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第3章の第75話 どうしようもない問題2




★彡
【ヨーシキワーカの守護霊の彼女 二卵性双生児の吸収された一部の細胞】
【――その日、俺は夢を見た】
【久しぶりに会うのは、守護霊(彼女)の姿だった――】
『久しぶりだね……お兄ちゃん……』
『お前か……XXX』
『うん』
【彼女にホントの名前はなく、どうやら昔の記憶を辿るに、この世に生まれることなく、俺に吸収された存在だ】
【二卵性の双生児だったらしく、死に際にその細胞の一部が、俺に溶け込み、こうして夢の中で出会っている】
【若い時に出会っていた事が多く】
【つい最近では、年に数回しかあっていない……】
【曰く、制限付きの命の期限があるらしく、こうして夢を通して時々会っていたりするんだ】

(細胞分裂にも、破壊と分裂、その再生の過程で、いつかは死ぬ……という事か……)
『~~♪ ~~♪』

【彼女が好きなものは、歌だった】
【彼女の容姿は、どことなく俺や母(モム)に似ていて、どことなく、俺が女の子だったらの姿なのだろう】
【美人かそうではないかと言われれば、まぁ、容姿が整っているというのが、筋だろう】

『~~♪ ~~♪』

【そんな彼女にも、実は名前があったりする】
【当初は名前がなくて、ホントに困ったものだった……】
【彼女から、名前が欲しいと尋ねられた】
【親兄弟にその話をして、打ち明ける訳にもいかず……】
【また、迷惑をかける訳にもいかず……】
【余計な心配をかけたくなかったから……】
【だから、これは、2人だけのヒミツ】
【それは、彼女が俺と一緒に、半生を共に生きた証だから】
【彼女はそれを、いたく気に入ってくれた】

『……』

【だから、こう思う】
【彼女が生きた証を、どこかに残したいと……】
【それができるのは、少なくとも、自分を置いて他にいないから……】
【だからそれを、どうにかしたかった】


(問題はその方法なんだよな……?)

【その方法だけがわからなかった……】

(彼女の興味を引くもの……。自分にできる事、その趣味……)

『~~♪ ……どう……?』
『うん、中々良かったよ』
『うん!』

【俺は彼女の歌声を褒めた】
【彼女が好きなものが、歌だったから】
【もしかしたら、うちの中で一番うまいのは、彼女なのかもしれない……】

『歌か……?』
『?』

【――それが使えるかもしれないと思ったんだ】
【これは後日談の話だが……】
【ある作品の中に、彼女の名前と、彼女の歌の元になったものを、忍ばせたいとも考えていた】
【その世界では、彼女が生きているから……】
【だから、これは彼女が生きた証だ】
【――だが、そうもいかないのが重い現実だったりする……】
【なぜなら、夢から目が覚めると、その日あった出来事を忘れていて、ノートを取る頃には、その部分が抜けているからだ】
【これには彼女を推しても、苦い顔を浮かべていたのを忘れられない】
【そこで、2人で話し合って、決めたのが、俺とあたしの2人で、小説の土台を作り、彼女の作曲をひっそり忍ばせる事だった】

『……』
『……』
【――だが、今日この日だけは違った】
【あの夢、虫の報せを見たからだ】
迷いが生じる、俺たち、あたし達。
けど、あたしは顔を上げて、お兄ちゃんに、未来を変えて欲しかったから。
その手を向けたの。
「!」

【――彼女は、夢の中で、夢を通して、俺にそれを見せてくれた】
【夢の内容は、こんなものだった】
【1.先ず、父の棺がキッカケで、俺の人生は狂い、母はその弟に今後を託す】
【迷いが生じていた弟。何でこんな事になったのかよくわからない……】
【父の昔通っていた会社の人たちもそうで、何かしらの動きがあっていた】
【2.余波はそれだけに留まらず、電気のミシマさんや、昔の会社の人まで波及し、ヨシュディアエさんでさえ、追い立てられてしまう】
【苦悶の表情を浮かべるヨシュディアエさん。誤った情報を取り次いでまわって、その場を何とか凌ごうとする】
【後でとんでもない目に会うのに……】
【3.次に見たのは、電気のミシマさんに誘われ、一緒に社用車に乗り込むも、ミシマさんのハンドルさばきが原因で、交通事故にあい】
【全身不随になってしまう自分の姿……】
【ミシマさんは軽傷で済み、その後は、普通に社会人人生を送る】
【そこへ目をつける弟の姿】
【4.母は、嘆き悲しんでいた。弟も、頭の中がもうメチャクチャになっている】
【逆襲を誓う】
【5.次に見たのは、どこかにいるミシマさんの息子さんが、ドアを開けて、そこへ警察の方が流れ込み、その現場を現行犯逮捕されてしまう姿】
【首を折り、その人の人生がメチャクチャになってしまう】
【6.次に見たのは、昔の会社で、いったいどーゆう経緯かはわからないが……】
【倒産まで追い込まれたことだ】
【7.ミシマさんからヨシュディアエさんに取次ぎ、弟からもヨシュディアエさんに取次ぎ、もう頭の中でメチャクチャになっている】
【で、まったく関係のない別の誰かのせいになっていく……】
【何でこんな事になったのかよくわからない……】
【8.左右にいるのは、ミシマさんと昔の会社。それの選択を迫られた。……どっちを選ぶのか!?】

『……』
『……』

【彼女は、今後の人生の決断を、俺に求めていた】
【どっちを選べば……!?】
【俺は、その日、その段階で、選ぶ事はできなかった……】

『……』

【彼女は、そんな俺をじっと見ていて、何とかしたいと考えていた】
【助けたいと……】
【――その最悪を回避するために……――】


☆彡
【もしかして夢見!?】
クリスティさんから、その話を聞いた僕たち、あたし達は。
「――まるで夢見だわ」
「!」
その声の発信者は、恵アヤネさんのものだった。
「力は、とても矮小かもしれないけど、姫様……そう、チアキ様と似た力かもしれない」
「……」
「……」
その話を聞く僕たち、あたし達。
続いて恵ミノルさんが。
「夢見か……その話がホントであれば、その人はその未来を変えたことになるな……!」
「ええ……!」
ミノルさん、アヤネさんと言い、その奥様が頷き得る。
そしてクリスティさんが。
「……経緯はどうあれ、その人が関わった事で、『どうしようもない問題』が『特殊集団詐欺事件』だと明るみになったのは、間違いないわ!」
「……」
「……」
僕たち、あたし達は、真剣な顔で、クリスティさんを見詰める。
「そして、その中で、その人は、深い闇の中、扉が見えたそうよ」
「と……扉!?」
「えっ!? どーゆう事……!?」
「う~ん……あたしもよくはわかんないんだけど……。
自分1人の力では、その奈落の闇の中、光も音も何も感じないから、このまま戻ってこられなかったそうなの……。
で、守護霊(彼女)の声を頼りに、どうにか意識を浮上して、
開けたのが、3つ目の扉だった訳。
で、その時、偶然にも垣間見えたのが、第4の扉だったそうよ?」
第3の扉を開け、偶然にも、第4の扉を確認した人がいた。
その人の名が、ヨーシキワーカ。
クリスティさんの話は、こう続く。
「――その人の言葉を借りれば、『集中力』がカギになっていることは間違いないわ……!」
「『集中力』……」
「第1の扉が、それに集中していれば、音が遠ざかっていき、目の前に迫るような感覚がある
また、それに熱中していれば、他の事を忘れて、時間経過すら、忘れていることもあるそうよ?」
「それなら、まだ何とか……わかるよね?」
「うん……」
そう、それぐらいの扉なら、ほとんどの人が開けている。
ほとんど無自覚で。
「で、第二の扉が、覇気と呼ばれるもので。
自分の意思とは関係なしに、相手方の人に重圧(プレッシャー)を与え、気持ち悪さや嫌悪感、汗の発汗、息苦しさを与えたことがあったそうよ。
ゲームの場で、相手のお子さんに不快感を与えてしまった事があるそうで、
お母さんが、その弟さんの様子に気づき、その子を連れて、その店を離れていったそうよ。
……また、さっきの第1の扉とは逆で、
音が遠ざかっていたものが、うるさく聞こえたぐらいで。
本人もそれを気にしてて、
親や弟が、体外に発散するタイプなら、
自分はその逆で、抑え込んでいたそうよ?」
「えっ? 覇気……!?」
「オイオイ、覇気って、それってどう使うんだ!? ほとんど誰もが無意識なんだぞ!?」
これにはスバル君も驚き。
ミノルさんも、さぞ慌てていたわ。
そこで、クリスティ(あたし)がこう言うの。
「そうね……。国民の代表を決めるスピーチの場でも、偉い人が、覇気を使っていることが、まま、あるわね!
その人の言葉を借りれば、何か秀でた能力・技術があれば、普段よりも早く、その作業を終わらせることだって、できるらしいわ!
それが集中力、覇気の使いよう!
覇気にも、色々なタイプがあって、人によって、できる事とできない事があるそうよ?」
「いろいろなタイプの覇気か……」
「できる事とできない事か……なんだか難しそう……」
アユミちゃんは、何となしに考えて。
アヤネさんは、何かしら秀でた得意分野ならば、それができるのかも……と思うのだった。
「問題は、第3の扉以降なのよね……」
フゥ……
とこれにはあたしも溜息をついちゃう。だって。
「その人も、初めてその1回だけで。
偶然にも、その扉を開けて、第4の扉まで、垣間見えたそうだからね。
……だから、やり方なんてわからない。
ただの偶然だったから。
息継ぎができないから、彼女の声がなければ、そもそも、途中で事切れていたそうよ?
そーゆう危ない面もあるって事!
偶発的な何かの能力らしいわ!」
「……」
【――一同、これには考えさせられる】
【ヨーシキワーカは、そのどうしようもない問題に直面した時、これを偶然にも、第3の扉まで開け、第4の扉まで垣間見たのだ】
【初めての1回で、ただの偶然だったらしいが……】
【いったい、どんな景色だったのだろうか!?】
【そして、スバルは――】
「――同じ人間なら、僕たちにもできるかもしれない……!」
僕は、思わず、自分の握り拳を見ていた。
「……」
「……」
「……」
期待の目を向けるアユミちゃんに、クリスティさん、アンドロメダ王女様。
「フッ……」
(そんな扉ぐらい、開けていくのじゃスバル!! お前にはその素質と資格がある!! そ奴とはまた違った可能性がじゃ!)
大いにわらわは、こやつを気に入り、期待の目を向けておったわ。


★彡
【仕掛け人と詐欺女をほのめかす関係 ラブホテルと盗撮の仕込み】
社用車の中にいるのは2人。
ほとんど私服姿に近い、電気工事会社の代表のミシマ・カレンさん。
キチンとした作業着に身を通している姿のヨーシキワーカさん。

【――その件の事件の被害者は、その加害者のところに3日間だけ入社していたらしいわ】
【その3日間だけいたのが、被害者(ヨーシキワーカ)さんに取って、幸いだったのかもしれない……】
【そのどうしようもない問題は、その3日間が過ぎた後で、突発的に起こったの】
【だから、多くの人が知ったのは、その3日間が過ぎた後なのだから、大いに疑問に思えたのよね……!?】

『――そう言えば昨日聞いた話で、誰なんだ!? お前の好きなその女の職員さんは!?』
『……』
『……無視か……!』

【――俺は昨日この人に、想い人がいる働いているところを教えてしまった……】
【それが最大の失態だった……】
【だからせめて、その人の名前だけは、この人に言わないことに決めたんだ】
【だから、遠回しにする必要があった】

『黙んまりだな……こいつ……。
昨日、お前の親から電話があったんだぞ!? いったい何で泣いたんだ……!? こっちがこんなに出してやるってゆーのに……!?』
『……』
『シカトかよ』

【どうやら、父(ダダ)から、ミシマさんの方に電話がいったらしい】
【今日のミシマさんの様子が不機嫌なのは、おそらくそれだ】
【まぁ、自分のせいである事は、概ね間違いない】

『……』

【昨日の夜見た、あの夢の内容も気になる……】
【この人も関わっていて、警戒すべきかもしれない……】
【何かの虫の報せなのかも……】
小さく頷き得る俺。

『……じゃあ、話題を変えてやるか!?』
『んっ?』
『お前はその好きな人と付き合う事になったら、何がしたいんだ……!?』
『そ、そうですね……う~ん……』
『……』

【今日の俺は、昨日の俺とは少し違った。間を少し置くことを思い出したからだ】
【さすがに昨日みたいに、即答で答えていては、墓穴を掘り兼ねないからだ】
【だが、あからさまに、即答からじっくり考えてからに変えたのでは、この人に不審がられる】
【だから、一般常識的なもので、こう答えたんだ】

『まず、映画館からですね……!
2人で映画を見に行って、その後、どこか食べに行こうかと考えてます!
でも自分、知っているところが少ないから。その人に迷惑をかけるかもしれませんね……? さすがに……」
『うん……うん……なるほど……2人で映画館に行って、その後ディナーにか? あまりパッとしないな……。
どこにでもありふれていて、お前の顔みたいにパッとしないぞ?
何も面白みがない……』
『……』

【――このミシマ(人)さんって人は、今言ったみたいに、入所当初から、人を軽蔑するキライがあり、人の反感を買うのが上手い人だった】
【そうやって、俺を怒らさせ、ここから出て行くように、仕向けてさせているようにも見えた】
【喧嘩を売られても、買ってはいけない】
【あくまで自分とミシマさんは、部下と代表なので、ここで喧嘩を売ってしまえば、俺の負けになるからだ】
【だから、俺は、ツーーン……としていたんだ】
【だから、俺はこの時期から、辞めるタイミングを見計らっていたかもしれない】

『ハァ……野郎と社用車の中で2人きりというのもな……。せめて後ろの席に、誰かが乗っていればな?
お前みたいな、むさ苦しいやろうじゃなくて、美人さんだったら、どんなに良かったか……』
『……済みません……むさ苦しい野郎で……』
『チッ、歯向かってこないか……こんなにやってるのに……!!』
『……』
『面白くねえ!! お前じゃなくて、前の奴だったら、上手くここから追い出してやったんだがな!!」
『……』

【――どうやら前の人がいて、この人に会ったたことで、ここから追い出されたらしい】
【そう言えば、この人の所へ入る前、職業安定所で、この人の名前が、少し上がったような……!?】

『――じゃあ何か!? お前は何も言わないつもりか!? その場合でもここから置き去りにしてやるんだからな!?』
『聞いてますよ?』
『フンッ、どうだか……!?』
どうやらミシマさんは、俺を試していたらしい。
そんなのに乗る気もないが。
『もう一度言うが、あまりパッとしないな……! 他に何もないのか……!?』
『はい。自分今まで生きてきた人生の中で、、そのぅ女性の方と付き合った経験がないんですよ。
前にいた会社でも、確か同じことを言った覚えがありますが……。
あっさり彼女に振られて、それ以降その人とは会っていません……」
『そいつは?』
『確か食堂で言った覚えがあります』
『う~ん……なんか繋がらんな……お前と話していると……。……何でだ!?』
『……』
『さすがに、今から、お前が昔いた会社に行って、それを訪ねるわけにもいかないしな……! そんな事したら、さすがに俺に印象が悪いだけだし……』
『……』
この話題はこれっきりだった。
『で、付き合ったら他に何がしたいんだ?
さすがにその彼女さんと2人きりでデートして、手を繋ぐことが目的じゃないよな?』
『ええ、2人きりでデートして、手を繋ぐだけじゃないと思います』
『さすがに今の時期じゃ、まだ夏じゃなくて、春だから……海やプールって訳にもいかないよな……!? その彼女さんの水着姿も拝めないだろうし……』
『……えーと……まだその人とは付き合ってもいないので、何も起こらないかと……』
『……』
『ここでしっかり働いて、お金を貯めてから、その人と付き合ってみようかと考えています』

【――う~ん……無難だ。何も当たり障りがない】
【この人の顔に泥を塗る心配もないから、1番いい逃げ方だ】
【でも、この人がこう言ってきて、その対応には、さすがの俺も、正直まいった……】
【何で、そんな事を言い出したんだろう――】

『おいおい、ここにずっといる気か!? お前の能力を活かせそうなのは、ここじゃないのだから、設備管理(むこう)に行けよ!』
『いえ、自分、ミシマさんのところに入社したので、他のところにいくのは……さすがに……』
『クソッ、何でこうなった!?』
ブツブツ
独り言を言い出すミシマさん。
『こんな奴と2人でいるより、俺1人でまだ働いていた方が、まだ稼ぎがいいぞ!!
こんな奴を雇っていても、こっちには何のメリットもないし、出て行くだけだ……!!
どうやれば、ここを出て行くんだこいつは……!?』
『……』
『ちょっとだけ、雇うつもりだったのに……!! 何かこいつを追い出す、いい知恵は……!?』

【ミシマさんの1人事は、どうやら自分をここから追い出したかったらしい……】
【奇しくも、自分と考えている事と同じだ】
【問題は、その理由なんだろうな……!?】
【――実は、親からは、ミシマさんのところで働く以上、そこで長くお世話になるので、その人に失礼があってはいけないと言われていた】
【親からも注意されていたんだ】
【よくよく考えてみれば、板挟みにあっていたのは、俺で】
【その後、被害に会うのは、ミシマさんだったのかもしれない……】
【それが件のどうしようもない問題に涙点していく……――】

『……』

【何で、あんな事になったんだろうか……!?】
【あぁ、ドクターイリヤマやドクターライセン辺りだな……!? もしくは前にいた昔の会社か……!?】

『ハァ……どうしたら……!?』
『……』
『あっそうだ! なぁ?』
『はい?』
『お前達、まだ付き合った事もないんだよな!?』
『え……ええ……』
『なら! 先ず付き合うよりも先に、体の相性を確かめるのが先だろー!?』
『!? ……えっ……!?』
『そこで相性が悪かったら、別の女に乗り換えて、あの娘(こ)とはスッパリ別れればいいだけの話じゃないか!? 若くて、美人で奇麗な女によぉ!?』
(うぇええええ!?)
これには、さすがの俺もビックリ仰天だ。
(まさか、そんな事を言い出す人がいるとはッ!? そんなの世の中の女性達が、もしも知ったら、あんた、殺されるぜッッッ!!!?)
『気に入った女と付き合った方が、お前もマシだって!? 断然そっちの方が、やっている最中も、盛り上がるだろうし!
暑い夜になるだろうなぁ~!
俄然、そっちの方がいいに決まってる!
誰に聞いても、同じだって!!』

【いい笑みを浮かべるミシマさん。何だかこの人が恐い……】
【そんなに俺を、ここから追い出したいのか……!?】
『あっ、いやでも……。心に決めた人がいるなら、その人、1人だけの方が……』
『……』
『……いい……と思います……』
『……』
それを聞いたミシマさんは。
『う~ん……う~ん……よしっ! 合格だな!』
『!』
『もしもお前が、軽はずみな発言で、さっきの問に即答してたら、ここから追い出し、あの娘(こ)にコッソリ教える気でいた!』
『……』
『実は俺たち、ちょっとした知り合いなんだ……。
さすがに俺でも知っていそうな近くのお姉さんで、そんな奴には任せられない……と思っていたんだ。
その点、お前は大丈夫だ! 合格だな……!
生半可な野郎に、あのお姉さんを任せられないと思っていたんだ……!!
お前ならいいぞ!?』
(えっ!? 何言ってんの!? どーゆう事!? 知り合い? 俺でも知っている近くのお姉さん……?)
『まぁ、そんなお前なら、正式に雇って、ちょっとぐらいこっちからお金を出してやってもいいかな……!?』
『……』
俺は、話が訳がわからなくなった……。
ミシマさんの話は、こう続く。
『2人とも、俺のところで雇う事になるんだし、ちょっとぐらいはな……!?』
『いや、でも……』
『あ~気にすんなって!! 俺とお前の中だろ~~ォ!?』
『………………ンッ!?』
この頃になると、俺は何も言えなくなっていた……。
何か、この人に不信感を抱く。
『ん~~!? この辺のどこかにラブホテルがないかなぁ!? ちょうど2人が入れるぐらいの……! ちょっと記念すべき日なんだけどなぁ……!?』
『………………』
唖然
と見送る俺。
社用車に乗車中の2人。
電気にミシマさんは、それはふざけ半分で、からかい上手で、人をおちょくっていたんだ。
いや、それが何で、どうしてこんな展開になる訳!? あんた!?
俺には、訳がわからなかった……。
『いや……ないかさすがに……。ちょっと残念だな……』
ニヤリ
と顔を浮かべたまま、ねめつけるミシマさん。
これにはさすがに俺も。
『ウッ……いや……さすがにそれは……、あの人も、自分の仕事があるから……!』
『おいおい、仕事と言っても、さすがにあそこでただジッと座っているだけの楽な仕事だろ~ォ!?』
『……』
『それに比べて俺たちの仕事は、電気を取り扱う以上、いつかは死んでもおかしくない……だろ!?
ちょっとぐらい、夢見てもいいじゃないか……さすがにィ……!?』
『……』
『きっと柔らかくて気持ちいいんだろうなぁ~! あれだけモノを持ってる娘(こ)は、ここ等辺一帯を探しても、そうそういないだろうぜ!?
俺も一度でいいから、あの品良くお高く止まった、あのとんでもなく大きいおっぱいを、
それこそ形が壊れるまで、揉みくちゃに揉んでやりたいと思った事があったんだ!! いつも、近くで見てたからな!!
どんな声を上げるんだだろうなぁあの女も……!? 自分の肢体(からだ)をそんな風にされたら……!?
どんな声で喘ぐんだ!?
どんな泣き声を上げるんだろうなぁ~~!?
XXX(ピー―ッ)!!
……試しにお前やってみろよ!? 俺の言うとおりに……!?』
『……』
『後でお前にどうだったかを聞くから、その時の事を後でコッソリ教えてくれないか……!?』
『……』
『羨ましいなぁ~! 今が旬(しゅん)の時期じゃないのか!?』
『……』
『さすがにこれ以上待っていたら、機が熟し過ぎて、顔面皺くちゃのばあさんになっちまうだろうぜ!? おまえはそれでもいいのか!?』
『……』
『俺は今が食べ頃だと思うがなぁ~……!? お前はどうなんだ!? そんな女がいいのか!?
わかんない奴だな……。
いいところ、おっぱいが大きいだけのおばさんになっちまうんだぜ!?
俺だったら、耐えられないから、今のうちに、喰っちまうけどな……!?
あれだけの女は、アメリカ本国中探し回っても、そうそういないだろうし……!
もったいねえな~!』
『……』
俺は黙って、コクッ……小さく頷き得る。
それを見たミシマさんが。
ニッ
と気持ち悪いほどの笑みを浮かべ、こう言ったんだ。
『じゃあ、後で2人で、ラブホテルを探さないとな!』
『ッ!?』
『お前達2人が、入っていくところを、ここから観といてやるよ!?』
『へっ!?』
『ハハッ! 冗談だって冗談! さすがにジョークだって、お前もわかるだろ~ォ!?』
『……で、ですよね……!?』
『ハハッ! 当たり前じゃないかー!? お前と一緒にいると、ホントに話が弾んで飽きないなぁ~!』
『……』
『チッ、こんなに言っても、突っかかってこないとはな……!』
『……』
――そして、ミシマさんは、こう小さい声で言ったんだ。
(――本気でくっつけさせちまうか……!?)
(後であそこにあれを仕込んで、こいつ等2人にも後でちょっとぐらい金を充ててやろうか!?)
(少しぐらいでいいだろうし、こいつならちょっとぐらいで、わかってくれるだろうしな……!?)
『!?』
信じたくなかった……。
おそらくはこーゆう事だろう。
俺とその人がくっ付いたら、ミシマさんの勧めで、ラブホテルへ連れ込まれて。
そこで用意……いや、予め仕掛けてあった盗撮用の機材で、
その人の生まれたままの姿が、盗撮されてしまう危険性が……ッ。
そうなった後、2人に金が充てられるということは。
そう、海賊版のAV(アダルトビデオ)が容易に想像できたんだ。
『……ッ』
『フン、さすがに小さくて聴こえないか……?』
(もう潮時かもしれないな……)
フッ……


☆彡
過去から現在の話に戻る。
クリスティさんから、その事を聞いたミノル(私)たち、アヤネ(あたし)たちは。
「危ない奴だな!! そのミシマってやつは……!!」
「危ない人じゃないの!? 大丈夫なのその人!?」
「……」
その注意の声を受けて、これにはクリスティ(あたし)を推しても、考えさせられるほどで、大いに頭を悩ませたわ。
そして、顔を上げ、こう言うの。
「――……実は、そのミシマさんは、ある特殊集団詐欺事件グループの1人なの」
「詐欺……?」
「ええ」
アユミちゃんがそう言い。
あたしは頷き得る。
「そのご本人も、かなり危ない橋を渡っていることを、自覚している人でね……。盗撮用の機材を持っているだけじゃないの」
「……」
黙る一同。そして……。
「……どーゆう事?」
「キチンと説明して!」
アユミちゃんが、アヤネさんが、そう催促してきたわ。
それに対してあたしは。
「ハァ……これは、まだ先の展開になるんだけど……。
ヨーシキワーカさんの趣味が、小説の執筆で、
その人のホログラム映像映像出力装置付きマウスから、
ある未公開のメモ帳を、横からハッキングして、覗き見ることができる優秀な人たちがいるの……!
『どうしようもない問題』=『特殊集団詐欺事件のグループ』と覚えてね!」
「……」
一同、その名前を覚える。
どうしようもない問題=特殊集団詐欺事件のグループと。
「……ハッキングという手口はね。
横から覗き見るだけじゃないの……!
情報処理能力や、電気をかじった人なら、それこそ設備管理科の人間なら、そうした秀でた優秀な能力を持ち合わせている……って事よ!
その設定画面から、ウェーブグローバルの回線をOFFにしても、
その人のアカウント便りに、侵入してくることだってできるの……!
また、文字の誤字脱字や、そのメモ帳の一部部分だけを消去し、向こうで勝手に調整する事だってできるわ!」
「えっ!? そんな事ってできるの!!」
「ええ、実際にヨーシキワーカさんがその被害にあって、それを何度も確認しているわ!」
「ウソでしょ……」
アユミちゃんがそう質問してきて。
あたしが、その問答を返し。
アヤネさんが驚き得る。
「……」
これには一同、酷く困惑していたわ。
あたしの話はこう続く。
「……ハッキングできるという事は、どう言う事ができると思う?」
「う~ん……」
「……わかんないわよね……?」
コクリ
頷き得る人達。
「……」
これにはあたしを推しても、頬を赤らめ、恥ずかしさを押し殺して、こう語るの。

「『女の人の裸の生写真』があるでしょ……?」

「「「「「!!!!」」」」」
「それか動画撮影のファイルデータでも、同じことが言えるんだけど……」
あたしは頬を赤らめたまま、顔を合わせ辛く、そう語り。
恥ずかしさを押し殺したまま、あなた達を見詰めるの。
「そうした、一度は、撮られた事がある被害者たちがいて、
そうした被害者たちを尻目に、薄ら笑みを浮かべている人達が、身近に潜んでいるかもしれないって話よ!」
「……」
ショックを禁じ得ないあたし達。
「これは、過去、ヨーシキワーカさんが通っていた職業訓練校にも言える事で、
そうした特殊な技術力を持った人が、いることを仄めかしていた人がいたのよ……!
また、そうした卓越した技術があれば、
そのヨーシキワーカさんの腕時計型携帯端末(フューチャーウォッチ)にアクセスして、
そこから、綺麗なメロディーが聴き取れる音楽レコーダーを、
向こうの人達で勝手に、コピーして焼き増しすることができるって訳!
つまり、何が言いたいのかと言えば……」
あたしは頬を赤らめ、耳の先まで真っ赤にして、恥ずかしさを押し殺して、みんなにこう告げる。
「……若くてきれいなお姉さんたちの、『生まれたままの姿の生写真』が、『こっそり記録媒体などに隠し持っている』ということよ……!」
「「「「「!!!」」」」」
「1ファイル、何千円(8米ドル)ぐらいかでやり取りしているでしょうね。で、夜のおかずにしている訳……!」
「……!?」
不穏な気配を感じる僕。
それはすぐ近くだった。なっなんと女性陣一同が、憤激のオーラを漂わせていたのだ。
「ホホホホ、もしもそーゆう人たちを知っている女性(ひと)がいたら、その人繋がりで、女性(あたし)たちで連絡を取り合わないとね~ェ!!」
アヤネさんが、どこかの誰かさんへ、その顔を向ける――
「どういった報いを与えるべきなんでしょうか……? そういった人達には……!!」
エメラルティさんが。
「あたし達の裸の生写真を……金銭にして……夜のおかずに……ッ!! ヒドイッ!! 絶対に許せないッ!!」
アユミちゃんが。
「もしもそーゆう人たちを1人でも見かけましたら、こちらで、『怪しい人たちリスト』を作るべきでしょうね!!」
サファイアリーさんが。
「さすがに、『社会的制裁』も視野に入れないといけませんね!!!」
シャルロットさんが。
「そうした被害者たちの事を、ちっとも考えてませんね……その男連中は……ッ!! それで身投げする年端もいかない娘や!! 婚期が遅れた女性達も確かにいるのですよ!!」
デネボラさんが。
その隣にいたレグルスが、驚き得る。
そして、クリスティさんがさらに。
「まだ、可能性が他にもあって……」
「「「「「「!? 聞かせて!!!」」」」」
「うん……」
女の人達の裸の問題なので、こうした話題が、もしも、女性陣一同に知れたら……僕としては恐い……。
「……」
恐い……。
「監視カメラがあるでしょ?」
「ええ……」
「それを視聴室で確認できるということは、横からハッキングの手口を活かして、覗き見る事だってできるのよ……!」
「あっ!」
「例えば、それを電気配線での設置工事の時、その商品名と規格番号を控えて、その業者の方に尋ねる事があるでしょ?
そうした流れ作業を通して、商品コードやパスワード、アクセスコード権限などをやり取りして、
その詐欺グループ間で、やり取りしていれば……!?」
「………………」
「どうなると思う……!? それが見れるのよ……更衣室の中でも、その娘の住んでいる部屋の中の映像もね。当然、アングル次第で……その娘の……」
モゴモゴ
あたしは、その先が言えなくなってしまう……。ものすごい恥ずかしいからッッ
「……どうしたらいいの?」
「少なくとも、あたし達にできる手段としては、
その怪しい人たちのご家族の方を味方につけるしかないわ! それこそ、奥様や娘さんなんかを……味方に付けたりね!!」
「!!」
「そう言った人達の力を頼りに、あたし達みんなの力で、『撲滅運動』を働きかけ、そう言った人達に一泡を拭かせないと、いけないって事よ!!」
「なるほど……」
「――……」
「……?」
――それを聞いていたミノルさんが、青い顔をして、恐怖していた。
向いている先は、奥様のアヤネさんだった。
それを見るのは、スバル(僕)だった。
「……」
視線を切り、何となくわかってしまう。
(女神様(女の人達)を怒らせたら……後が恐い……ということか……!?」
ブルリ……
とこれには、僕も恐怖するのだった。
「――で、その仄めかすとは?」
「! ……ヨーシキワーカさんが、まだ職業訓練校に通っていた時期に見聞きした出来事なんだけども……。
その話はどうも相前後してて、いくつか下りがありそうなのよねぇ?」

『うちの学校には優秀で優れた技術者たちがいる! 過去に何らかの原因があって、そこでうちに引き抜かれた連中なんだ!!』
『その経緯は、訳あって今皆さんには話せませんが、そう言った事があったという事実です。
またそうした出来事の中に、偶然にもバカがいたんです!!
どこの世界にもいるんですよね? あーゆうバカは……!
こっちはそーゆう人に、この学校で教わった事を、伝えていないというのに……!』
『おい! お前等、ちゃんと聞けよ! 実際にあった事だからな!』
『ハッキング……盗撮の技術を生かして、仕掛けたところから、遠隔操作で、そうした裸の人達の状況を見て楽しんで、
誰にも知られる事なく、愉悦の笑みを浮かべ、その場にいた連中と何やら怪しい会話をしていたという事です!
そして、そんな人たちですら知らなかった……。
うちの学校にも、そうした事ができる優秀な技術者さんがいた事を……!
後日、そうした金でやり取りしていた現場を押さえ、
警察沙汰になりたくないなら、周りの人達に言いふらせたくないなら、
その人たちと交渉を『持ち掛けました』……!
そーゆう人達と秘密のやり取りを持った方が、時と場合によっては良く、向こうと繋ぎがあった方がいいとする場面もあるからです』

『――オイッ!! 誰だ!? 今日の朝、このクラスのマウスから、アダルトサイトに繋げた恥ずかしい奴はッ!?』
『!?』
今日の朝ッ!?
『前にも言ったが、うちの学校には優秀な技術者たちがいてな……!
例えば、今利用している端末に、こっちから遠隔操作でアクセスして、
その『仕様履歴などを覗き見る』事がだってできる……!!
『過去に消した動画』や『メモ帳』『ファイルなど』を、こっちで遠隔操作して、『復元する事だってできる』んだぞ……!?
だから、言い逃れなんてできないって事だ!! 言い逃れなんて、させないからな……!?
もしも、そんな事をやっている奴が、このクラスの中にいても、探し出せるという事だ!!
こっちから、その使用していた端末にアクセスすれば、今そいつがいる席が炙り出せるという事だ……!!』
『……』
(あぁ、そういえば今日の朝、あいつがこの席で、そのサイトに繋げていたな……? ……ということは、今俺が怪しいという事か……?)
チラッ
俺は、そいつがいる席を見た。
そいつが俺の近くに着て、面白半分で、俺の席からその恥ずかしいAVサイトに繋げたという事だ。
つまり、ヨーシキワーカ(俺)が観ていた事になっている。
今、あいつはその出来事で、顔に焦りが生じている。
(フゥ……やれやれ……)
『どこにいたって探し出せるんだからな!?
だから、そんな恥ずかしい連中に繋がっている奴が、もしも、このクラスの中にいて……!
ここから出て行った後、一人でも、周りの連中にいる会社の連中が見かけたら……覚悟するんだぞ!!
その現場を、現行犯逮捕を取り押さえてやるんだからな!!
後でスゴイ後悔したって、許されないんだからな……!!』
で、クラスの中にいたそいつは、後でその先生に謝りに行った。
それはそうだ。ハーバード大学姉妹校の職業訓練校のホログラム映像出力装置付きマウスを、そんな個人の私情目的に使用したのだから……。
ここには学びにきているのだから。
だから、俺は、この席にいても、その端末にアクセスしていた事になっているだろうが、そんな事はやっていない。
あっちがやった事だからだ。
(――が、どう考えても、俺がいないときに、もしもそーゆう人たちがやっていたら……。
その時の俺は気づかないだろうし、周りからすごい剣幕で言い包められて、反論なんてできないだろうな……。
やれやれだ……)
俺は、嘆息するばかりだった……。

「――ってね?」
「そんな事があったの!?
(御兄さん!? 恥ずかしいなぁもうっ!!)
「で、そのヨーシキワーカさん、ご本人様が語るには、個人の腕時計型携帯端末(フューチャーウォッチ)を通して、
そーゆうサイトに繋げていたら……。
また、メモ帳に書いていたら……。
向こうから、ハッキングの手口で見られていた……って事になってるらしいわよ!?」
「えっ…!?」
「えっ……!?」
えっ……
これには一同、酷く困惑す……。
凄く対応に困る、重大な案件だった……ッッッ。
「……まぁ、試しに試してみたところ、概ね間違いないそうよ……!
そーゆう実験的な事をやって、後日、アヤさんにも話して、事後報告してたらしいからね!
だから逆に、ドクターイリヤマやドクターライセンたちや! ミシマ、ヨシュディアエたちが一挙に、4人も! 検挙されていくの……!!
してやられたわね……フゥ……。
偽詐欺電話口を通して、あんなに大っぴらに、恫喝・恐喝行為をデタラメに働いたのだから……!」
「あぁ……なるほど……」
「だから……か……」
これには、事情をある程度知っていそうなサファイアリーさんもエメラルティさんも、納得す。
「なるほど……」
これには、それを聞いたシャルロットさんを推しても、納得の理解を得られた。
「自己犠牲の結果、ようやく勝ったわけですか……!」
「うん……そうとも取れるわね……!」
「……」
「……」
シャルロットさん、クリスティさんと言い。
これを見聞きした僕も、アユミちゃんも、驚き得ていた。
恥ずかしさを押し殺して、その人は初めて、勝ったという事だ。
「――で、その後は?」
その声は、シャルロットさんからのものだったわ。彼女推しても、その顔はまだ赤く、またその怒りは治まらない……。
務めて冷静加減なのは、さすがだが。
その口ぶりだけは……。
クリスティ(あたし)は、仕方なしに、こう語り継ぐの。
「ミシマさんがお昼を食べるために、自宅に帰ったそうよ。
その時、偶発的に、ヨーシキワーカさんが片頭痛を起こしたの。
頭の中にノイズが走るなどと言って、体調不良をその人に伝えたの――」


★彡
『ハァ~……今日はもう、仕事のスケジュールが入っていないから、もうお前は返っていいぞ』
『はい……済みません……』
『……』
『……』
『でも何もしないのは、仕事上よくないから……。
電気の教本でも広げて勉強をするか?
さっき言ったように電気配線の種類を覚えないと、仕事上の段取りができなくて、使い物にならないからな?
最近は、無線送電といって、その仕様上の種類や方式も、色々と勉強しないと、この業界で中々生き残れなくなるぞ?」
『はい……』

【――無線送電は、『ワイヤレス電力伝送』とも別称で言われ、それにはいくつか種類がある】
【『電磁誘導方式』『磁気共鳴方式』『マイクロ波方式』と呼称されている】
【ミシマさんの電気の得意分野は、施工工事で、その取得免許『電気技師請負業者』Electrical Contractor(エレクトリカル・コントゥラクタ)を活かして】
【大電力の無線送電方式を行う『マイクロ波方式』と謳われているもの、施工工事している】
【あれを見た時には、度肝を抜かれたものだ】
【その手法は、送電ユニットで、電気をマイクロ波に変換し】
【その送電ユニットから、マイクロ波ビームを、受電ユニットへ飛ばし】
【それを受電ユニット側で、マイクロ波ビームを受けて、電気へ変換しているんだ】
【これを、マイクロ波方式と呼ぶ】

『……』
『……』
落ち込み加減のヨーシキワーカに。
なんか頼りない人を見る感じのミシマさん。
さすがにこの世界に入るための、経験値が足りなさ過ぎた。
また、言い過ぎた自分もいる。
これは俺が反省しないといけないな。指導者としても、自身に何かしら問題があるのかもしれない……。

【――何でそんな事になったの?】
それはスバル君からの質問だったわ。
それに対して、あたしはこう答えるの。
【そのヨーシキワーカさん曰く、ミシマさんは、初日目から、人を馬鹿にしたような横暴な態度を取っていたらしいわ】
【隣にいる人に対して、あれこれ言ってきて、こっちが必死にメモを取っているのに】
【それを待たずに、先にドンドン先行していたの】
【また、ある職場では、その当時のヨーシキワーカさんの実力を、3歳児から5歳児程度の幼い子供用のおもちゃの車に見立てたらしいわ】
【で、自分はデカいワゴン車タイプ】
【『お前は、今、せいぜいこの程度実力なんだぞ』】
【『……で、俺は、デカいワゴン車(こっち)の方だからな!!』】
【『玩具車(これ)に乗り込んで、実際にあの車道を走ってきたらどうだ!!』
【『みんなと一緒に走ったらどうだ!? 実際いい勝負になるかもしれないぞ!? ハハハハハッ!!』】
【――と人を馬鹿にするものだったらしいわ】
【………………】
これには僕たち、あたし達、大いにその言葉を無くす。
【これには、さしものヨーシキワーカさんも、大いに頭を悩ませ、怒りを我慢してたそうよ】
【また、人を子馬鹿にしたような態度は、周りの会社の人に言いふらしまくったからね】
【その人が、突っかかってくる反応を見ていたらしいわ】
【それも10回や20回じゃないから】
【よく我慢したわね……】
【また、何も言い返さない人に対して、あれこれ横から言ってきて、よく蔑むんでいたものよ!?】
【で、もう何て言っているのかよくわからないぐらいに、色々と言ってくるから……】
【当然、頭の中が酷く困惑してたそうよ!?】
【その人は、人を待たない人で、『急げ急げ!』が口癖で】
【『他の奴はドンドン先に進んでいるぞ』と、人を下手に急かし、事故を誘発する原因になり兼ねない人』だったからね……】
【当然目に見えて、ヨーシキワーカさんの体調と精神面が、大きく崩れていったのよ……】
【………………】
急げ急げ 現場は待ってくれないぞ
【ハッキリ言って、そんな人とは付き合い辛いし、疎遠となっていくのも、仕方ないわね……】
【フゥ……】
【あの人は、人を育てるようなタイプの人では、無いという事よ?】
【人を潰す事はできても……人を正しく導き、それを育てる人には、向いていない……という事】

『う~ん……明日は予定のスケジュールが入っていないから、休みでいいぞ。明後日の朝、今日と同じぐらいの時間帯で、ここにきてくれ!』
『わかりました。どうもご迷惑をおかけして済みません』
『……』


☆彡
過去の話から、現在に戻る。
「――そうやって、ミシマさんは嘆息し、ヨーシキワーカさんは、帰っていったそうよ……!」
「あれ!? それだと何かおかしいわよ!?」
その声を上げたのは、サファイアリーからのものだったわ。
「『――その日はまだ仕事の予定が入っていて、ヨーシキワーカさんが突然帰った事で、ミシマさんがいい迷惑を被ったそうよ!?
こっちがお昼の飯を食べている時、
車の中にいるはずのあいつが、勝手に帰っていった』……って!!」
「あぁ、それを聞いたのは、ヨシュディアエさん伝いかしら!?」
「へ……?」
「真実は違うのよ。
もう今日の予定の入っていた仕事がもうないから、お昼で終わっていたのよ!
朝の仕事が終わって、社用車で帰っている途中で、ミシマさんが、確かにそう言っていたからね!
だから二度確認するように、そのヨーシキワーカさんに、そう言ったの!」
「えっ!? 帰ってくる途中で2度確認!?」
「ええ、そうよ。……で、その話を取り繕って、ヨシュディアエさん辺りから、こう言い繕った話になるんじゃない?」

『――お昼から出てきたら、社用車の後ろに積んである工具類一式がどこにあったのか? その配置を覚えてもらいたいそうよ』
『工事の途中で、中と外に停めてある車を何度も行き交う以上、工具を取り出したはいいが、元のあった場所に戻せないようでは、モノを無くす原因に成り兼ねないからね』
『実際現場でもそうした人がいて、ミシマさんも、そーゆう人たちを何度も見てきてるからね』
『だから、ヨーシキワーカさんを雇う上でも、一度きちんとした場所で』
『その社用車の中から、一度工具類の入った箱を、全部外に出して』
『全部バラバラの状態で、元あった場所にキチンと戻せるかどうか、試験的に試すそうよ?』
『その講習会を開くんだって』

「――ってね!」
「ヨシュディアエさんがそう言ったの!?」
「ええ、ヨシュディアエさん伝いから、ヨーシキワーカさんに伝わり、それが巡り巡って、あたしに伝わった訳よ!
人の口頭ではなく、ほとんど文書でね!
それなら伝言ゲーム上の誤りが発生し難いでしょ?」
「あっ……その手があったか……!?」
これには納得の理解を示すサファイアリーさん。
ポンッ
と掌の上に拳の下を拳槌の要領で叩くエメラルティさん。
クリスティさんの話は、こう続く。

「後は……――」
『――ヨーシキワーカ君がミシマさんのところで、仕事をする上で、何も買う必要がないわよ!』
『手袋も安全靴も作業着も、何なら工具類一式だって、そのミシマさんのところの会社の経費で建て替えるものだからね』
『だから何も持ち込む必要がなく』
『後で2人で一緒に、どこかの店に買い出しに行こうって』
『そこで2人で、キチンとしたものを買おうって』
『で、ヨーシキワーカ君が、そのミシマさんのところを辞めていくとき、そのすべてをキチンとミシマさんに返せばいいだけだから』
『全部、新品で済ませる必要なんてないわよ』
『作業着なんかは、一度キチンと洗ってから、そのミシマさんに返せばいいだけだからね』
『……だからわざわざ、その安全靴をヨーシキワーカ君が、買う必要がないってことよ?』

「ホントよく覚えてるわね……その人……」
「信じられない記憶力よね……。まぁ文書で書き起こす以上、その流れ作業を思い出しているみたいなんだけどね? ……失敗の連続らしいわよ?」
これには驚き得るサファイアリーさんに。
昔聞いた出来事を語るクリスティさん。人に口頭でそのまま語っているぐらいだから、この人も大概優秀である。
――次いでエメラルティさんから。
「――じゃあ、次の日出て来なかったのは?」
「ハァ……。次の日の朝、そのヨーシキワーカさんの腕時計型携帯端末にこうかかってきたそうよ?」


★彡
【休みの日に悪乗りのミシマ】
PPP……PPP……
『はい?』
『悪い悪い! 今日のスケジュールが入っていた事をコロッと忘れていたんだわ! 昨日、お前が帰る時、伝え損ねていたのを……今思い出したんだわ!?』
『……ハァ……』
『なぁ、今から、出て来れないか!? 悪いな~ァこんな事になっちまって!? さっきまで寝てたんじゃないのか!? 悪ぃな~突然起こしちまって!?』
『……いえ、仕事なんで、出て行きます。こーゆう事は、社会に出れば、よくある事ですから……』
『いや~悪いなぁ~! でも、お前なら、そう言ってくれると思っていたぜー! じゃあ、待ってるからな!』
P……
『ハァ……』

【――突然のミシマさんからの電話だったそうよ】
【でもね、その日は最悪的な事に、いくつか予定が入っていたの】
【そして、その事を知っていそうなお父さんの姿があって、腕時計型携帯端末(フューチャーウォッチ)に目を落としている姿があったの……】
【きっと、向こうで都合上のやり取りをしていたのね】
【そうやって、どうしようもない問題に見立てるために……】
【その人の能力を、向こうで何回か試していたそうよ?】


☆彡
【能力を試験的に試すのも、詐欺まがいの商法の1つ】
「えっ!? 能力を試験的に試す!?」
「ええ、それがどうしようもない問題の負の側面だから……!
実社会で生きる以上、そのスケジュールをいくつもこなさないといけないから、その人の能力を見て、適性を図っているのよ!?
それを見て、自分たちで職業相談と適正能力を、計測しているの……!!
その人が優秀かどうか!?
その人にできる範囲の、限定した求人に絞って、判断していたのよ……ヨシュディアエ辺りがね!?
だから、ヨーシキワーカさんも、当初は驚いたそうよ!?
一週間前までは、設備管理と電気工事士の欄の求人が、合わせて50社以上もあったのに……。
いきなり、『すべての求人がホワイトアウト』していたらしいから……!!
きっと向こうで、端末上の操作をされていたのね……。
ヨシュディアエさんは、その担当の子のヨーシキワーカさんの『求職番号』を知っていたから……!!
で、その事件が明るみになって、
他の職員さんが次々と気づいていったのよね?
ヨシュディアエさんがミシマさんたちと関わってからおかしいと……!!」
「そんな事ができるの!?」
「ええ、その職員さんの『職権乱用』でね!! 大きくその信頼を失ったそうよ……!!
……で、さすがのヨーシキワーカさんも、『ショックだ』といい、その場を出て行ったことがあるんだから!!」
「……」
その話を聞き入る僕たち、あたし達に。

「あの時のあれは、要はそーゆう事だったのね……」

突然その声が上がり、振り向いた先にいた人物は、エメラルティさんだったんだ。
その人は見たんだ。その現場を。
「……」
一同、これには酷く困惑してしまう。
とんでもない問題だった。
その【マイアミの公共職業安定所』Public Employment Services In Miami(パブリック エンプロイメント サービス イン マイアミ)】の信頼が大きく損なうほどの案件だ。
だが……。
「まぁ、それはあくまで、どうしようもない問題を企てた人達のせいで、
ドクターイリヤマやドクターライセンの借金返済分の話を、どうしようもない問題に見立て、結び付けてきたようなものだからね!
だから、そうした問題の『話のウマを合わせる』ように、その職員さんが騙されて、共犯者に仕立てられてしまったの……!
飴まで頂いてしまってね。
で、わざわざ協力までした【マイアミの公共職業安定所』Public Employment Services In Miami(パブリック エンプロイメント サービス イン マイアミ)】には、
何ら落ち度はない……ということよ!!
あくまで、そのどうしようもない問題を、企てた人達のせいだからね!!
だから金輪際、そんな問題事で済ませる案件は、持ってくるなよ!!
そーゆうのはすぐ、手紙でやり取りしてれば、時間をかけてでも、解決できる案件も、時にはあるぐらいだからね!!」
もうっ プリプリ
これにはクリスティさんも、お怒り加減で、可愛らしく頬を膨らませていた。
何だかわだかまりがあるみたいだった。
「――で、話は戻るけど」
「!」
「その後、本人がどういう行動を取るか? 向こうでチェックしていたの。
だから、あからさまだったそうよ?
その日のスケジュールでは、朝8時半だったんだけど……。
その時間帯を既にオーバーしていて……。
なぜか言い繕うように、ミシマさんからお父さん充てに、時間帯の調整の報せが届いていたらしいからね?
……不可思議だったそうよ!?」
「えっ!? マジ……!?」
「大真面目な話よ!
で、お父さんからの社会人としての嗜みで、ミシマさんにご迷惑をかけた以上は、
その行く道の途中で、何かケーキ屋に寄って、何か美味しいものを買って、
それを奥様宛に届けた事になったそうよ?
でもね、待っているはずのミシマさんがいなくて、社用車も出払っていたの……」


★彡
『――あれ!? 何で来たんですか!?』
『いえ、ミシマさんから今日の朝電話がかかってきて、すみませんが遅れました……。……あの、よろしければこれ』
『……』
俺(わたし)は、ミシマさんの奥様にケーキを届ける。
『え? 何これ……?』
『えーと……。今日はどうしても遅れる事になりそうだったから、
うちの父から社会人としての嗜みで、ミシマさんのところで長くご迷惑をかける以上は、こちらからも、何かしら粗品を渡した方がいいって……』
『……』
『行く道の途中で買った、中に入っているのはフルーツケーキです。よければ、家族皆さんでどうぞ!』
俺は、ミシマさんの奥様に、ケーキを手渡した。
それを受け取る奥様。
『……困るんですよねぇ……こーゆう事をされても……』
『……済みません……』
俺(わたし)としても、こうなる事はわかっていた。
――後日、ヨシュディアエさんから、注意を受ける事になる。
『……』
『……あのミシマさんは?』
『……』
奥様と俺は、本来であれば、置いてあるはずの社用車の方を見るが……。そこには何もなかった。
当然ながら、その当人のミシマさんの姿すらない。
――そこで、奥様が嘆かわしい声で言って。
『――フゥ……そーゆう事か』
『?』
『今日はヨーシキワーカさんはお休みの日になっていますよ?
スケジュール帳を預かっているあたしも、そう確認を取っています。
……失礼ですが、いつ、うちの主人から電話がかかってきたんですか?』
『今日の朝、9時ぐらいです』
『……』
『前にミシマさんから聞いたスケジュール通りなら、朝8時30だったんですが……』
『……えっ!?」
それを聞いた奥様は、段々と絞り出すように、嘆きつつ、こーゆうのだった。
『ハァ……そーゆう事か……』
『ッ!?』
『もう主人は、その頃には会社に出ています! 朝、あんなに隠れて笑っていたのはそーゆう事か……!』
『!?』
『もう、どこか遠くの別の会社に出払っていますよ?
昨日までのような、あなたが知っていそうな人の所へ行く、機会が入ってなかったそうだから……。
おそらく、そっちからあなた宛てに電話がかかってきたんだと思います』
『えっ……!?』
『またですか……ハァ……。そうやって主人は、人を試して、反応を買っているんです。
人をおちょくるような悪いところがあるんです。昔から、そうなんですよ……』
『……』
『ごめんなさいね、うちの主人の悪乗りに付き合って頂いて……』
『……』
ヒュ~~
その時、冷たい風が吹いたのだった。
俺は、やっぱりあの人に騙されて、反応を買われていたんだった。

――で、どこか遠くの会社にいるミシマさんはというと。
「プフゥ~~!! 今頃あいつは、どんな反応をしてるんだろうな!? ハハハハッ!!」


☆彡
「酷い話ね!!! そのミシマって野郎は!!!」
これにはエメラルティさんも、大層激怒した。
珍しく怒っている。
「まだまだ甘い方よ?」
「えっ!?」
「実は、その日から数えて、翌日の出来事なんだけど……」
クリスティさんは、その話を語る。


TO BE CONTINUD……

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