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第12話「お見舞い」

「皆さん……ショッキングなお知らせがあります……実は昨夜に水咲姫さんが夜道で全身を鋼に変える暴漢に襲われて、全身を斬り刻まれるという重傷を負い、病院に搬送されたとの事です」

火の玉高等学校1年A組の教室内。朝のHRの時間に担任の早乙女が黒板の前に立って生徒達に向けてそう言い放った。するとそれを聞いた生徒達は皆こわばった表情を浮かべてザワつきだした。そしてそんな中で早乙女は話を続ける。

「え~、彼女の容態に関してですが、現在傷の縫合手術を終えて、ひとまずは安定しているとの事です、そして今日の10時頃に精密検査をするとの事です、あとそれから……犯人は依然逃走中で警察が現在必死に行方を追っているとの事です、え~……そういう訳ですので皆さん、事件が解決するまで極力夜間の出歩きは避けるようにしましょう、以上です」

HR終了。早乙女は教室から出て行く。そしてそんな彼女を焔火は追いかける。

「先生~!ちょっといいですか?」

焔火に呼ばれた早乙女はパッと彼の方へと振り返った。

「ん?どうしたの燈君?」

「あの~……水咲姫が入院してる病院の場所教えて欲しいんですけど……俺、放課後お見舞いに行きたいと思ってて……」

「あら本当に?実は私も今日の放課後に行こうと思ってたのよ……一緒に行く?」

「はい、じゃあそうさせてもらいます」

「分かった、それじゃあ放課後ね」

その後数時間が経ち放課後になると焔火と早乙女は一緒に歩いて水咲姫の入院している病院へと向かった。

「燈君は水咲姫さんと仲が良いの?」

道を歩きながら焔火にそう聞いた早乙女。

「はい、中々良いっすよ」

焔火は笑いながら彼女に向かってそう答えた。

「あら~……そうだったのね~……あれ?2人って確か中学は別々よね?高校入って仲良くなった感じ?」

「はい、入学式の日に向こうから友達になろうって言ってくれたんすよ、へへ、すげー嬉しかったっすよ……こんなタトゥーまみれの半グレ全開の俺と友達になろうとしてくれるなんて……」

焔火は照れくさそうに笑いながらそう答えた。

「あらあら~……そうだったのね~……何か良いわね~……キュンキュンするわ~……」

早乙女は聖母マリアの様な優しい微笑みを浮かべた。その後2人は歩きながら他愛もない会話を続けた。そして途中で通りかかった百貨店の中へと入ってお見舞い品を買い、それから外へ出てまた歩き、15分程経った頃に病院へと着いた。その後中へと入り、受付で面会手続きを済ませ、エレベーターを使って水咲姫のいる3階の303号室へと向かった。

「うっす、水咲姫」

「こんにちは、水咲姫さん」

2人はベッドに横になりジャンプを読んでいた水咲姫に挨拶を交わした。

「燈……!それに先生も……!」

水咲姫は2人を見てやや驚きの表情を浮かべた。

「お見舞いにきました、はいこれ、お見舞い品」

早乙女は水咲姫に男塾全巻(文庫版)とビッグドラ焼きが8つとオロナミンC10本が入った袋を渡した。

「あ、ありがとうございます……!嬉しい……!」

水咲姫は青天の霹靂の様な表情を浮かべて喜んだ。

「俺からもあるぜ、ほい」

焔火は、こち亀全巻とバナナが7房入った袋を彼女に渡した。

「うわ~……!ありがとう……!私今無性にこち亀読みたいと思ってたんだ~!それにバナナも大好き!超うれしい!」

水咲姫は5歳児の様な無邪気な笑みを浮かべて喜んだ。

「水咲姫さん、どう?体調は?そういえば精密検査ってもう終わってるわよね?結果はどうだった?」

心配そうな表情を浮かべながら水咲姫にそう尋ねた早乙女。それに対して水咲姫はピースをしながら答える。

「特に異常はありませんでした、無問題(モウマンタイ)!けど念のため2週間くらい入院が必要って言われました」

「異常なし……!それは良かった……!」

早乙女はホッとタメ息をつきながら安堵の表情を浮かべた。そして彼女の隣にいた焔火も同じリアクションをとっていた。するとその後、焔火が水咲姫に昨夜の事を尋ねた。そして彼女は2人に昨夜の出来事を詳しく話した。


「───要はあれか……サイコパス野郎かソイツ」

話を聞き終えた焔火は険しい表情を浮かべながら水咲姫に向かってそう言った。

「うん……きっとそうだね」

水咲姫は暗い顔を浮かべ、視線を下に向けながらそう答えた。すると焔火は右拳をギュッと握り、何かを決意したかの様な顔を浮かべた。

「……よし分かった、俺が仇取るわ」

「「え?」」

焔火の突然の発言に水咲姫と早乙女はキョトンとした顔を浮かべた。そして焔火はそんな2人を尻目に病室の窓からバッと飛び降り、どこかへと向かって歩いていった。

「ちょ!?燈君!?どこへ!?何をするつもり!?」

早乙女も慌てて窓から飛び降り、焔火を追いかけていった。全身の傷の痛みでマトモに動けなかった水咲姫はそんな2人の様子をただポカーンと眺めている事しかできなかった。

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