368章 サーロインパワー
サナエは6時に目を覚ます。
「ミサキさん、今は何時ですか?」
サナエは眠いのか、目をごしごしとこする。エマエマに負けないくらい、睡眠時間を割いているように感じられた。
「夜の6時ですよ」
ミサキのおなかは、空腹のサインを鳴らす。
「おなかすきました」
サナエを膝枕したままでは、身動きを取るのは厳しい。起きたばかりの女性に、ベッドに入るように促す。
「ありがとうございます。ベッドをお借りします」
サナエは重い足取りで、ベッドに向かっていく。体中を鉛で固定されているのかなと思った。
「サナエさん、体を支えたほうがいいですか?」
「ミサキさんは、ご飯をしっかりと食べましょう」
通常の人なら空腹になっても、一日くらいは持ちこたえられる。腹ペコ=すぐに食事を必要とするわけではない。
腹ペコ成人はすぐに食べる必要がある。もたもたしていたら、立っていることすら難しくなる。
家庭用自販機で、うどん20人前、てんぷらセット10人前を注文。炭水化物、脂肪のオンパレードでおなかを満たしていく。
うどんはサーロインステーキが入っている。高級肉をしっかりと食べて、幸福感をアップさせたい。
サナエはいいにおいを感じたのか、こちらにやってきた。
「ミサキさん。ステーキを食べたいです」
「わかりました。自販機ですぐに注文します」
ミサキは特Aクラスの、サーロインステーキを注文。こちらは一枚で、5000ペソもする超高級肉である。おもてなしする意味を兼ねて、特Aランクの肉を食べてもらおうと思った。
サナエはサーロインステーキを、一口で平らげてしまった。
「おいしすぎます。こんな肉は食べたことありません」
「もう一枚くらいなら、ごちそうできますよ。それ以上となると、生活費に悪影響を及ぼします」
「私のポケットマネーから、肉を購入します」
サーロインステーキ5枚分の、お金を自販機に投入する。超一流の絵描きは、お金の使い方が非常に派手だった。
サナエは五枚のステーキを、瞬時に食べきった。
「肉を食べたおかげで、パワーをたくさんもらえました」
瞼の重そうな女性は、軽快な動きを見せた。サーロインステーキの中には、元気になるための成分が入っているのかなと思った。