372章 アヤメのスマホ
アヤメのスマートフォンが鳴る。疲労は限界を突破しているのか、電話をスルーしてしまう。
電話のコールは5分にも及ぶ。放置案件でないことを察し、代わりに対応することにした。悪徳セールなどであれば、すぐに電話をオフにすればいい。
「もしもし・・・・・・」
電話からは、女性の声が聞こえる。慌てているらしく、まくしたてるような声が聞こえた。
「アヤメさん、どこにいるんですか。自宅をうかがっても、不在となっていました」
電話の向こう側から、頭を書く音が聞こえる。切羽詰まっているのが、はっきりと伝わってく
る。
「アヤメさんなら、私の家にいます」
「あなたは誰ですか?アヤメさんのお知合いですか?」
ミサキは自分の名前、アヤメとの関係などを伝える。
「ミサキさん、大変失礼いたしました。アヤメさんはどうしていますか?」
「ぐっすりと眠っています」
「すぐに迎えに行きます。アヤメさんについては、一秒でも長く睡眠を取らせてあげてください」
「わかりました」
女性は部下と思われる人に、車を飛ばすように伝えていた。
ミサキは電話を切ったあと、アヤメの瞳を観察。あまりに深く眠っているのか、目を開ける気配はなかった。迎えがやってくるまで、ゆっくりと眠らせてあげようと思った。