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第3章の第74話 どうしようもない問題



☆彡
【――この時あたしは、感傷に浸りつつ】
【チラッと恋愛成就しそうな2人を見るのだった】
「!」
「!」
そう、スバル君とアユミちゃん。あなた達2人を。
【――それは1つの賭け事だった】
【そのまま、当時高校生時代の話を持ち出せば、あたしの心証はますます悪くなり、望みは絶たれる……】
【行きつく先は、このグループから外れ、難民生活を余儀なくされる……!!】

(そんなのイヤ!!!)

【だから、その望みを繋ぐためにも、未来ある希望のあなた達2人に持ちかけるの】
「……」
「……」
【だから……ごめんね……】
ここで1つあたしは、軽く呼気を吐き、姿勢を正して、こう語り継ぐ。
【――未来に望みを繋げるために】
【ここ、後戻り不可能地点(ターニングポイント)にて、人生大一番の賭けをする……!!】
【敢えて、この大学生時代に見聞きした『どうしようもない問題』を持ち出したの】

――そう、注意喚起するために。
どうしようもない問題という名の特殊集団詐欺事件を語る。




☆彡
【お金】
「――いつの世もそうだけど、人は誰しも荒稼ぎしたいもの」
「……」
「……」
「……」
その話を聞くのは、
僕とアユミちゃん。私とアヤネ。あたしとエメラルティ、シャルロットさん、アンドロメダ王女様にデネボラさん、レグルスの10人。
そして、同じ場所にいつつも、これまでの経緯について、
何があったのか互いに語り合い、談笑しているのは、クコン、インカローズ、スピネルの幼い子供達。

【欲】
「――そう、夢見る生き物。
誰よりも『お金』を得たい。
奇麗なお洋服に袖を通したい。
美味しいものを毎日食べたい。
贅沢したい。豪遊したい。楽して稼ぎたい。誰もが持つ、そんな欲求――」
そう、誰もが持つ、そんな『欲』求――
(お金……)
(お金の話……?)
スバルが、アユミちゃんが、心の中でそう呟く。
クリスティさんは、こう続ける。

【騙し】
「――そう、その為には、人を『騙す』しかない……!!
『問題』という名の『詐欺』を仕掛ける!
『責任』の話に結び付けて、『借金』を負わせる……!!
『人の噂』を取り次いで回れば、『その人たちの数』だけ実証性があり、誰もが見ても、その話を信じる……!!
『間違った情報』を、『そのまま鵜呑み』にしてもね……!」
「借金……!?」
「人の噂……その数……!?」
その言葉に一番強く反応を示したのは、サファイアリーにエメラルティだった。
「!」
僕はその様子に気づき、振り向く。
クリスティさんは、目線だけを見据え、語り部をこう続ける。
「――その借金。裏口入金を通して、自分たちの懐にも入ってくる!
それは協力者の数が多いほど、勝率が高く、また手取りが低くなってくる。
だが、それを度重ねれば、度重ねるほど、協力者たちの数が増していき、かつ、酒の席の話が盛り上がり、毎月の給与日が楽しくなってくる……!
そうやって、ほんの一握りの優秀な人たちの頭角が現れてくる!
その事を知っているのは、ほ~んの一握りの人達……」
(優秀な人とそうでない人とを振り分けている……!? そんなバカげた手段で……)
(どこのバカよ……。そんな悪いこと考えている大人は……。アユミ……幻滅しちゃう……)
スバル君が、アユミちゃんが、心の中でそう呟く。
クリスティさんは、語り部を続ける。

【標的】
「……何も知らないはず……あいつは何も知らないはず……。
あいつはこっちで、こんなに悪い事をしていたのに、あいつは何も知らないはず……。
何せあいつは、あんなところにいて、人に関わる機会が少なかったのだから……。
だから知る由もない。
……ちょろ勝ちできる。楽に勝てる。
決めた! カモはあいつだ!!
次の標的を定め、ちょっと騙しやすそうな奴を見つけては、
ちょっとそこからお金を『盗り立てる』気でいた……。
カモがネギを背負っている……!
だから、周りには、なんかいい感じの話で取り次いで回り、そう見立てる。
あいつが好きな彼女さんは、あそこにいるあの娘(こ)だ。
それは仕掛け人が用意した、詐欺に見立てた問題であり、それに通じているのはあの娘。
そう、妙に詳しい詐欺女。
騙せる……!!
周りの人を誤った認識で誤魔化せる。
親兄弟がいれば、言葉巧みに誘導し、どちらか1人でもいいから、自分たちと通じ、そいつに飴を持たし、関心を持たせる。
そうやって、1人ずつ言葉巧みに騙しながら、共犯者に仕立てていく。
後は、そいつから、知り合いに電話やメールなどで取り次いで回り、これを問題事で済ませ。
言い繕った話に誘導し、我々の操り人形として躍らせる。
集団の環が多ければ多いほど、また協力者の数が多ければ多いほど、これを問題事で済ませ、勝つ事ができるのだから……!!
(仕掛け人が用意した、詐欺女……?)
(ひょっとして、用意周到な慣れた手口かしら……?)
ミノルさんが、アヤネさんが、心の中でそう呟く。
クリスティさんは、こう語り部を続ける。



【詐欺女】
「――人を惑わせ、欺き、騙すには、どうしたらいいと思う?」
「!」
これを見聞きした僕たち、あたし達は、「う~ん……」と考える。
「そう、人を騙すためには、『酒』『金』『女』の3禁が上手い具合に絡んでくるの! それは、人の欲望をついたもの!
俗にこれを、『酒』『欲』『色』とも、別称でいい。
酒に溺れてしまえば、仕事なんてできない。
欲に溺れてしまえば、周りの事が見えなくなる。
色に溺れてしまえば、男なら、口を割らないと得ないでしょう。
この色とは、言ってしまえば、そう、性欲なのよ……!」
「性欲……」
そう口にしたのは、この中で唯一の大人の男性であるミノルさんだったわ。
だから、妻であるあたしは、こう注意したの。
「あなた……クリスティさんの肢体に、鼻の下を伸ばさないでね!?」
「いやぁ~~さすがにいい肢体(からだ)してますからなぁー! ハハハハ!」
これを笑って誤魔化すミノルさん。そうやって茶化す。
妻であるあたしは、嘆息するばかりだったわ。
これには当人のクリスティさんを推しても、嘆息するしかない。
「そう、性欲とは、色欲とは、禁欲の1つとも言って、生物学上、これは切っても切り離せないものなの……!
だから、種子(たねご)を残し、子供・孫・その先々の子孫の系譜に繋がっていく以上はね……!」
「種子(たねご)を残して……! あっ!」
呟きながらも、その顔を赤らめていくアユミちゃん。
その時、不意に脳裏に過ったのは、ピルとコンドームの話だったわ。
そう、妙に絡んできたの。
「ホント、不思議……」
そう、呟いてしまうほど驚いている自分がいる。
「……」
「……」
そんなアユミちゃんの様子を、スバル君が、そしてあたしが見詰めていたの。

【――ここで、一度目を瞑ったあたしは】
【意を決し、この話題をスバル君に振ったの】

「――スバル君!」
「んっ!?」
「スバル君の好きな人は……誰!?」
「えっ……!?」
(いきなり、何を言うのクリスティさん!?)

「……」
その様子をただ1人、静かに見つめていたのはシャルロットさんだった。
その経過観察を決め込む。

「! ……ッ」
「……」
【――その様子を食い入るように、対応に困りつつも、何だか期待の顔を浮かべていたのは、そう、アユミちゃんだったわ】
「……」「……」
【この2人の様子は、見ていてなんだか面白かったわ】
【だって、2人は意中の中だから】
「……」
「……」
【今の関係を壊したくて、壊れるのが恐くて、お互いにお互いの事を想って、言い出せない。……そんな所かしら?】
「クスッ……」
【まだまだ時間が必要ね。その時が来るまで……】
【でも、まだ子供だからか、まだ当人たちには言い出せない、秘密のお年頃だったりするみたいね。……可愛い】
「……」
「……」
【だからあたしは、こう話を続ける】
「スバル君が好きなタイプは……そうねぇ……エメラルティじゃないのかしら?」
「えっ……!?」
「……」
「……」
僕は、素っ頓狂な声を上げて。
僕の近くにいたアユミちゃんは、最初は驚きつつも、すぐに冷静になって、その視線を向ける。
エメラルティさんなんかは、いきなり自分に振られたことで、その眼が驚きつつも、すぐに平静さを取り戻すのだった。……実に有り得ない話だからだ。
「何言ってるんだか……呆れ(スタンド)……
What Are You Talking About……Stunned……
(ホワット アー ユー トーキング アバウト……スタンド……)」
「!?」

【――僕は心の中で、動揺が走る】
(いきなり何を言うのクリスティさん!? 何て言ったのエメラルティさん!?)
【僕は、アユミちゃんほどじゃないにしても、その対応に困る……】
(フフッ、対応に困ってるみたいね?)
【それはそうよ。どんな人でも、その対応には困るものだから……】
【これは、そうした問題なのよ?】
【実際問題、過去にあった事例で、そう、ヨーシキワーカさんの話題で、アメリカ本国全土に広がったんだから】
【ここに関わってくるのが、仕掛け人の電気のミシマさんで、詐欺女で証拠を揉み消し、強力な後ろ盾となっていたあの娘(人)ヨシュディアエさんなんだから】
【その時はその人も、さぞその対応に困り果てたものでしょうね……】

「自慢じゃないけど、あたし美人4姉妹は、特に有名で、末っ子のエメラルティも、中々のモノよ?」

【――あたしは、末っ子のエメラルティをどうかと、スバル君に勧める】
【こうやってけしかけたようなものだから】
【その手段や内容は、ちょっと違うけどね……】
【エメラルティも中々のモノを持ってる】
【それは、見る人が羨むような、自慢の肢体(いもうと)だから】

「……」
「……」
僕は、エメラルティさんの肢体(からだ)を見た。
ボィン プルル~ン
際立って大きいのは、そのとんでもないぐらい大きい胸だ。
「……。」
僕は心なしか、照れて、顔が赤くなってしまう。

【フフフ、手を出したくなってくるでしょう?】
【そうやって、人を騙すんだから~ァ!?】

(まぁ、あたしほどじゃないんだけどねぇ……!!)
ムフッ
と煽情的に鼻息を鳴らすあたし。そこだけは、強く自慢する。何せあたしが、一番デカいから。
そう、主張(アピール)する。
でも、ここでちょっとした騒ぎになるのは、ご愛敬だった。
――これを見かねてアユミちゃんが、スバル君を早急に注意しにかかる。
「――ちょっとスバル君~!?」
「うっ……ごめん~!」
少女に、注意される少年を見て、
「……」
エメラルティ(あたし)は嘆息しちゃう。……いったい何やっているんだが……。
呆れ顔のエメラルティ(あたし)
少年の目を曇らせてはいけないと……、その腕で胸を抱えるように隠すけど……。
メチャデカいので、その腕が胸の中に減り込んでしまうの。
ムニュ もにゅ~
あっ、零れ落ちそう。
「!」
それを見た僕が。
「うわぁ……」
(柔らかそう……)
と思わず思わん限りだ。
とそれに気づいたアユミ(あたし)が。
「ムッ!! ちょっとスバル君!!」
「!」
で、これを見かねて、恵アヤネ(あたし)が。
「コラッ、あなた、鼻の下伸ばさないの!!」
「!」
で、最早お決まりの如く……。
少女が、ソファーの上で楽な体制を取っている少年のズボンの上から、軽くつねり。
痛ッ
奥様が、鼻の下を伸ばしているご主人の耳を掴んで、軽くひねる。
痛てッ
痛がる男連中を尻目に。
「……ッ」
「~~ゥ!!」
それをやった女性陣は、いい気味と思わんばかりに、二の腕を組みながら、鼻息を鳴らす。
フンッ
それを見ていた美人3姉妹(あたし)達は、自分の肢体(からだ)の事なので、どう対応していいか一瞬迷いが生じていたわ。……困惑とも取れるわね。
「……」「……」「……」
あたしたちは、そんな4人の様子を見比べつつ、嘆息していく。
「あぁ……」
(ダメねこれ……)
「ハァ……仕方ないわね……」
クリスティさんが、サファイアリーさんが、心の中でそう零し。
ついでエメラルティ(あたし)が、溜息を零しつつ、こう語っていくの。
【――だから、仕方なしにこう言ったの】

「学校でも、そうした経験はなかったの?」

【――と、それが大きなヒントだったわ】
「!」
「!」
僕たちは、あたし達は、その一言で、当時あった出来事を思い出す。
「どこの学校でもそうだけど、悪ガキがいて、しょっちゅうあたしが標的になっていたわ……」
クルッ
とエメラルティ(あたし)は、サファイアリー姉さんを見て、
「!」
そのお姉さんも、昔あった事だからか、コクリと頷き得る。
もちろん。
「フッ」
クリスティお姉さんも、コクッ……と小さく頷き得たわ。

【――さすがに美人だと、その被害はあって当たり前で】
【むしろ、無い方がおかしい……】
【詐欺事件の仕掛人と詐欺女は、こうした事を上手い具合に悪用していたのよ】
【その見目麗しい女性の顔・甘い声・肢体(からだ)を使って、今まで多くの男性たちを騙し、たぶらかし、欺き、惑わせていたの】
【そうやって、自分たち優位の場へ誘いながら】
【その人から、有り金を巻き上げ】
【借金を負わせ、多重債務者へ陥っていく人たちも、少なくない……】
【――困ったときは、親兄弟、知り合いの方などに尋ねて回る事や】
【それでも解決できない場合は、早いうちに、消費者ホットライン『188』、消費生活センターに尋ねてみようね】
【それでも執拗な嫌がらせ行為が続く場合は、地元の警察や弁護士の方などに、相談してみよう】

「――あっ! そう言えば、昔僕も……」
「あぁ、あったよね……?」
「うん……アユミちゃんとは、違う子だった……」
そう、会ったんだ確かに、昔学校で。
スバル君とアユミちゃんの話は、そんな小学校時代(当時)の出来事を語るものだったわ。
だから、クリスティ(あたし)は、こう言うの。
「そーゆう事を犯す人がいて」
「!」
「仕掛け人であり、詐欺女の話に繋がるわけよ!」
「あぁ……」
「なるほど……」
これには僕たち、あたしたち、理解の『色』を深めるのだった。……不思議と符合する。
――クリスティさんの話は、こう続く。
「――そうやって、自分の肢体(からだ)に絶対の自信を持っている若い娘(こ)なんかがいて、それをいいことに自分を棚の上にあげて、
……人をからかうものよ?」
「え?」
「……」
「からかう……?」
「……」
コクリ
と頷き得るアユミちゃん。同じ、女の子だからか、それが良くわかる。自分もクラスの中で、すごいモテるから。
「さっきのあなた達みたいにね!」
「……」
「……」
「……」
僕は、アユミちゃんは、エメラルティさんは、先ほどまでのやり取りを思い出しつつ、相互理解を示した。
顔を向き合わせて、静かに頷き得る。
――エメラルティさんは、こう口頭を述べる。
「――そうやって、人を騙すのが……」
「そう、詐欺女に繋がるわけ!」
エメラルティさんの話を引き継ぐように、
クリスティさんの話が、不思議と符合する。むしろ合致する。
「――過去に、そう言う事例があって、
電気のミシマさんという人が、ヨシュディアエさん辺りを捕まえて、いいような話を取り次いで回り、
何人もの男の人達を、たぶらかしていたの!
ちょうど、詐欺女に見立ててね!
だから、妙な具合に、話が信じられないぐらい進み、人の噂が飛び交うように、独り歩きしていたわけ……!
まぁ、当然ちゃ当然なんだけどね! あの娘(こ)も、信じられないぐらいおっぱいが大きいから……!
いい注目の的だった訳! そこを利用されたわけ!
――で、今回の話、どうしようもない問題に初めて勝った人がいて、
その人の名が、ヨーシキワーカさんという方で、
その人は、数年間、就職難の状況に会っていたの……!
向こうとしては、穏便に事を進め、そんな事はそもそもなかったとするために、問題で済ませようとしていたの……!
弟さんすら、鵜呑みに騙されて、踊らされてね……!
ぶっちゃけ、借金問題と責任問題を巡る、特殊集団詐欺事件だったんだけどね……!】
「詐欺……!?」
驚き得るアユミちゃん。
スバル君と顔を見合わせる。

★彡
【取り返しがつかない過ち】
【アメリカ フロリダ州 マイアミ郊外にあるHaulover Park(ホーローバーパーク)】
【そこは1つ街を出れば、海岸沿いが望める素敵なところ】
【奇麗な砂浜、奇麗な海が広がっているの】
ホーローバーパークの一番の特徴は何といっても、家族連れや恋人同士の時間を過ごすのに人気の場所。
1人でも、自然を楽しみたいのにおすすめの場所。
ホーローバーパークの歴史は、1885年まで遡り、農家やハンターが最初に利用していました。
その後、この地域は人口が増え、マイアミビーチからの観光客が利用するようになっていきました。
そして、1972年、ホーローバービーチはマイアミビーチ市によって購入され、公園として一般公開されました。
この公園は、その美しい景観と、ハイキングコースやサイクリングコースなどのレクリエーションアクティビティにより、
時間の経過とともに人気を集めています。
人気の観光スポットは他にもあり。
サウスビーチ、アクションの真北にあるヌーディスト向けエリアと家族向けのエリアがあるビーチ、
ドッグパーク、ピクニックエリアなどがあります。
フォートローダーデールで、キャップテンと一緒に船旅をしませんか? 4時間で、(822米ドル)10万8464円。
デラックス マイアミ プライベートヘリコプターツアー 1時間で、(601米ドル)7万9396円。
Kelley Deep Sea Fishing(ケリー ディープ スィー フィッシング)一緒に魚釣りを楽しみませんか? 釣舩チャーター。
彼女と2人で、ドッグビーチに足を運んで、エンジョイしませんか? このビーチを拠点にホテルを選ぶのがいいと思います。

【――それは車内で、2人きりの出来事だったらしいわ】
【そこで加害者(ミシマ)さんは、もっと被害者(こいつ)の事を知りたいと思い、面白半分で、からかって、こう訪ねたそうよ……】

それは当時の出来事の1つ。
道路の上を滑空する1台の空を飛ぶ車。
その正式名称は、『電動垂直離陸型無操縦者航空機』Electric Vertical Take-off And Landing Type Unpiloted Aircraft(エレクトリック バーチカル ランディング タイプ アンマンド エアクラフト)。
通称『EVTOL』イーブイトールと言われているもの。
その社用車の中にいるのは、
件のヨーシキワーカさんと、
Unlimited Electrical Contractor(アンリミテッド・エレクトリカル・コントラクター)のミシマ・カレンさんだったの。

『おいおい、いい年したおっさんなんだから、お目当ての彼女さんの1人や2人ぐらいいるだろ?』
『……』
『俺は、情に熱い漢だ。決して誰にも言わない……!
男同士の硬い約束だ……!
絶対に守る……!!
この口が滑っても、誰にも絶対に言わない! もちろん、お前の親父さんや弟さんにもな……!』
『……』
『おいおい、無視か……!? 恥ずかしがっていても、何1つ進まないぞ……!?
ここには俺達2人だけ、誰にも何も言わないから、安心して言え!!
誓って誰にも言わないと約束する……!!』
『……』

【――それは誓って、男同士の堅い約束だったそうよ?】
【でもね。先にその約束を破ったのは――】
【そのUnlimited Electrical Contractor(アンリミテッド・エレクトリカル・コントラクター)のミシマ・カレンさんだったの!】

『おいおい、何か1つヒントぐらい言ったらどうなんだ!?』

【そのターゲットは、愚かにも墓穴を掘ったそうよ……】
【その人を信じたのが、運の尽き……】】

『そうですね……。ミシマさんとは長い付き合いになりそうですし、あなたを信じて言います』
『……』
ニヤリ
と笑みを深める軽薄な男。

【ニヤリ……と笑みを深める軽薄な男……】
【その人を信じて、言った事が『取り返しがつかない過ち』だったそうよ……】
【それからよ、ヨーシキワーカさんの人生が、大きく狂っていったのはね……】

『『私』が好きな人は、公共機関にいる女性の方です。自分にはもったいないぐらいの人で、まるで、そう……高嶺の華のような人です』
『おいおい、それじゃ誰かわからないだろ? もっと絞らないと?』
『……』

【その人は、その人を信じて、誠実に答えたの】
【けどね……それ以上は言ってはいけなかった……】
【訪ねてはいけなかった……】
【人として、不可侵領域(タブー)を犯してはいけない】
【土足で、踏みにじってはいけないから】
【ま……まさか……】
【そうよ、ヒントを与えてしまったの……】
【あぁ……】
【詰まるところそれが、ヨーシキワーカさんの失敗……大いに反省すべきところだったわね……】

『……【マイアミの公共職業安定所』Public Employment Services In Miami(パブリック エンプロイメント サービス イン マイアミ)】に務める人です』
『……』

【それを聞き、笑みを深める男】
【そのターゲット(人)の弱みを握った瞬間だったそうよ】
【だから、あんなに呵々大笑を上げたの】

『なんて事だーーなんて事だーー!!!』
『……ッ……ッ』

【その人の弱みとなる事を握った瞬間……】
【これ以上のものは、さぞなかったでしょうね!?】
【自分のいいように言いふらし、その人を舎弟にできることだって、できるでしょうから……!】
【いわゆる、丁稚奉公の操り人形ね】

『……ッ、あの誰にも言わないでくださいね!?』
『ああ、もちろんだ! 誰にも言わない、誓ってな……!! お前が俺のところで順純であるならばな……!?」
「……!?」
不意に思うヨーシキワーカ。
(順純……?!)

【それが妙に引っかかったそうよ……】
【もう間違いないでしょ!?】
【フッ……そうかもね……】

『そうかーー! そんな素敵な女性がいるんだな? んっ? もしかしたらそれは、俺の知り合いにいるかもしれないな!?』
『!?』
(知り合い……?!)
そんな妙な偶然はあるのだろうか。
『もしかして……俺のところに来ていたあの紹介状の女か!?』
『……』
俺はそれ以上、答える気はなく、黙んまりを決め込む。
『オイオイ、お前マジか!? あんな女がいいのかよ!? 俺だったらあんな女勘弁だぜッ!?』
『……ッ』
『もっと広い世の中見渡せば、あれよりいい女が、ごまんといるんだぜ!?』
(……きっと別人……。あの人はそうじゃない……ッ!!)
プイッ
俺は、この人から視線を切り、窓から見える外の景色を伺う。
海岸沿いでは、奇麗なお姉さんたちが、楽しんでいた。
(気を紛らそう……ッ)
俺は、窓から見える外の様子を見て、気を紛らそうとしたんだ。
持ち込んでいる小道具は、
ビーチ用のテント、ポップアップタイプのSUNNNBA YOUTH Beach Tent(サンバ ユース ビーチ テント)。
霧吹きスプレー Bottle and Sprayer(ボトル アンド スプレー)。
日本でいうところのお菓子チューペット、アメリカではICE POP(アイス ポップ)。
その商品名は、DeeBees Organics SuperFruit Freezie 30 Pack(ディビーズ オーガニックス スーパーフルーツ フリンジー 30パック)。
人が球の中に入って、海上散歩できる遊具、Water Walk Water Balloon(水上散歩ウォータバルーン)。
ボートなどに引っ張ってもらって、空中遊泳できる遊具、Dual Line Kitesurfing Parachute(デュアル ライン カイトサーフィン パラシュート)
板とボールを用いて、対面の相手と競う遊具、Surfminton Beach Tennis Paddle Game(サーフミントン ビーチテニス パドルゲーム)
そして、安全面を考慮した先端にバルーンが付いたヨットボードモーター、Yacht Boat Motor With Balloon(ヨット ボード モーター ウィズ バルーン)
若い男女が、各々手段で、楽しげな遊具を持ち寄って、海での遊びを満喫していた。
その時だった。
『こいつわかりやす――ッ!!?』
『ッ!! あの!! 絶対に誰にも言わないでくださいね!!?』
『あーわかってるわかってる! 俺は約束は守る方だからな!?
誓っていう、俺は絶対に約束を破らない男だ!!
今までに一度も、約束を破ったことがない漢だからな……!!』
『……』
俺(わたし)は、心配になりつつも、肺から呼気を絞り出して、溜息をつかんばかりだった。
ハァ……
不安で心配でたまらない……。
(やっぱり言うんじゃなかった……かも!?
ホントに大丈夫かなぁ……? この人に付いていくと……なんだか嫌な気が……!?
……そう言えば朝、この人の奥さんが……!?)
俺は、そこまで思い出して、その回想シーンを取り止めた。
この人と奥さんの朝での会話を持ち出すのは、失礼に当たるからだ。
そうとは知らずこの人は。
『まぁお前の趣味にあれこれ言う気はないがな……!?
俺だったらイヤだぜ、あんな女……!
あいつ、性格キツイし、問題があるからな!! まぁ、『稼いでもらっているし、俺も付き合っていて』なんだがな……!?』
『……?!』
(付き合ってなんだか? えっ、今なんて言った……!?)
『ハッハッハッ!』
馬鹿笑いをするミシマさん。
『……』
唖然と見送る俺(わたし)。

【――不意に疑問と苛立ちを覚え始めたそうよ……】
【勝手に言って、人を侮辱するような言葉使いで……】
【その人を怪しむようになっていくの……】
【言ってみれば、黒だったそうよ……そのミシマさんもヨシュディアエさんもね……】
【その男(ひと)はからかって、冗談半分で、その人の、禁忌領域を犯していくの……】

『他に、その人の特徴は……!?』
『そうですねぇ……。『私』にはもったいない人で……、自分には持っていない能力を持っている人です!』
『……』
『将来的に見て、もしお付き合いするならば、支え合えるような関係として、
そーゆうお互いの能力を上手く、補ってくれる方がいいと思います。
自分には持っていない能力なので……。
その方がきっと、長く、やっていけそうなので……』

【その人はね。その場では決して言わなかったけど……】
【もしも、有り得たらの未来を空想してたそうよ】
【末永くとか、夫婦円満とかね……】

『2人で支え合えるのが、1番だなと……『私』は思います。
自分の親を見ていると、そうだな……と思える時もあるので……』
『フ~ン……そんなもんなんだな……。
俺だったら、可愛い彼女か、美人な人を見かけたら、とりあえず声をかけてみるけどな……!』
『それはミシマさんだからできるんですよ……。自分にはそれがなくて……。
できないから……』
『フン!』
『……』

【その時、そのミシマさんは、人を見下すような態度を取ったそうよ】
【でもね。その時は、そのヨーシキワーカさんも言えなかったの……】
【人それぞれだから】
【能力がある、ないじゃないのよ?】
【それはね。相手の女性の方も、気遣えるのが、いいと思ったからからよ】
【想い合おうとしたわけね】

(小心者だと思うならば、好きに思ってくれていい。俺は、ミシマ(あなた)じゃないから……)
何を言われても、私(おれ)は、受けて立つ気でいた。
もう、好きにしてくれと。

『フ~ン……。そんな素敵な女性がいるなら、声をかけてみてはどうだ?』
『……いえ、止めときます……』
『?』
『彼女にも仕事があるから、それに……誰か別の男性がいて、その人と付き合っている可能性がありますし……?
そもそも結婚してるかも……? そのご迷惑が……。
自分にはどう高望みしても、届かない存在ですよ……そんな……』
『高嶺の花か……』
『……』
それはさっき、自分がミシマさんに言った言葉だった。
『そんな人でも、一声かけて、スッパリ別れた方がいいだろうに……。
その方が次のチャンスを探せるぜ!?
おいおい引きずっててどうする!? 俺だったらそうするけどな!?』
『……』
俺(わたし)は考える。
その心の中では――
(――ミシマさんは、きっと、俺のことを心配してくれて、言ってくれているんだろうな……!?)
『………………』
『………………』
(この沈黙が、その証左なんだろう。
『うん……』
『……』
ミシマ(俺)は、こいつが頷き得るのを確認した。
こいつの話は、こう続く。
『それはミシマさんだから、できる事です。……自分にはそれがないから、勇気が持てなくて……』
『……』
正直、見てて情けない奴だと思った。
こいつには、ミシマ(俺)のような厳しい人間がいて、社会の厳しさが必要なのだと……。
ヨーシキワーカ(私)は、その人、目上の方を、気遣っての一言だったんだ。
うん、当たり障りは、無いと思う。
『………………』
『………………』
流れる空白の時間。そして――
『――……他には?』
『え……?』
『その好きな人の特徴は? やってみたいことは? 何かあるだろ?』
「? え?』
『ここには、俺たち2人だけだ、安心して言ってみろ!?』
『! う~ん……』
『……』
『もし、付き合って、できるなら……。丈夫な子供を産んでほしいから、安産祈願型……かな!?』
『尻かよ!? 大きい方がいいのかよ!?』
『……!?』

【え、言い方……!? 受け取り方が、もしかして違う!? ……な、なんで……!?】

『お前、女性の何をどこを見て生きているんだ!? おっぱいじゃねーのかよ!?』
『……』
『男だったらおっぱいボインの方が好きだろ!?
誰もがそう言うぜ!?
あの職場にいた、男連中の誰に尋ねてもな!?
なのにお前は尻かよ!? ハッハッハッ!』
『……』

『私(おれ)は、真顔でビックリだった……!? こんなにも正直、暴露する人がいるとは……!? それは顔にも現れていた……】

(えええええ、な、何で……ぇ!?)
(『もしかしてホントに、人によって、受け取り方が違う』……?!)
(どう言ったら、いいの~~!?)
『……』
唖然……
とした顔で見送る俺……。
そこでミシマさんが。
『ハッハッ……。あぁ……。そうかそうか……そーゆう素敵な女性がいて、お前は黙っているんだな。そーかそーか……』
『……』
『そーゆう事か……』

【――明らかにダメダメだったそうよ……!?】
【人によって、その受け取り方は、様々だから……】
【人の恋愛事情のもつれだって、考えられるし……】
【人の恋愛事情、それは禁忌領域の1つであって、それを土足で踏みにじってはいけないのよ!?】
【放っておくのが1番なのにね】
【下手に、騒ぎや、はやし立ててはいけないの】
【だって、両人とも気まずくなってね、疎遠となっていくから……】
【だから、無理を推して、付き合わせようとしちゃいけない】
【90%以上の確率で、両者敬遠の中となって、最悪破局しちゃうからね!?】
【だからできる大人の人達は、時々、大人としての意見、そう、助言を下さるのが良くて、できる恋の見届け人なのよ――】


☆彡
【遠縁の親戚】
「――それからよ。その人の人生が、大きく狂い始め、生き地獄に堕ちていくのは……」
「そ……その人の名は……!?」
「ヨーシキワーカ」
「!」
その人の名前には、聞き覚えがあった。……それは、もしかしたらだった。
「初めて、そのどうしようもない問題に勝った人よ……!」
(僕の義兄さんだ……)
遠い外国の地、アメリカで、スバルの親戚の義兄がいた。
その人も生まれながらに、不思議な生き物が見える眼を有していた。

【――この時、クリスティ(あたし)は、スバル君とその件のヨーシキワーカさんが】
【遠縁の親戚である事も知らず】
【そのまま、語り部を続けるのだった――】


★彡
【頭痛、虫の報せ】
【――海岸沿いを見渡せば、金髪ブロンドヘアの娘(こ)達が、水着に着替えて、大はしゃぎしていたわ】

海岸沿いを見合わせるところで、1人、ヨーシキワーカは考えていた。
呟いた一言目は。
『やってしまったな……』
キィーン
『クッ……頭にノイズが走る……!? 何なんだこれ!?』
頭に痛みが走るヨーシキワーカ。
それは不幸な歴史へと続く一瞬の一幕。
1.呵々大笑を上げるミシマさん。その後ろには別の人達がいる。
2.囲碁の盤が見える。白石1つに対して、黒石が3つ周りを囲んでいる、最悪の状況。
打ち筋が見えない、最悪だ。
しかも、時間を追うごとに、黒石が増えていく。こちらが段々と追い詰められていく。
キィーン
「!?」
3.倒れる父の様子。弟があちら側についていって、何でこんな事になったのかよくわからない様子。
4.父の棺。泣き悲しむ遺族達。弟は何も言えず、ただ黙っているだけ。
5.ヨーシキワーカも床に倒れ、残された母は、その弟に今後の人生を託す。
「ちょっ!?」
(ちょっと待って!? 危機回避は!? 何かないの――……)
頭に走るノイズは、そこで潰えた……。
夕焼け空が沈み、辺りに影が差していき、いつの間にか夜になる。
ホーホー……
不意にアントラローダイトが尋ねる。
『……どうする?』
「……何か嫌な予感がする……。とてつもなく嫌な……」
顔を上げるヨーシキワーカ。
不意に、夜の海岸沿いの砂浜を、カニが横切っていく。
シャカシャカ
米国(アメリカ)のカニの種類は、色々あり。
主にBlue Crab(ブルークラブ)を初め、Dungeness Crab(ダンジネスクラブ)、Peekytoe Crab(ピープトゥクラブ)、Soft-shell Crab(ソフトシェルクラブ)。
次に足が美味しいカニは、King Crab(キングクラブ)、Snow Crab(スノークラブ)。
次に爪の部分が美味しいカニは、Stone Crab(ストーンクラブ)、Jonah Crab(ジョナクラブ)と様々だ。
「……」
俺はそのカニを、眼で追う。
それはダンジネスクラブだった。
ダンジネスクラブは、過去にこのカニが多く水揚げされたワシントン州(Washington,WA)、その州と、
Dungeness Spit(ダンジネス スピット)、その尖った砂、
その2つを掛け合わせて、尖った砂州に由来し、
ダンジネスクラブと命名されたらしい。
このカニは、アメリカの一般的なスーパーでも、比較的リーズナブルな価格帯で購入できるんだ。

【今宵の月は、二日月(ふっかづき)】
『Crescent Moon』(クレセントムーン)。
糸のように細い月で、『繊月』とも呼ぶ。
【しかも、優しく光り輝いていた、月暈(げつうん)であった――】
月の周りに光の輪が見える現象。
月に光が雲にある氷の粒に当たり、反射・屈折することで、輪のように見える現象の事。
ヨーシキワーカは泣いていた……。
その月の光が、温かく見守っていた……。


TO BE CONTINUD……

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