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第13話「焔火、タカシ発見」

「……徹夜3日目の坂本龍馬とスティー◯ン・セ◯ールを融合させて、バットで1時間殴打して、その後2時間天日干しした様な顔してやがるな」

焔火は渋谷の道を歩きながらスマホで警視庁のホームページに掲載されていたタカシの似顔絵を見て、そう呟いた。

「燈く~ん!!」

「ん?」

歩いてる最中に後ろから突然名前を呼ばれた焔火。誰だと思って振り返ってみると、担任の早乙女がこちらに向かって走ってきていた。

「ハァ……!ハァ……!追いついた……!」

彼女は焔火に追いついた。そして非常に息を切らしていた。

「先生……!どうしたんですか?」

「ハァ…!…ハァ……!燈君……!犯人を捜すなんて馬鹿な事はやめなさい……!水咲姫さんを思いやる気持ちは分かるけど……!ハァ……!ハァ……!相手は能力持ちの凶悪な男なのよ……!?ハァ……!ハァ……!高校生が手を出していい案件じゃないわ……!!ハァ……!ハァ……!だからこの件は大人しく……!!ハァ……!警察に任せておきなさい……!!ゲッホ!!ゴッホ!!」

彼女が汗ダラダラかつ死にそうな顔で焔火にそう言うと彼はニィッと笑った。

「ああ、そういう事ならご心配なく、俺ドン引きするくらい強いんで誰が相手だろうと余裕にぶちのめせますよ、んじゃそういう事なんで、チェケラ」

焔火はクルッと振り返り、道を進もうとする。

「コ、コラコラコラ!待ちなさい!」

早乙女は立ち去ろうとする焔火をサイコキネシスで抑え込んだ。

「ぬお!?」

突然体の自由が効かなくなった事により驚いた焔火。

「ちょほおおおお!?離してえええええ!!!」

必死にもがく焔火。

「ダメよ!!絶対行かせないんだから!!」

もがく焔火を必死に抑える早乙女。

「ぐぬぬぬ……!!!行かせてくださいっすわぁぁぁぁ……!!!」

サイコキネシスにより抑えられていた焔火の体がジワジワと少しずつ動いていく。そしてそれを見た早乙女は驚く。

(ぐっ……!!こ、この子……!!なんて力なの!?)

早乙女は何年か前に怒り狂いながら暴れる大人のアフリカゾウをサイコキネシスで抑えた経験があった。アフリカゾウとは地球上に存在する全生物の中で一番パワーを持っている生物である。それらの事を踏まえると彼女は地球上に存在するどんな生物でも抑えられるという事になる。しかし焔火の力はそのゾウよりも強大なものだったのだ。なので彼女の体には今まで味わった事のない尋常じゃないくらいの強大な負荷がかかっていた。

「ぐふっ!!!」

突然早乙女の目、鼻、口からブシャッと血が吹き出た。体に負荷をかけすぎた事によるオーバーヒートである。そしてその後彼女は地面にドサッと倒れてしまった。

「せ、先生!?」

倒れた早乙女に慌てて駆け寄る焔火。そして心配そうな表情を浮かべて彼女に呼び掛ける。

「先生!?しっかり!先生!?」

「う~ん……」

彼女は意識はあったものの目を瞑りグッタリとしていた。焔火はなんかヤバそうだと思いすぐに救急車を呼んだ。そしてその後彼女は水咲姫の入院している病院へと搬送された。

「先生……お大事に……!」

早乙女を見送った後に焔火は水咲姫を襲った犯人タカシを捜すべく足を進めていった。



「───あの~……すいません、この男捜してるんですけど心当たりとかってないですかね?」

あれから少し経った頃。ある公園のベンチに座り、缶コーラを飲んでいたハゲのおっさんにタカシの事を尋ねた焔火。するとおっさんは答える。

「あるよ」

「え!?マジすか!?」

「知りたい?」

「もちろんもちろん!知りたいっす!」

「フッフッフ!いいだろう!ただし条件がある!」

「条件?」

「ああ、近くの自販機に行って缶のコーラを3本買ってきてくれる事さ」

「ああ、別にいいっすよ」

「その言葉を待っとったぁぁぁ!!!」

その後おっさんは焔火に500円玉を渡し、彼にコーラを3本を買ってきてもらった。

「ありがとう!実は数十分前に両足首を挫いて動けずにいたんだよ!」

「え……?そ、それ救急車呼んだ方がいいんじゃないすか?なんだったら俺が病院までおぶっていきましょうか?」

「大丈夫!コーラ飲んでちょっと寝たら治るから!」

「そ、そうすか……」

その後おっさんはコーラを1本がぶ飲みした。

「プハ~!!うまい~!!コーラは人生の讃歌だ!!」

非常に幸せそうな顔を浮かべていたおっさん。その後おっさんは昨夜にこの公園の近くにある元病院だった廃墟の中にタカシらしき人物が入っていったのを目撃したという事を焔火に伝えた。それを聞いた焔火はおっさんに礼を言い、すぐにそこへと向かった。



「───ここか……」

あれから少し走り、おっさんから聞いた廃墟へと辿り着いた焔火。建物からは幽霊でも出るんじゃないかというくらいの異様にまがまがしい雰囲気が漂っていた。

「本当にこの場所にいるのか……?まぁ考えたってしょうがねぇ……入るか」

焔火は建物内へと慎重に入っていった。

「ん?」

焔火は中へ入るとすぐに床のあちこちに大量のトラバサミが設置されているのを発見した。ここで焔火は確信した。ここには誰か住んでるなと。その後焔火はトラバサミを避けながらしらみつぶしに1階を散策した。結果1階には誰もいなかった。なので2階を散策する事にした。

焔火は階段を使い2階へと上がった。そして手術室と書かれた部屋に入った。するとその部屋の中央に置かれていたベッドの上で1人の男がスヤスヤと気持ち良さそうに眠っているのを見つけた。焔火は眠っている男の顔を見た瞬間に「あっ!」となった。なんとその男の顔は手配書の顔と見事に一致していたのだ。

「アイツだろう、絶対」

焔火は男に近づく。すると右足に何か糸の様な物が引っかかった。そしてその直後に室内全体に警報音が鳴り響いた。

「ほわぁ!!??」

タカシは警報音により目を覚まし、バッと体を起こし、辺りを見回した。すると焔火が視界に入った。

「な、なんだてめぇは!?曲者か!?」

焔火を見て本能的に危険を感じたタカシは右腕をブレードに変化させて焔火に向かって斬撃を飛ばした。

「うおっ!?」

突然飛んできた斬撃を焔火は空手の技の1つである"回し受け"で。受け流した。

「なにぃ!?」

斬撃を受け流した焔火を見てタカシは目を丸くさせて驚いた。そして焔火はそんなタカシに尋ねる。

「おい……てめぇか……!?昨夜水咲姫襲ったタカシってのはよ……!!」

「水咲姫?誰だそれ」

「黒髪ボーイッシュ女子高生だよ……!!」

焔火の発言にタカシは「あっ」と何か思い出した様な表情を浮かべた。

「ああ……!!あいつか……!!そうだ……!!俺が襲った……!!殺し損ねちまったけどなぁ!!!悔しいです!!!」

「やっぱりてめぇか!!!このクソカス野郎が!!!水咲姫の仇!!!」

焔火はタカシに右手を向けて、そこから火炎放射器の如く炎を噴射した。

「なに!?」

突然の放炎にタカシは驚いた。そして飛んできた炎をブレードでスパッと切断した。

「なに!?」

炎を切断された事によって焔火は驚いた。するとタカシはそんな焔火に問いかける。

「お前ミュータントか?」

「そうだよ」

タカシの問いに焔火は右中指を突き立てて答えた。

「なぜ俺を攻撃する?」

タカシがそう問うと焔火は眉間にシワを寄せて目をギロッとさせて答える。

「友達(だち)の仇だよ!!お前が昨夜襲った女は俺の友達(ダチ)なんだよ!!」

「あっそ!!正義マンきっしょ!!ぶっ殺してやる!!」

タカシはベッドからおり、臨戦態勢へと入った。

「上等だよてめぇ!!!逆にぶっ殺してやるよボケが!!!」

焔火も身構え、臨戦態勢へと入った。

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