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第3章の第73話 かってクリスティが犯した犯罪履歴



「――さて、そろそろ話してもらいますでしょうか? 何でこんな事になったのか!?」
「……」
「……」
「……」
尋ねるは、シャルロットさん。
意見を求められたのは、事の原因と発端となったクリスティさんの生家の美人3姉妹。
次女クリスティ。
3女サファイアリー。
4女エメラルティ。
「……」「……」
3女と4女は、お互いの顔を見つめ合い、頷き得てこう語り出すのだった。
「それは……! あたし達の肉親である、ママを奪ったのが、そこにいるクソッタレの女だからよッ!!!」
サファイアリーさんの口から告げられる驚愕の事実。
それはクリスティさんの肉親に当たる母親の命を奪ったのが、クリスティさんだというものだった。
「え……!?」
と振り返るあたし達。
それは信じ難い出来事。
(やっぱり……)
と思うクリスティ(あたし)。
あれが尾を引いていて、今になっても許してくれないのね……。
それは、娘が母親の命を奪った一大事。
「……」
「……」
その話は、まだ聞いていない少年達と。
今加わったばかりの少女達。
それから場に流れるは、重い沈黙……。
「………………
………………
………………」

――それを断ち切ったのは、母親としての立場から見れる、恵アヤネさんからの問いかけだった。
「――詳しい経緯を話してもらえますか?」
その言葉を聞いて、
コクリ
と頷き得るはサファイアリーさん。
「……いいわ、教えてあげる……! あたしの話を聞いて、あなた達も、この女から縁を断ち切るのね……!」
語句を強めるあたし。
あたしは、恵アヤネさんから視線を切り、お姉さんをキッと睨みつけ、「フンッ!」と鼻を鳴らしたの。
「……」
恵アヤネ(あたし)は、この様子を見て、あくまで主導権は残された姉妹さん達側にあるようね……と思わんばかりだ。
続く言葉を発したのは、末っ子のエメラルティさんからのものだった。
「――恥ずかしながら、うちの姉さんは、
当時、高校生ぐらいの時から非行を繰り返し、何人もの男の人達と体の付き合いをしていました」
「……」
その話は符合する。
クリスティさん自身の話にも、そう出てきたから。
ダイアンさんやルビーアラさんの話ぶりも聞いて、筋書きが通る、相互理解として合致する。
おそらくは事実だろう。
「――そしてついに! 学校から自宅謹慎処分を言い渡されたあの日、
この人は、部屋で産気づいてました……!
初めに気づいたのは、あたし達のママでした……――」


★彡
――当時高校生ぐらいのクリスティさんは、自宅でも軟禁状態にあり、部屋に引きこもっていた。
そのクリスティさんが、着ている服をまくり上げて、自分のお腹を見ると……。
「………………」
お腹が膨らんでいたのだ。明らかに妊娠している……。
その時、ドアが開かれて。
「――!」
「そのお腹、どうしたの……!?」
それが判明したのだった……。


☆彡
「――私達姉妹もそれとなくおかしいと思っていたんですけど……。
ちゃんとした確信は持てなかったの……。
ママだからそれに気づけたんです……」
「なるほどね……」
エメラルティさんの話ぶりを聞いて、
頷き得るアヤネさん。
「……」
その話を聞いて、当人のクリスティさんは、段々と俯いていく……。
「……」
その当人は、まるであの日の出来事を思い出しているようで。
滲むは後悔の連鎖。
でも、もう過ぎ去った時間は戻らなくて……。

「――そうした娘さんとの普段との違いは、母親としては気がかりだから……?」

「!」
その声は恵アヤネさんからのものだったわ。
あたしの意識は、その声もあって浮上したの。
あたしを抜きにして、その話が進む。
「ええ、そうなんです」
「……なるほど……。それは母としては――」

「――懐かしいわね」

「!」
「!」
声を挟んできたのは、クリスティさん。
あたしを抜きにして、話を進めないでくれる?
「……」
みんなは、あたしに注目して、あたしはこう言うの。
「昔、そんな事も会ったわねぇ」
事実だから、ありのまま、悪い子を演じるあたし。
そう、非があるのはあたしだから、それを認める。
「ッ」
「……」
唇を噛み締めるエメラルティに。
キッと睨みつけるサファイアリー。
「フッ」
あたしは、鼻を鳴らしてこう言うの。
「『母』Mom(モム)が亡くなったのは、あたしが大学生時代……だったかしら!?」
「……」
僕はその言葉を聞いて、クリスティさんの大学時代とするならば、スプリングさんが関わっていた頃の背景かと考える。
「……」
「……」
そのクリスティさんの言葉を皮切りに、辺りに流れるは、一拍の静寂……。
この時、アユミちゃんが「モム……?」と何となしに呟き、僕はそれを聞くのだった。


☆彡
――そこへ、静寂を打ち破るように、恵アヤネさんが、話の続きを催促してきたんだ。
「――……続きを話してくれる?」
「……はい」
エメラルティさんは、こう話を続ける。
「『母』Mom(モム)はもしかして思い……。
すぐに病院に連れて行きました……――
そして、検査を受けて、『陽性』だと判明したんです……!」
「!」
この話を聞いて、僕は驚いた……それはまさかの事態……。
(スプリングさんが初めてなんじゃ……?)
僕は、そう勝手に勘ぐっていた。
でも、アユミ(あたし)は知ってる。
「……」
それは、今日、競技場でこのお姉さんから、直接聞いたから……。
初めての経験は、高校生時代。
スプリングさんと同棲するのは、あくまで大学生時代。
そう、クリスティさんは既に、高校生時代の時に、大人の一線を踏み越えていたの……だから、処女ではない。
僕は信じられないと思い、視線を切り、クリスティさんの顔色を伺うんだ。
「……」
「……」
その様を見て、エメラルティさんはこう話ぶりを続ける。
「確実に身籠っているのは明らか……。
じゃあ、誰の子なのか……!?
あたし達はその日、家族全員で姉を問い詰めました……!
誰が父親なのか……!?」
「……」
「……」
哀しそうに俯いていくクリスティさんのその顔は、とても悲しそうにみえて。
当時の自分を、辱め、悔やんでいるようだった……。
僕はその表情を見ていて。
「……」
「誰が責任を持つのか……!? 姉をしつこく攻め立てていたのを、今でも覚えています」
「それでもわからないの一点張りだったのよ!!! この姉は!!!」
「ッ」
エメラルティの話に割り込んできたのは、
怒気のこもったサファイアリーさんの言葉だった。
これにはショックを受けるクリスティさん。
僕はその様子を見て、心ながらこう思うんだ。
サファイアリーさん……。ちょっとキツイ人なのかもしれないな……と。
その言葉には、棘と怒気がこもっていた……。
そのサファイアリーさんの言葉は、こう続く。
「コイツったら何も言わないし、言ったとしても、容疑者が多過ぎた!! 全員が黒だったの!!」
「なっ!?」
「ウソでしょ……じゃあ、多人数と……!?」
まくしたてるサファイアリーさんのその言葉に。
ミノルさんが驚き、
その最悪を考えるアヤネさん。

「――多人数乱交プレイみたいね」

「「「「「「!」」」」」
一同、驚き振り返る。
その声の主は、シャルロットさん。
アクアリウス星人の中には、心が読める読心者(どくしんしゃ)がいるため、それは事実とみて間違いないだろう。
そのシャルロットさんは、ほんのりと頬を紅潮させていた。
「?」
僕はそれを見て、ふと不可思議に思ったんだ。思わず。
(……あれっ?)
と思ったぐらいだ。
シャルロットさんは、その顔を上げてこう言うんだ。
「……DNA検査はしたんですか?」
と。それに対してご家族の方は。
「するわけないでしょ!!! そんな恥ずかしい事!!!」
「……」
それは思った通りの反応だったわ。
この時、シャルロット(あたし)は、こう物思いに更けるの。
(まあできたとしても、仮に卵子の中に入ったのが、複数の男性の精子が入った場合、生まれる子供は……)
あたしはそこまで考えて、続く言葉を取り止める。
それは道徳的に、倫理的観点から考えても、持ち出してはいけないからだ。
場に混沌を持ち込むことになる。それだけは言ってはいけない。
だから、こう物思いに更ける。
(女性用妊娠避妊薬(ピル)を使って正解ね……!)
と。それだけは正しかった。
サファイアリーの叱責が飛ぶ。
「一番母(モム)が怒ったのは、自分の体に『刺青(タトゥー)を入れた』ことよッ!! 母(マザー)は激昂したわ!!」
(入れ墨(タトゥー?)
と少年が何となしに呟いて、
その話の間に割って入るように、アユミちゃんが、こう口を零す。

「――あれ……? ……モムとマザーの違いって?」

「ああ、モムもマザーも日本では母親の事よ!」
「!」
あたしの問いかけに答えてきたのは、クリスティさんだった。……意外。
彼女は他国を渡り歩いているので、その造詣は深い。
「親しみやすい言い方が『Mom(モム)』。よそよそしくて厳格な感じが『Mother(マザー)』」
「……」
「……」
これにはあたし達僕たちも振り返る。
「一般的な日本の文法では、マザーで通っているわね」
「へぇ~……」
「で、そこから日本の文化に定着して、呼びやすく親しみやすい文法になっていくのが、ママというわけ」
「お詳しいですね!」
そう言ってきたのは、恵ミノルさんだった。
「ええ、あたしこう見えて、他国を渡り歩くフリーランスの医者なんです」
「えっ!? そうなんですか!?」
関心を覚える恵ミノルさん。
あたしは、こう話を続ける。
「ええ……。だから基本的に1カ所に留まることはなく、
他国を渡り歩いて、その地域地域独自の文化・芸術・伝統・芸能・風土・そして医療を学んでいたんです!」
「それは凄い……!!」
「フフッ……」
これにはあたしとしても満足気だった。心持ち気分がいい。
でも、サファイアリーと視線が合い。
「……」
「……」
その笑みが薄れていくの……。
フンッ、黙ってなさいよアンタはッ。
それは、クリスティさんの今の立ち場は、今は危うい立位置にあった。それはクリスティさんとしても、気まずいもので……。
サファイアリーさんは、こうキツイ言葉を告げる。それは、本人を侮辱するものだった。
「この娘(こ)の体には、入れ墨(タトゥー)があるの!!」
「……」
それは二度目の言葉だった。その時、
フゥ……
と軽く呼気を吐く音が聞こえたんだ。
僕が振り向くと、その人はクリスティさんだった。
「――そうね……その入れ墨は仲間の証……! 当時のあたしは、自分の体に入れ墨(タトゥー)を入れてたわ!」
「……」
両者の視線が合う中。
クリスティさんは、それを認める。

【――だがこの時、少年は不可思議に思う】
「……んっ!?」
【少年はあの時、下敷きになっていたそのお姉さんを助けていた】
【その柔らかそうな生肌も見ている】
【抱くは猜疑心、不可解……。その心に、イメージに疑問が生じる】

(あれ……何だろう……? クリスティさんのその奇麗な体に、タトゥ―は彫ってなかったような……!?)
それは大きな矛盾点だった。
クリスティさんご本人もそう話しているし、おそらくは事実なのだろう。
だけど、僕は見たんだ。クリスティさんのその奇麗な肢体を。
初めて会ったときは背中姿。
次に見た時は正面からだった。
うん、彫っている形跡は少なくとも見られなかったような……気もする。
「……」
クリスティさんは、『その話題に触れず』そのまま語り出す。
「そうね……。その後は自分の部屋に閉じこもっていたわ……」
当時を思い出し、感傷に浸るあたし……。
それは事実である事を認める。
あたしは冷え冷えとした態度で応じる。
みんなの冷たい視線と、侮辱的な蔑(さげず)む視線が殺到する中で、あたしは、当時を思い出しながら、こう語るの――
「――医学の道を進んだのも、確かその頃……」
「今でも思うわ!! 姉さんが反省して、更正したんだって……!! でもまさか……!! あんな事になるだなんて……ッ!!」
それは後悔からくる怨嗟。
続くサファイアリーさんの言葉は、とても辛辣なものだった……ッ。
「自宅謹慎処分が解けて、学校に通い出してから、また、非行に走るだなんて……ッ!!」
この頃になるとみんなは、厳しい視線を、クリスティさんに向けていた。
この人は信頼できるのか……と。
「………………」
「……」
黙り込むクリスティさん。
「……」
僕もそれを見て、クリスティさんの事を何となく疑ってしまい、その顔色を伺っていたんだ。
クリスティさんは、こう事実を認める。
それは、キツク、悲しいくらい口角をひりつくぐらい吊り上げて――
「――やったわね!
やったのは、また別の悪い人達との体の付き合い……!
そこでいろいろな人伝と技術を得たわ!」
そのクリスティさんの言葉に、問い返すは恵アヤネさん。
「……どんな方法を!?」
それに対して、あたしはこう答えるの。
「……そうね。 知ってる? どんな悪人も警察(ポリス)に捕まるのは嫌でしょ?」
「ええ、そうね……」
「ーーそう、だから、『法の抜け穴』をつくのよ!」
「『法の抜け穴』……?」
「ええ……」
感傷に浸るあたし。
紡ぐ言葉は、その手の話だった。

【――この時あたしは、感傷に浸りつつ】
【チラッと恋愛成就しそうな2人を見るのだった】
「!」
「!」
そう、スバル君とアユミちゃん。あなた達2人を。
【――それは1つの賭け事だった】
【そのまま当時高校生時代の話を持ち出せば、あたしの心証はますます悪くなり、望みは絶たれる……】
【行きつく先は、このグループから外れ、難民生活を余儀なくされる……!!】

(そんなのイヤ!!!)

【だから、その望みを繋ぐためにも、未来ある希望のあなた達2人に持ちかけるの】
「……」
「……」
【だから……ごめんね……】
ここで1つあたしは、軽く呼気を吐き、姿勢を正して、こう語り継ぐ。
【――未来に望みを繋げるために】
【ここ、後戻り不可能地点(ターニングポイント)にて、人生大一番の賭けをする……!!】
【敢えて、この大学生時代に見聞きした『どうしようもない問題』を持ち出したの】

――そう、注意喚起するために。
どうしようもない問題という名の特殊集団詐欺事件を語る。


TO BE CONTINUD……

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