ゲームをクリアできるミュータント……つまりは指示された事を忠実に遂行できるようなミュータントがね」

「……てことは……つまり何か?もしゲームをクリアした奴がいたら大金を渡すだけじゃなく"ウチ"に引き入れるって事っすか?」

「そういう事になるわね」

「なるほど……ちなみに翡翠さん的に引き抜いた荒くれ者の中で特別目ぼしい奴とかっているんすか?」

「……ええ、いるわよ1人」

「1人……随分空くねぇっすね……ちなみにそれって誰すか?」

ウルフカットの問いに翡翠は即答せず、キセルを口に加える。

「フ~…………内緒よ」

翡翠は笑みを浮かべつつ口から煙を吹きながらそう答えた。

「え~……何すかそれ」

彼女の返答にガッカリそうな顔を浮かべたウルフカットであった。

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